りんさくフェスタ | ナノ

残さず食べたら眠ろうか


「桜、アップルパイ作ったけど、六道くんのところに持っていかない?」
「わかったよ、ママ」
「寄り道とかしちゃだめよ。最近この辺で狼が出るらしいから」
「うん。ねえママ、六道くんにアップルパイと一緒にりんごジュースとか持って行ってもいい?」
「あら、いいわね。りんごがたくさんあるから、すりおろして持って行ってあげなさい」

ママ(39)が作ったアップルパイと、桜が作ったりんごジュースを手に、桜は森の中を歩いていた。りんねの家にはよく差し入れを持っていく。りんねは貧乏で生活にも困っているようで、そんなりんねを見ていると、力になりたいと思うのだ。
「やあ、真宮桜ちゃん」
「鯖人さん」
道を歩いていると、りんねと同じ赤い髪に赤い瞳。しかしりんねと違いどこか胡散臭い表情をした鯖人が声をかけてきた。
「今からりんねの家に行くのかい?りんねは桜ちゃんにたかってるんだね。ハッハッハ、さすがはパパの子だなあ」
「あ、いえ……私が好きでしていることですので」
たかっている、と言われるのはなんだか悲しかったが、強く否定できない自分がいた。りんねは金目当てに自分と付き合っているのではないかと考え、そのようなことを考えた自分が嫌になり桜は目を伏せる。
「桜ちゃんはいい子だね。りんねに飽きたらいつでも僕の胸においで」
鯖人は桜に向かって両腕を伸ばす。桜は少し鯖人と距離を取りながら、断った。
「つれないなあ。あ、そういえば、その道をずっと右に行ったら、綺麗な花畑があったんだ。見に行ってみたら?」
「ありがとうございます。でも早く六道くんのところに行くので」
桜はスタスタと左の道を歩いていく。りんねの家に繋がる道だけれど、そこはさっき鯖人が霊道を繋げて道を変えておいた。
「面白いこと考えちゃった」
鯖人はスキップする。目指すは一人息子の家だ。
「やっほー、りんね。パパだよ」
扉を開けると途端にカマがとんできた。咄嗟によける。カマは鯖人の数センチ横に逸れていた。
「何しにきた」
「やだなー、りんね。パパが息子の家に来るのに理由がいるのかい?」
「お前はどうせロクでもないことしか運んでこないからな」
りんねの言う通りで、鯖人は実際ロクでもないことを考えていた。
「パパはりんねの恋を実らせてあげようと思ったんだよ。だからちょっとりんねは寝てなさい」
懐から怪しいスプレーを出すと、鯖人はりんねに吹き付けた。どうやら眠くなる成分がはいっているそれをまともに浴びたりんねはどんどん瞼が重くなっていた。
「りんね、おやすみ」
鯖人がひらひらと手を振るのがどんどんぼやけていき、りんねは眠りについた。
「さてと。じゃあ僕は準備しようかな」

「なんだかすっかり遅くなっちゃった」
桜は鯖人のせいで強制的に遠回りをさせられ、予想よりも遅い時間でりんねの家に着いた。りんねと会うのは久しぶりだから少し緊張した。最近は桜の方からりんねと距離を置いていた。りんねと会うと、緊張してしまい、いつもの自分ではなくなる気がしたから。それがどうしてなのか、桜はまだわからない。けれど、りんねと会わないのは寂しいと思えるくらいにはりんねのことを気にかけていた。扉の前で少し深呼吸をして、ノックを2回。
「六道くん?入るよ」
扉を開けると、りんねは布団を頭までかぶって寝ていた。桜が入ると頭までかぶっていた布団を鼻までずらした。
「いらっしゃい、真宮桜」
「六道くん寝てたの?アップルパイとりんごジュース持ってきた。ママが作りすぎちゃって」
「ありがとう。真宮桜」
いつもなら「すまない」と謝るりんねが、感謝の言葉を言ってくれたことが、桜は嬉しかった。りんねを起こそうとベッドまで近づくと、突然手首を掴まれ、ベッドの中に引きずり込まれた。ゆっくりと目を開けると、自分を見下ろす六道鯖人がいた。
「何してるんですか……?」
「いや、狼はかわいい女の子を食べようかと」
「は?」
「ほんとはりんねのふりして桜ちゃんとの距離を縮めてあげようと思ったんだけど、桜ちゃんが可愛かったからね。思わず」
「思わずって……」
桜は今の状況を整理する。私は六道くんのベッドの中で、鯖人さんに組み敷かれている、以上だ。部屋の中はおそらく二人きり。絶体絶命だった。
「アップルパイも美味しそうだけど、その前にもっと美味しいものを。まあ大丈夫だよ、りんねと顔は一緒だし」
最低なことを言いながら鯖人は桜との距離をゆっくり縮める。もう駄目だと思い、桜は固く目をつむった。
「真宮さん、危なーい!」
途端に周りに広がる聖灰。ごほごほとむせこむと共に、誰かに腕を引っ張られた。
「真宮さん、大丈夫?」
「翼くん……?ありがとう。助かったよ」
翼は急いで来てくれたのか顔をほのかに赤くさせて、息もあがっている。
「真宮さんが無事でよかったよ」
そう言う翼に、桜は感謝した。翼がいなければ大変なことになっていたかもしれないと純粋に思った。
「それにしても、六道は一体どこに行ったんだ?」
「ほんとだね」
すると、後ろのタンスからガタガタという音が聞こえ、りんねが倒れ込んできた。翼はりんねのタックルをまともにくらったせいか、床でのびてしまった。
「六道くん」
「真宮桜、すまない」
りんねは後ろ手に縛られているのもあり、床に這いつくばりながら桜に謝罪した。桜がその縄を解いてやると、りんねは深く土下座をした。
「親父が勝手な真似を」
「まあ、何事もなかったからよかったけど。六道くんは大丈夫?」
「ああ、おれはなんともない」
りんねはすっくと立ち上がる。床には鯖人と翼が転がっていて、鯖人を邪魔だと言わんばかりに追い出した。翼のことは、迷ったようだけれどそのまま放置するようだ。
「ね、六道くん。アップルパイとりんごジュース持ってきたんだ」
「いつもすまん」
りんねは桜に謝った。でも桜はりんねに謝ってほしいのではなくて、喜んでほしかった。ドタバタ劇のおかげで、りんねと少し気まずかったことも忘れてしまったし、少し本音を言おうと思った。
「六道くん、私は謝ってほしいんじゃなくて、喜んでほしいんだよ」
「おれは、真宮桜がいてくれたら、それだけで嬉しい」
桜が笑いかけるとりんねは顔を赤らめ、ぼそりと呟いた。和やかな雰囲気でこれから2人の時間がはじまる。

めでたしめでたし


さるさる様、リクエストありがとうございました!赤ずきんパロ、、いかがでしたでしょうか?配役が斬新で、素敵なリクエストだなあとときめきながら書かせていただきました。技量的に至らないところは多々ありますがとても楽しく書かせていただきました!楽しんでいただけていたら幸いです。
それでは、リクエストありがとうございました!

150430 鞠音




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