りんさくフェスタ | ナノ

まだドキドキしてる


夢の中で、りんねは貴族になっていた。貴族といえども貧乏貴族だ。ボロ屋に申し訳程度の貴族らしい服。夢の中でも自分は貧乏で、なおかつ自分のイメージの貧困具合にがっかりした。りんねは広間を見渡す。すると、そこにはメイド姿の桜がいた。しばらく見つめていると桜はりんねに気づいたらしく、近寄ってきた。
「真宮桜」
桜はいつかの文化祭で着ていた黄色のメイド服を着ていた。桜はりんねに向かって一礼。
「もっと、こっちに来てくれ」
ゆっくり手招きすると、逆に桜は逃げ始めた。桜は意外と足が速い。夢の中でまで逃げられるのはりんねにとってだいぶとショックだったが、逃げるなら追いかけるしかない。ようやく捕まえた桜はほのかに頬を赤くして、少し息もあがっていた。そんな桜に少しドキリとしてしまった自分は正直だなと思う。
「どうして逃げるんだ」
腕の中で桜は呟いた。
「今から違うお仕事なの。六道くん、貧乏だから給料も払えないし」
なんと、そういう設定だったとは。自分は夢の中でさえも彼女に迷惑をかけている。実感すると申し訳なさでいっぱいになった。自然と腕の力も緩む。
「あ、六道くん。気にしないでね。私が好きでやってることだからいいんだよ」
そう天使のような笑顔で言う桜はとてもかわいい。もう一度彼女が逃げないように強く抱きしめた。夢でないとこんなことはなかなかできない。女の人の肌というものはどうしてこんなに暖かく、柔らかく、気持ちいいのだろう。りんねはぼんやりとした頭でそんなことを考えた。桜は最初こそ大人しく抱かれていたが、しばらくしてまた腕から逃げ出そうとする。逃がさぬものか。甲斐性なしの自分だが、彼女のことは誰にも渡したくない。たとえそれが自分のためにしてくれているであろう副業でも。自分がもっとがんばらなければならないのだ。そう、自分がもっとがんばって、胸を張って桜の隣に立てるように、もっと――

夢が途切れる。目が覚めた。
「なんて夢を、見ているんだ」
夢に彼女がでてくることは珍しくはない。しかしこんなおかしな夢を見るのは久しぶりだった。自分の頬をつねってみると、痛い。頬をさすりながら体を起こす。顔でも洗って、夢のことは忘れよう。それにしても
「メイド服の真宮桜、かわいかったな……」
思わず声に出ていた。自分の顔がにやけきっているのがわかる。慌てて大きくかぶりを振った。最近自分が彼女を見る目が変な方向にいっている気がする。りんねは無心になって顔を洗う手を早めた。冷たい水は火照った顔を冷やすのにちょうど良かった。


しろ様リクエストありがとうございます!貧乏貴族りんねとメイド桜でした。先週のアニメのメイド回は素敵でしたね、、!夢オチのよくわからない話になってしまいましたが、暇つぶしにでもなれば幸いです。楽しく書かせていただきました!ありがとうございます!

150605 鞠音



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