<誰にも言えない秘密>
ローには、まだ誰にも言ったことが無い秘密があった。
24歳。そろそろ年齢のこともあり、気になることも1つや2つくらいある。
船内を歩き、ある二人を探す。
あの二人のことだ、いる場所は大体把握できている。真っ先に食堂へ向かった。
自分の抱えている問題が、ずっと頭の中をぐるぐると回っている。そのためかここ最近、特に寝不足が酷い。
食堂に辿り着いたローが中を見るとビンゴ。彼らは楽しそうに、何かの話で盛り上がっている。
「「あ、せんちょーぉ」」
嬉しそうに手を挙げる二人に眉間に皺を寄せた難しい顔で近づき、静かに腰を下ろした。コツコツと鳴り響いた靴の音が、二人に緊張感を与える。
「ペンギン、シャチ!お前らに少し聞きたい事がある。」
「どうしたんすかー?船長。」
「なんでも聞いて下さいよっ!」
少し落ち着いた返答をしたのがペンギン。おちょけた感じで、後から話したのがシャチだ。
ローは、きょろきょろと廊下を見回した。誰も聞いていないことを確認すると、二人に近くに寄れと手で指示を出す。
広い食堂の隅で成人済みの男が3人顔を寄せてひそひそ話するなど、滑稽極まりなかった。この状況を誰かに見られれば、船長の威厳なんてあったもんじゃない。
それはローが一番よく分かっていた。
だが、考えれば考えるほど深みに嵌る。普段の自分の行動を思い出しても今更、言うことなどできない。
それでも、どうにかして誰かに頼りたかった。
「...女を抱いたことはあるか?」
馬鹿な質問だとは分かっている。
恥ずかしさのあまり、脈拍が早くなっていた。
「女ですか?そりゃ、ありますよ。」
「うん、俺も。船長ほどじゃないですけどね!」
「ちなみに何人くらいだ?」
ペンギンが顎に手を当てて考えこんだ。シャチは手の指を使いながら、何人だったかなーと悩んでいる。
「100...くらいですかね。シャチ、お前は?」
「俺ー?多分50くらい!船長モテるから、抱いた女の数なんていちいち覚えてないでしょっ!?あー羨ましいなァ!!ね、船長!!」
「......あ、あぁ。」
シャチのキラキラした瞳を見ると、本当のことは言えなかった。
船員の中でも一番信用している彼らになら、打ち明けれると勇気を振り絞ったのに。
「でも、どうしてそれを?」
「研究の資料が足りなくてな...」
真っ赤な嘘だ。俺は女を抱いたことは無い。0人、いわゆる“童貞”
女に興味が無かった。不特定多数の男に抱かれた女は感染症のことを考えると、汚ねェ。恋愛?めんどくせェ。
だけど、名前だけは違う。大切すぎて、手を出せば壊れてしまいそうで。
先に進めない。
どうしたらいいのか分からない――。