世界の狭さに圧倒

「いーーーずみっ」

「……何だよ田島、気持ち悪ぃ」

「ひでー!!それより、どうでした?」

「(何で敬語?)何が?」

「あらあらしらばっくれちゃってっ。名前と二人きりでのランチですよ、泉サンっ」

「うぜーな、お前」



二人きりのランチって。まぁ間違っちゃいないけどさ。


「最高だったぜ。ありがとな」


とりあえず礼を言う。最高だったのは確かだし。



「最高だってさ三橋!!」

「さ、さい…こうっ!!」

「落ち着け三橋」



何故かテンションのあがっている三橋を落ち着かせ、俺はユニフォームに着替える。
田島と三橋はすでに着替え終わっていて、二人で仲良くグラウンドへ行った。


俺も着替え終わって部室を出ると、ジャグを用意していた篠岡が、俺を呼んだ。



「あ、泉君。コレさっき9組の子が泉君に渡してって。」

「9組の子?」

篠岡が俺に渡してきたのは手紙。
何だ、9組の子って。名前か?わざわざ何で手紙なんか。

そう思って封を切ると、細かく丁寧に並んだ文字。この字は名前じゃない。


「何読んでんの泉。もしかしてラブレター!!?」

「うるせぇ水谷うぜえ。」

ひでー!!なんて叫んでいる水谷を無視して、俺は手紙を読む。細かすぎて読みにくいな…


「なーに読んでんのっ、泉っ」

「あ、おい田島!!」

「えっと…私は、9組の橋本です……」

「………(呆)」


田島は俺の持っていた手紙をひったくって声に出して読み始めた。
まぁいいや。読みにくいから田島に読んでもらおう。



「孝介君が、好きです…だって!!!スゲー!!」

「おおお!!やっぱりラブレターじゃん!!良かったな泉!!」

「全然良くねぇよ」


差出人だれだっけ、橋本っつったか?
知らねぇな。誰だ橋本。


「明日お昼休みに屋上で待っています…だって!!スゲーよお前!!」

「何がそんなにスゲーんだよ」

「だって、橋本って言ったら校内一の美人だって奴だろ?」

「何だよ泉〜。隅におけねぇな!!」


水谷と田島が俺を囃し立てる。
待て待て待て。橋本なんて奴いたか?うちのクラスに…?
やべぇ…全然思い出せない。

つか俺からすりゃ、名前が一番美人な訳で校内一の美人って言ったら名前しか思い浮かばねぇんだけど。

つか、女っていうものがそもそも俺の中じゃ名前と母ちゃんとその他もろもろの親戚等々なんだけど。

え、俺世界狭っ!!


「泉、知らねぇの?」

「知らねぇ…」

「どんだけ名前一筋なんだよ、お前。」

[ 7/18 ]

[] []