誰かが死ぬとこを間近で見たことはない。 だって私は平凡なひとりの人間なんだもの。 昔、飼っていた兎を看取ったことがある。 灰色の毛に黒い瞳。男の子。 北の国にかかる光の名から名前をつけた。 大切にしていた自覚はない。 なにせ幼い頃はだっこしては布団へ落としていた兄弟を傍観し、大きく伸びた足を見てさぞ高く跳ねるだろうと見つめていたくらいだ。 私は最期、横になる兎の身体を撫でて続けた。 痙攣するからだをひたすらに、ずっと。 まるで、私自身の命を吹き込むかのように。 兎が動かなくなった時に感じた、あのかたさを、未だ忘れることは叶わない。 それは、はっきりと現れた、死の形。 *** 祖父が亡くなった、という知らせは弟から聞いた。 「今日の四時に、私、まだ生きてると思ってたのに」 母は涙をしながら、心拍数を確かめる機械は、まだ鼓動を刻んでいたという。 けれど、死後直後、人間は身体のどこかはまだ動いているらしい。そんな話を聞かされた。 きちんと、耳には入ってこなかった。 *** 離れた部屋から、弟の泣き叫ぶ声が聞こえた。 *** 「おかえり」 一ヶ月ぶりだね。 辛夷の花は、綺麗に咲いてるよ。青い空に、満開の白い花が綺麗だよ。 「おかえり、な、さい」 涙は、 *** 「譲子と真人は来ないのかって、おじいちゃん言ってたわよ」 「だって、風邪ひいたんだもん。私は病院には行けないよ」 ――みたいテレビもあったし―― その言葉は、まだ一度も口にしたことはない。 その翌日、病院から電話がきた。 ICUって、なんなのかその日まで知らなかった。 *** 白い菊は燃えて、灰にとなりともに坪の中。 私はもう、一生あの人にはあえないのだ。 紙にパソコンと携帯を描いてあげたよ。 パソコン、好きだったもんね、 まだ、電話できるよ。だってアドレスそのままだもん。 虚偽の塊も燃え尽きた。 *** 「さようなら、ありがとう」 私が最初に愛したひと、 ---------- なんだかんだ、後悔ばかりの人生ですからね。 彼女が最初に感じたのは家族への愛。 スーパ/ーセ/ルの「初/めて/の恋/が終わる時」を聴いてて書きたくなりました。 クリスマス関係ねぇ、 その曲の二次創作はいつかやってみたい prev|next |