<ずっと会ってみたかった>

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「くそ!取り押さえろ!!」

「無茶いうな!」

「傷口か広がったら!!」

(ん...朝から騒がしい...。)

外から聞こえる大きな声に目を覚ます。いつものように起き上がると、下腹部にズキっと痛みが走った。

(そうだった...。)

昨日の夜はローと...。あのときのローの言った言葉は、ただの聞き間違いだったのだろうか。記憶が飛んで曖昧だ。
軽い痛みに耐えつつ、身支度を整えた名前は外の様子を見るために甲板へ向かった。

「どうしたのっ!?」

森の入口で倒れている船員達を発見。ひどい怪我はしていないようだが、殴られた跡が目立つ。

「麦わらが、暴れ出して...。」

「また傷口が開いたらヤバいって言うのにあいつ、聞かなくて。」

「森の奥に行ったの?」

「ああ、でも名前ちゃんは行かないほうが...って、あぁ!!」





「すぐ会いてェ......。」

あいつらに会い゛てェよォォォ!!!

麦わらのものと思われる声が、森の中に響き渡る。その声を頼りにたどり着くと、そこにはルフィとジンベエがいた。

「麦わらのルフィね?」

「なんじゃ名前、来たのか。」

「ジンベエ。もしよかったら、私と彼を二人きりにさせてくれない?」

お願い!と名前は、顔の前で両手を合わす。

「よかろう。森の外で待っておく。」

ジンベエが席を外すと、名前はルフィの横に腰を下ろした。

「誰だ、おめェ...。」

ルフィは弱弱しい声で言った。

「初めまして、私は名前。赤髪海賊団の船員よ。今はローの船に乗ってるけど。」

「赤髪って...。」

「そ、シャンクス。」

目を丸くして驚くルフィに、名前は優しい笑顔を向けた。

「シャンクスから貴方のこといろいろ聞いたよ?だから一度会ってみたかった。」

「シャンクスが俺のことを?」

「うん。面白い子だってね。本当に嬉しそうに話してたんだよ。」

「そっかー...。シャンクスにも会いてェな。」

名前は頂上決戦のときのことをルフィが傷つかないように、できるだけエースのことには触れずに、シャンクスが戦争を止めたことを話した。
ルフィは最初ただ驚くだけだったが、名前とのシャンクスの話に花が咲いたことも有り、時々笑顔が漏れた。





「そろそろ戻ろう?きっと皆が心配してる。」

「...あぁ。そうだな。」

二人が森を抜けると、そこにはレイリ―とジンベエ、ハートの海賊団が船に乗って待っていた。
ローの顔が怒っているようにも見えるが、気にせずに声をかける。

「ただいま。」

「遅い。」

「ごめんね?」

そう言いながら名前はローの船に乗り込む。

「おい、麦わら屋!俺達はもう行く。あと2週間安静を続けろ!じゃねェと、死ぬぞ。」

「ああ!分かった!!トラ男、ありがとう!」

ルフィはニカっと笑う。手配書通りのその笑顔に、少しだけ安心感が得られた。この男もまたきっと強くなる。

「船を出せ!」

ローの一言でハートの海賊団は、再び海へと帰っていく。
じゃあなー!ありがとうー!と麦わらのルフィが大きく叫んでいるのが聞こえた。

「Dはまた必ず嵐を呼ぶ...」

意味深な言葉を残し、ローは小さく笑った。





女ヶ島を離れて、航海も落ち着いた数日後

「確かめたいことがある。こっちへ来い」

「何?急に...」

連れてこられたのは甲板。そこにはペンギンが真剣な顔付きで立っていた。

「名前、使え。」

そうやってローから手渡されたのは一本の剣だ。名前は訳が分からないといった表情を見せた。

「今からペンギンと戦ってもらう。」

「え、なんでっ!」

「なんでもだ」

「船長。ほんとにやるんですか?名前ちゃん、剣使えるの?」

「ごちゃごちゃ言うな。フフ、万が一怪我しても治してやるよ。」

ペンギンがゴクリと唾を飲み込んだ。相手は剣が使えるかも分からない、ただの女の子だ。
今朝、ローから名前と戦え、と言われたものの未だその意図も掴めない。

(ローの確かめたいことって...。)

名前には大体検討が付いていた。この状況に置かれては、もう覚悟を決めるしかない。剣を身体の前に構える。

「ペンギン、手加減しないで。」

「名前ちゃん...?」

ペンギンも決して弱くは無い。名前が剣を構えた姿から、只者じゃないことくらい感じられた。

「行くよ!」

名前は華奢な身体を活かし、スピードと柔軟さで攻め込んでいく。剣と剣がぶつかり合う、甲高い冷たい音が響いた。

ペンギンは名前からの攻撃を受け流すので、精一杯だ。このままでは名前の勝ちだろう。

「ごめん、ペンギン!」

名前の速さが増し、戸惑ったペンギンの剣に向かって剣を下から振り上げた。

「.......痛っ」

その攻撃の重みに思わずペンギンは声をあげる。そしてペンギンの手から離れた剣が宙を舞った。
あ!とペンギンが目線を奪われた時にはペンギンの足を、名前が払いのけた。
バランスを崩した彼は、さらに名前に肩を押されて仰向けに転んでしまう。

「ハァハァ、勝負あったね。」

剣の先をペンギンの喉元に当てる。

「.......強い。俺の負けだ。」

「やはりな。」

今まで何も言わなかったローが、声を発した。名前のほうをじっと見つめる。

「名前は赤髪海賊団、その船員に間違いねェな?」

「なっ!船長、何言って!」

「ペンギン、お前は黙ってろ。どうなんだ?名前。」





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