はちくく
2011/05/26 21:52

ほう、と吐かれたため息が、酷く、艶めかしかったのが印象的だった。普段は感じない、ふとした仕草の色気に心臓が高鳴るようになったのはいつからだったか。
長く、細い指が本のページをめくる。しんと静まり返る図書室に紙の擦れる音がいつもよりも大きく聞こえた。
俯くその横顔を見つめていたら、彼は顔をあげ、眉を潜めた。

「何だよ」
「…いや、別に」
「じゃあ見んな」

彼の視線が、本へと戻る。私を見据えていた大きな瞳が伏せられて、長い睫毛が影を作った。
その様子にざわざわと心が揺れて、気が付けば本を持つ彼の右腕を私の左腕が掴んでいた。そのまま腕を引けば、呆気ない程簡単に彼は私の腕の中に収まった。




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