<おにぎり>
怒られると分かってても、どうしても食べたとこを見てみたい。
そんな好奇心から、今日はおにぎりの中にとってもすっぱい梅干しを入れてみた。
それも私が自分で漬けた特製の梅干しだ。
いつもはツナマヨ、おかか、鮭の3種類を並べている。
それを今日はツナマヨ、おかか、梅干しの組み合わせへと変えてみた。
言い訳は、梅干し嫌いを知らなかったということにするつもりだ。
「ロー、おはよ。はい。」
「ああ。」
いつものように何のためらいも無く左から順に食べて行く。梅干しのおにぎりは一番右。
「ねー聞いてる?」
「ああ、だから静かにしてくれ。」
「聞いてるなら返事してよ!」
いつものように他愛ない話をして、ローが梅干しおにぎりに手を付けるのを待つ。
そしてようやく待ちに待った時間が...。
「..........っグ、ゴホッ!!!」
ローの顔が歪んでいる。思わず溢れそうな笑みを必死に我慢する。
「...ゴホッ、ゴホッ。」
数回咳き込んだあと、キッと向けられる強い視線。
「これはどういう事だ?」
そういう彼の目には心無しかうっすらと涙が浮かんでいて、それを不覚にも可愛いと思ってしまった。
「私が漬けてみたの!美味しいでしょ?」
ローはじっとそのおにぎりを見つめ、何かを考えたあと、またそれを口にした。
(え......っ!?)
時折、彼の顔が歪むが、ローは何も言わずに嫌いなはずの梅干しおにぎりを完食。
その様子に思わず、名前から声が漏れる。
「梅干し、嫌いなはずじゃ...。」
「...お前が漬けたって言うからな。」
そう言いながらローはプィっと横に顔を背けた。
吐き出しても構わなかったのに、とローの心遣いに名前の心があたたかくなる。
顔を横に向けたのは、彼の照れ隠しなのだろう。
名前はそんなローを抱きしめた。
「ところで...。」
顔の下で聞こえる声に反応した名前は、そっとローから離れる。
ふと目に入った顔の眉間には深いシワがよっており、ローの不機嫌さを表していた。
恐る恐るその理由を問うが、だいたいの検討はつく。
「何?」
「俺が梅干し嫌いなのを分かって出したのか?」
「..........。」
その視線に嘘をつけるわけでも無く、名前は黙ってしまう。
「ふん...お仕置きが必要なようだな。」
突然、ふわりと名前の身体が浮いた。
「きゃっ!ちょっ、ちょっとロー!?」
「ジタバタするな。」
「おろしてっ!!」
「ダメだ。」
強い力で押さえつけ、船内の廊下を突き進んで行く。身長の高い彼に抱きかかえられるのは、なかなかの怖さだ。
それに加えて、ローも眉間に皺を寄せてるものだから名前の心拍数は増していく。
「どこ連れてくの!?」
「決まってんだろ。」
着いた先は船長室。ドアを勢いよく開けると、そのまま一直線に進みベッドの上へ名前を放り投げる。
ドサーーーッ。
スプリングが弾んだ音と名前の小さな悲鳴。
それが消える頃には、名前の顔の上にはローの顔。こちらを睨みつけるようにじっと見つめてくる。
それが何を意味しているのか、すぐに分かった。
「まだ、朝だよ?」
「んなの関係ねェよ。」
カチャカチャと外されるベルトの音。
静かな部屋に響くそれは、名前にこれから起こる事情を期待させる。
期待している自分がいるのを、恥ずかしい女だと思いながら、喉の奥に溜まった唾を飲み込んだ。
「舐めろよ。」
目の前に差し出されたローの肉塊。細身の身体には似合わないがっちりとした太さのそれには血管が浮かび上がっており、名前の目をくぎ付けにした。