りんさくフェスタ | ナノ

夢の中でも2人きり


まばたきをするのが惜しいなと思う。今日は私の結婚式で、相手はただのクラスメートだった死神だった。昔はまさか自分が死神と結婚するなんて思っていなかったし、彼は贔屓目なしにも顔が整っている。今日のような晴れ着に身を包まれた彼を見ると目に焼き付けておきたくなった。とてもかっこよくて、眩しい。帰ってからも、式の余韻が消えず、なんどかぼーっと顔を眺めていたので、どうしたんだと心配された。
これからはじまる毎日を思うと、桜はどことなく浮き足立った気持ちになる。そんな気持ちを落ち着けるようにダブルベッドにもそもそと入り、しっかり布団をかけた。ベッドランプが部屋を照らしていて、ぼんやりとした明るさは妙に眠気を誘う。りんねはまだ寝室に来ていない。りんねが入浴している間に桜は一人で寝室に来たからだ。結婚したという事実に、桜は今更ながらに照れてしまい、また今日の彼がかっこよかったこともあって、りんねと目を合わせることができなかった。
もったいなかったな。
と桜は思う。今日はまともにりんねの瞳を見れていない。あの赤くて綺麗な瞳を桜はとても気に入っていた。寝返りをうち、深呼吸をする。今日はゆっくり気持ちを落ち着けようと思った。だってこれからはずっと一緒にいられるのだ。いられるはずなのだ。
ガチャりと、扉が開く音が聞こえた。桜は反射的に目をつむり寝たふりをした。足音だけが、とすとすと響く。りんねが今どんな表情をしているのか、どこにいるのか、何を考えているのか、桜には全く見えなかった。それが、心臓を動きを早めた。
「真宮桜……寝てるのか?」
彼はまだ私をフルネームで呼ぶ癖が抜けていないようだった。もう真宮姓じゃなくなるよと伝えたはずなのに。彼の落ち着いた低音は、わたしの心臓も少し落ち着けた。彼の声はとても安心するから好きだ。
ベッドがぎしりと揺れ、布団をかけようとしてるのかゴソゴソと音が聞こえる。さっき落ち着けたはずの心臓がまたうるさく動き出した。心臓の音がりんねに聞こえて寝たふりがばれるのではないかとヒヤヒヤした。すると、唐突に後ろから引き寄せられ、りんねの腕の中に収まる。りんねの指が髪をかき分け、うなじに柔らかい感触がした。驚いて思わず声を出してしまいそうになり、それをぐっと堪える。
「ありがとう」
とぼそりとりんねが呟くのが聞こえた。背中にりんねの頭が当たっていた。
「こんな日がくるなんて。おれは幸せ者だな」
ゆっくり、ゆっくり、りんねの手が桜の頭を撫でる。暖かい大きな手がとても心地よくて、桜の瞼が重くなる。同時にどうしようもなく、りんねに甘えたくなった。
「ねえ、それは私の台詞だよ」
りんねに向き合ってそう伝えると、驚く素振りも見せず「やっぱり起きてたのか」と言った。
「知ってたの?」
「お前のことはいつも見ていたからな」
ベッドランプに照らされてにやりと少し意地悪そうに笑う彼の瞳は、桜が好きな赤色で、パチリと音がして部屋に夜が訪れた。
「じゃあ、今日は甘やかしてもらおうかな」
「もちろん」
桜の小さな手のひらは、りんねの大きな愛を強く握った。ああ、とても幸せだ。


リクエストは新婚りんさく(初夜)でした!
トップバッターのリクエストありがとうございます。初夜なんて、リクエストされなければ書くこともまずないようなシチュエーションなので、新鮮で楽しかったです。技量的に18禁は厳しいなと思ったので、暗転で終わらせていただきます。すみません。笑
それでは、リクエストありがとうございました!

150429 鞠音



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