女の嫉妬




「悪いけど俺、お前とは付き合えない」

「どうして…?」


目の前の女が泣く。
昨日手紙で指定された場所に俺は行った。もちろん断りに。
で、こいつが橋本な訳なんだけど、中々美人だ。
でも俺の趣味じゃねぇし、名前のほうが美人だ。


「どうしてって、言われてもなぁ…」

「好きな人がいるの…?」


何でそんなに理由知りたがんだよ…。面倒臭ぇな。


「いる。俺には好きな奴がいんだよ」

「それって、苗字さん…?」


何だこいつ、わかってんなら最初から告白なんかすんなよ。
俺は肯定の返事をして、そのまま屋上から立ち去ろうとした。



「何で、あんな子のことなんか…」


校内一の美人が声を発した。


「は?」

「何で、苗字さんなの!!?私のほうがあの子より泉君を満足させてあげられるよ!!?」

「それはどういう意味で?」

「………泉君の事…気持ち良く出来るよ…?」



そう言って橋本は俺に近づいて抱きついてきた。香水臭い。

俺はすぐに橋本の腕を払った。


「俺、昔から名前しか興味ねぇから。お前の事だって昨日まで全く知らなかったわけだし。
それに、悪いけど俺、今のところ性的欲求に関しては異常ないんで。それじゃ。」



屋上を出る。
その時橋本が俺を睨んでいたなんて知らないまま。

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