<シャンクスSide>

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泣いたっていいんだ…!乗り越えろ!!

「お前達、行くぞ。」

船の階段を一段一段と上がる、その足取りは重い。
白ひげとエースの弔いも済み、道がそれたが早く名前を探さなければならない。
手掛かりは無かった。

部屋に置かれた剣と荷物は、ずっと持ち主に触られることなく、ひっそりと置かれている。

時代が動いても、この海に吹く風は何一つ変わらない。空も太陽も月も同様だ。

「お頭、ちょっといいか?」

「なんだ?」

ベックマンがシャンクスを呼ぶ。ここじゃダメだ、と親指を背後の船長室へと向ける。





「酒、飲むか?」

シャンクスはベッドに腰を落とすと、そのすぐ脇に置いてあった酒に手を伸ばす。

(全くこの人は…。)

名前がいなくなってから、飲む酒の量がますます増えた。今じゃ寝酒が習慣らしい。
ベッド周りには、たくさんの空き瓶が転がっている。

「お頭、少しは綺麗に…。」

「あーいいんだ。どうせ俺だけの部屋だ。」

名前がいなくなる前までは、この部屋も綺麗だった。シャンクスが毎日名前のために掃除をしていたことを、ベックマンは知っている。

「それより、なんだ?話って。」

ゴクゴクと酒がシャンクスの喉を、音を立てて流れていく。平然を装ってはいたが、今回の戦いはシャンクスの心にも、深い思いを抱かせていることがその様子から伺えた。

「頂上決戦。俺はあの時、名前を見た。」

「なっ!!ブフッ…ゴホッ、ゴホ!」

シャンクスは口に含んでいた酒のほとんどを、吐き出してしまった。気管に入ったようで、勢いよくむせこんでいる。

「ゴホッ!ケホッ、ゴホッ!!」

「大丈夫か?」

「コホ、それよりっ!!どういうことだ!?詳しく話せ!」

ベックマンはシャンクスに、あの時のことを詳しく話した。

「ルフィがバギーによって、トラファルガー・ローの船に乗った時そこに名前がいたんだ。」

「何?」

「見間違いなんかじゃねェ。ベン!と俺を呼んだ。」

「レイリーさんの話は本当だったのか。」

シャンクスはハーっと大きなため息と共に、ベッドの上に倒れ込む。しばらく反応のないシャンクスを心配したベックマンは、お頭?と声をかけた。
すると彼はムクっと起き上がると、満面の笑みを見せる。

「よかった!本当に良かった。名前は無事なんだな!!」

「あんたって人は...。」

怒ってしまったのかと思ったが、まさかここで笑うとは。
名前が元気なら、いる場所は関係ないということか。いいのか、それで。

(まぁ、だから好きなんだけども...。)

「だが今やトラファルガーと言えば残忍だ、と言われているが?」

「ハハ、大丈夫だ。」

「なっ!何を根拠に。」

「なんでもさ。」

ベックマンにはシャンクスのこの余裕さが、理解できなかった。
ルフィのこともあるからか?それにしてはあまりにも簡単に、彼のことを信用しすぎな気もする。
あの時と今は違う。

「とりあえず行くか。」

シャンクスが起き上がり、ドアノブに手をかける。

「どこに?」

「決まってるだろ。ハートの海賊団の船だ。」

目的の場所が決まったとなると、話は早い。赤髪海賊団の力を持てば、海賊団の一つや二つ見つけることはそう難しいことではない。
シャンクスは扉を開けて、大空へ叫ぶ。

「おい!野郎どもー!!名前の居場所が分かったぞ。」

「「ほんとか!?お頭!!」」

「目標はハート海賊団。北の海のルーキー!トラファルガー・ローの船だ!!」





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