りんさくフェスタ | ナノ

君と囲む暖かい食事


「桜、おいしいお料理はゆっくり手間ひまがかかるけれど、その手間ひまを厭わないような人が相手なら、おいしいお料理ができるように、素敵な関係が築けるんじゃないかしら」
いつか母に言われた言葉を思い出す。

「はい、六道くん。六文ちゃん、お弁当だよ」
ぱかりと開かれたお弁当箱には彩り豊かな食べ物が詰められていて、りんねはほう、と息をついた。まるで宝石箱だ。
「桜さま!いただきます!」
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
まずは卵焼きを箸でつまむ。柔らかな卵焼きはほのかに温かく、少し甘い匂いがして、それだけでりんねの胃袋を刺激する。口にいれると卵が優しくとけてりんねの喉をそっと通り抜ける。もっとほしいような、物足りなさと一瞬の充実がりんねを麻薬のように虜にするのだ。
「桜さま!今日のおにぎりもおいしいです!」
六文はおにぎりを頬張りながら桜に感謝を伝える。桜は優しく微笑むと、いっぱい食べてね。なんて六文の頭をそっと撫でた。それだけで絵になる。天使のようだといつもりんねは思う。

「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
一通り食べ終わり、りんねと六文はそっと手を合わせる。桜は綺麗に空になった弁当箱を片付けた。りんねは姿勢を正し、桜に頭を下げる。
「真宮桜、いつもすまない。こんな豪華な弁当を持ってきてもらって……」
「いいよ、そんなの気にしなくても」
「いや、しかし、こんな弁当を作ろうと思ったら手間ひまがかかるだろう。それなのにおれはいつもお返しもできてないし……」
桜はふふ、と笑いながら息をつく。
「六道くん、顔をあげてよ」
りんねはそっと、下げていた頭を上げた。
「ねえ、六道くん。私が初めて六道くんに持ってきたお弁当、覚えてる?」
忘れる訳もない、初めてもらった宝石箱だ。パセリと、ウインナー、ゆで卵が入った、小さいながらに綺麗な宝石箱だ。あれからたくさんりんねは宝石箱をもらっている。それのどれもがキラキラ輝いていて、あたたかかった。
「あの時、私はあんまり料理したことなかったから、今思えば恥ずかしいくらいの中身だったけど」
「そんなことはない!」
「うん、六道くんが喜んでくれたのは伝わってたよ。だからこそ、もっとおいしいお弁当を作りたかったんだ」
りんねにとっては特別なそれを、桜が卑下するのか悲しかった。りんねにとってはどれも大切な、それこそ宝石箱だ。でも桜が言いたいことはどうやらそういうことではないらしかった。
「六道くん、何を持っていっても、すごくおいしそうに食べてくれるから。だからね、私、六道くんのご馳走さまが聞きたくて、だから料理もできるようになったんだよ」
だからね六道くん、ありがとう。なんてニコニコ笑う桜は本当に天使だ。桜がお礼を言うほどのことをりんねはしていないのに。りんねがお礼をどれだけ言っても足りないくらいなのに、桜はさらに嬉しい気持ちをくれるのだ。

「私、六道くん相手だったら手間ひまも気にならないみたいだよ」
こっそり呟いた言葉はまだまだあの死神さんには聞かせてあげない。


りんさくちゃんと六文ちゃんがお弁当を食べるだけ!リクエストありがとうございます〜。前の更新からだいぶ開きましたがこれからがんばっていきたいと思います。最近ごちそうさんを見てまして、だいぶ影響された内容になりました。桜さまの宝石箱の弁当作りなれてない感じとてもときめきますね。りんねに弁当作って上手になったんだね、、!
それではリクエストありがとうございました〜!

150811 鞠音



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