その輪を切る術は





「カズさん………っ」

「どうした、準太!!」

「名前が…名前が………




死んだ………」





「………っ」


一瞬、頭痛がした。前世での記憶の一部。
雨の日に、俺の家に傘もささず準太はびしょぬれになって来た。


“死んだ”


名前はこの大雨でスリップしたトラックに轢かれた。不幸な事故だった。
しかしそれは、準太にとってこれからの未来を変えてしまう出来事だった。


準太は言った。“俺が殺した”と。
そしてその後“俺も死ぬ”とそう言った。

俺には全く理解が出来なかった…。
何故名前が死んだ理由が準太であったのか。

あいつは結局最後の最後…準太の命が切れるまで話してくれなかった。



あいつは野球をやめた。学校に来る事も少なくなった。何より、笑わなくなった…。
あの勝ち誇ったような顔をしなくなった。


名前が準太にとってどれだけ大きな存在であったのか、俺はそれを思い知らされた。


甲子園を目指して戦ってきた仲間だといえども、準太に空いた穴は誰にも埋めることが出来なかった。


名前の幸せを願うと言った準太を止めるつもりはない。
けど、俺だって抜け殻みたいになっちまったお前なんか見たくない。

名前の幸せと、準太の幸せ…


その二つを同時に願う俺は、欲張りなのか?