<真実>

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名前はいつの間にか寝てしまったようだった。重い身体で起き上がり窓の外を見ると、木々で生い茂る、森のようなものがそこには広がっている。
甲板のほうへ向かい陸を見ると、そこにはとても美人な女が一人。それを囲うようにローや船員達がいた。

「海賊女帝......?」

そう思われる女は付き人と思われる、他の女たちと森のほうへと帰っていく。ここは噂に聞く女ヶ島なのだろうか。

ボウンッーーー。

名前が状況を把握しようとしていると、突然とてつもなく大きな水音とともに、沖で暴れる海王類の姿が見えた。

「なんだ、喧嘩か?」

「いや、死んだみたいだぞ!!」

ペンギン達は不思議そうに大騒ぎし、ローはただ海面を見つめるだけだ。

!?

名前もつられて海面を見ると、ザバっという音と共に何かが姿を現す。

(あれは...人?)

「いやあ、参った。」

そう言って姿を見せたのは、ついこの前に会った冥王レイリ―だ。どうやら海を泳いできたらしい。相変わらず無茶苦茶というか、さすがだと言うべきなのか。

「ルフィ君がこの島にいると推測したのだが?」

名前も状況を伺うために、ロー達のほうへ向かう。レイリ―はそれに気付いたようだったが気を使ってくれたのか、顔見知りということを皆に隠してくれている様だ。

「冥王レイリー...本物か。」

「……ジンベエ!!」

そこに現れたジンベエに、名前は思わず声に出してしまう。それもそうだ。彼と会うのは何年ぶりだろうか。魚人島にいた以来だ。
これにはジンベエも驚いた顔をしたが、それは周りも同じだ。特にローは何かを察したようなそんな顔をしている。
そしてローはレイリーとジンベエのほうに目線を配ると、おもむろに立ち上がった。

「麦わら屋の経過観察の時間だ。おい、お前らも手伝え。」

「え?俺たちもっスか?」

「ああ。いつ暴れるかわからねェからな。」

船を壊されたら困る、と小さな声で囁くとペンギン達を引き連れ、船の中へと戻っていく。
擦れ違いざまに名前に、ローから何か訴えているような、そんな目線が向けられた。きっとローには分かっているのだ。
レイリ―とジンベエと名前、それぞれに繋がりがあるということを。





「八ッハッハ。彼は分かっているようだな。」

彼らの姿が完全に見えなくなった後にそう、レイリーが笑った。どういうことじゃ?とジンベエは不思議な顔をしていた。

「......みたいだね。」

その横を名前が困ったように苦笑交じりに通る。そして、レイリーとジンベエの間に腰を下ろした。

「ジンベエ、久しぶり。魚人島にいた時、以来じゃない?」

「もうそんなになるか...。赤髪の所におるんじゃなかったか?」

「それがね...。」

名前は頭に手をやりながら、軽く事情を話した。





しばらく他愛のない話をすると、レイリーのほうから大切な話を切り出した。

「シャボンディ諸島の時は言うつもりはなかったのだが...。白ひげが逝き、時代は動きだした。」

「...レイリ―?」

「名前。君はこの世界について、知っていたほうがいいのかもしれん。」

それは一体どういうこと?真実を、知っていることを教えてくれるということ?

「シャンクスには私が伝えておいた。彼もまたロジャーの...船長の意志を知る者の一人だからな。」

話が核心に向かおうとしたとき、ジンベエが焦ったように話を割る。

「レイリー、ワシが聞いていても?」

「ああ、かまわん。海に住む者も知っておいたほうがいい。」

スーっと心地の良い風が吹く。名前の心臓は静かにその鼓動を強めていった。

10年。
どれだけ探していても見つからなかった自分についての秘密、この世界についてのこと。
それを今から聞くのだと思うと、平静を保ち、この場に座っていることが名前の精一杯だった。
レイリ―が口を開く。名前とジンベエは唾を飲み込み、その第一声を待った。

「何から話そうか...。」

静かな落ち着いた声のトーンで、隠された事実が語られ始めた。





昔この世界は、一つの海で繋がっていた。
しかし、ある時。月から船に乗って、この星に降り立った者達がいた。
彼らは特殊な力を持ち、この世界に様々な恩恵をもたらしていく。そこで我々の先祖は天の人という意味で、天竜人と名付け敬ったのだ。

「ここまでは分かるか?」

「うん。」「あぁ。」

「では、話を続ける。」

最初は平和だったようだ。
しかし、権力を持ちだした月人の中に、邪心を抱く者が現れてきたのだろうな。
いつしか天竜人は支配しようとする者と、皆平等であるべきだと主張する者に、分裂してしまったのだ。そして彼らは対立し始め、やがて世界を巻き込む戦争が起きる。
戦争が始まった世界は、少しづつバラバラに散らばっていく。それを一つの世界に繋ごうと、皆平等だと主張する月人達はある道具を作ったのだ。

「これが今で言う古代兵器だ。」

「え?どういうこと...?」

当時の海軍は、支配するべきだと主張する天竜人のほうに着いた。そちらのほうが、自分たちにとっても都合がいいとでも思ったのだろう。
数で勝ったそれらは力を増し、平和のための道具を奪おうとした。
なぜならそれは使う者によって平和をもたらす力も、兵器にもなる力も持っていたからだ。奪われることを恐れた彼らは、それを世界のどこかに隠すことを考えた。

「グランドライン。あれはその道具、戦艦プルトンが地中に隠される時に作り出された物だ。」

「最初からあったものじゃないの!?」

レイリ―は静かに頷いた。ジンベエは語られる衝撃の事実に、ただ息を飲むだけだった。

「とりあえず、話を続けよう。」

あれは特殊な海流をこの世に産み、それによって空島も魚人島も誕生した。本来ならば、どちらの島もこの地上にあったものなのだ。
そのため、それぞれ空島の民、魚人島の民を再び世界が一つに繋がったときに、この地上に連れてくるための道具を彼らは作りだし、その土地に隠した。
一つはポセイドン。ノアの方舟を動かす力を持つ。もう一つはウラヌス。空を駆ける力を持つ。

「ちょっと待てぃ。そのポセイドンと言うのは...。」

「君もよく知っている。しらほし姫だ。」

「な...っ!?」

彼女は海王類と話すことのできる力を、産まれながらにして持っている。その力こそがポセイドンの力。

「気になるだろうが続けるぞ。」

戦いは長く続いたという。
そして平等を掲げていた月人は、戦いに敗れ王国を去ることになる。いつか世界を一つに、という思いを掲げながら世界中へ散らばった。
そしてこの歴史が語られるのは、都合が悪いと考えた地上を支配しようとした月人は、海軍と共にこの歴史を消した。

「散らばった人たちは?」

「それは...。」

語られぬ歴史をポーネグリフに書き記し、世界中に散らばめた。いつか思いを遂げてくれる者が現れることを夢見て。
その月人の見た目は我々、人間と変わらなかったと言う。だから見つかることもなく、今もまだ暮らしているそうだ。

「Dが付く名を聞いたことがあるだろう?」

「うん。」「ああ。」

「このDは月を象っている。
これは平和を願った月人の血縁の証。」







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