現実を変えようともがく





名前が家にちゃんと入ったのを確認して俺も家に入った。
靴を脱ぐ気力すらもなくて、俺は玄関に座り込んだ。脱力感とものすごい疲れ。


「名前…」


名前を呼んだだけで愛おしさが込み上げてくる。どうしようもなく切なくなって悲しくなる。
俺は名前を抱きしめる事や愛を伝える事を対価にして名前の未来を守ると誓った。名前がずっと笑っていられるように。名前が俺以外の誰かを好きになって、そいつと幸せになれるように。

それなのに、今日名前にあんな顔をさせてしまった。
その顔が俺を写してるようで複雑な気持ちになった。


「名前…愛してる………」


目を閉じたら睡魔に襲われ、俺は靴を履いたまま玄関で寝た。

















部屋に準太があがってこない。いつまで待ってもあがってこない。

家に帰ってすぐ私は部屋の窓を開けた。
私の部屋の窓からは隣の準太の部屋が見える。時々窓伝いに二人で話したりするのが私にとって嬉しい時間だった。

どうしてもあの顔をする訳が聞きたくて、準太が部屋に上がってくるのを待っていた。きっと着替えるためにここにくると思ったから。
なのに全然こない。


『何処かで倒れてるんじゃ…』


私は窓から身を乗り出し、隣の窓を開けた。
二階だからちょっと怖かったけど、飛び移って部屋の中に入り込んだ。
下の階に続く階段をゆっくり下りていく。


『準太…』


名前を呼んでみたが返事はない。そして階段を降りきった時だった。
ドサッと何かが落ちたような音がしてその方向を見ると準太がいた。靴を履いたまま玄関で寝ている。

準太に近寄ると泣いていた。
また苦しそうな顔をしている。


『準太…』


私はおでこを準太のおでこにくっつけた。
準太のシャンプーの匂いが鼻をくすぐった。


『泣かないで準太…。私はどこにも行かないから。ずっと準太の側にいるから…泣かないで』


そのまま私は準太の横で眠ってしまった。
準太の見てる夢が、少しでも幸せな夢になりますように。

*→