2011/05/26 22:00 忘れられないから、苦しいのに、人はどうして忘れたいと願うのでしょう。忘れてしまったら苦しいのに、どうして。 ▽▽▽▽▽ 『セブ、あたしのこと、忘れないでね』 それは、彼女の最期の言葉。 そしてそれは。 紛れも無く、永遠に自分を縛る呪いだった。 〇〇〇 「スーネイプせーんぱいっ」 「……ラグウェットか」 僕は読んでいた本を閉じ、振り向いた。 予想通りそこには、一つ下のハッフルパフの後輩である、ソフィア・ラグウェットが居た。 「先輩、会合の時間ですけど、行かないんですか?」 「あそこは僕に合わない空間だからな」 「むぅ。そうなんですか。それなら仕方ないですね」 彼女は珍しいくらいに僕に構ってくる人間だった。 幼なじみ以外の他寮の奴らはスリザリンというだけで敬遠したり一方的に嫌ってきたり、ちょっかいを出してきたりと、嫌な印象しかない。…まあ、前者はともかく、後者二つの筆頭は彼女の所属するハッフルパフの奴らではなくグリフィンドールの阿呆共だが。 「…よし、じゃああたしも会合行きません」 「は?何故そうなるんだ?行けば良いだろう?」 「だってあたし、スネイプ先輩とお話ししたいんですもん」 「…物好きな奴だな」 「褒め言葉として受け取っときますね」 彼女はにこにこ笑いながら僕の向かいの席に座る。 そして、持っていた魔法薬学の本を開き、静かに読みはじめた。 変わった奴だと心の底から思う。 話しがしたいと言いながら本を読みはじめるし、それで無くともグリフィンドールの人気者から嫌われているような僕に近づいてくるような他寮の奴は、幼なじみを除いては希少で、それでいて不快感を感じない奴は彼女が初めてだった。 心地好い沈黙。ぱらりと本のページをめくる音が、変にはっきり聞こえた。 図書室の奥の方にあるこの席は外の騒がしさから隔離されたように静かだった。 「あーっ、こんな所にいたのね!」 「うわあっ、え、あ、エバンズ先輩!?」 「ラグウェットじゃない。何?二人してこんな所で…。会合を休むのは良いけどスラグホーン先生に一言言いなさいよ、もう」 「…リリー、少しうるさいぞ」 「あら、ごめんなさいね」 |