<ただの変態>

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上はもう少し小さくてもいいな。ラインは...合格だ。

「ねー、ロー!聞いてる?」

ここは昼と夜で寒暖の激しい島だ。浜辺に停泊中のハート海賊団は、暑い昼は海水浴を楽しんでいた。
もちろん悪魔の実の能力者、ローは海へ入ることは出来ない。暑いのが嫌いな彼は、船の影から一歩も動かなかった。

「船内にいたらどうですか?」

数時間前、ローの体調を気にしてペンギンが声をかけたが、ローは頑なに首を横に振った。
目的は名前の水着姿だ。

「聞いてるかって言ってるの!!」

「聞こえてる、なんだ?」

「そこのタオル取ってよ!もうそろそろ日が傾くから、寒くなるし風邪ひいちゃうっ!」

あぁ、これか...とローは自分の横にあるタオルを見る。

「うるさい女だ。」

ニヤリと微笑むと“room”と左の手のひらを下にし、小さく呟く。円が名前を包んだかと思うと瞬時にローの足元の砂と、名前の位置が入れ替わる。

気付いた時には名前はローの腕の中。便利だが、名前からすればやっかいな能力だ。

ちゅっと音を立てて、滑らかなラインをした首筋にキスが落とされる。小さな赤い痕が残った。

「ん......っ。」

小さな甘い声が名前から漏れ、その反応を楽しむかのように、さらにローは舌先で刺激する。

「別にお前が風邪をひいても、俺が一晩かけてねっとり...。いや、べっとり看病してやるから安心して風邪をひけ。」

明らかに名前を誘うような笑み。胸と腰に回る長い指が、余計に夜のそれを連想させる。

「変態っ!」

「ククッ、それは褒め言葉か?それよりも顔が赤いな。熱でも出たか...」

近づくローの顔。名前はキス?と思わず目を強く閉じたが、ただ額が触れ合っただけだった。

「熱じゃあ...ねェな。」

そう言って、ローが船へと戻る姿を、後ろから眺める。ポタポタと濡れた髪から、雫が落ちた。


姿が見えなくなったあと、力なく名前はその場に座りこんだ。

「はぁ、またお預け。そんなに魅力無いかな?私。」

じっと自分の身体を見つめる。

これでも体型には気を付けて生活しているつもりだし、メイクにも気を配っている。
自分でもいい女には入らなくても、ダメな女では無い自信はあった。

だが、ローの女になって数ヶ月。

一方的な身体へのキスはあっても、直接的なキスはまだ一度も無い。
毎日一緒に寝ているのに、だ。

医者、ルーキーよりも、“ただの変態”

その言葉が似合う男とまだ一度もセックスどころか、キスさえしたことが無い事実。

それは名前の女としての自信を奪うと同時に、身体を疼かせた。






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