埋もれた才能




「カイア、やっぱお前どっかの町に留まって勉学ににいそしんだ方がいいぞ」

「…………。」

 俺の言葉にカイアは無表情で首を横にふった。どうやら嫌らしい。
 別にカイアに不満があるわけじゃないし、最初のリフィネのようにカイアを追い出したいわけじゃない。いても問題は全くといっていいほどない。強いていうならリフィネが煩いだけである。

 しかし、俺がカイアにこう提案したのにもきちんと訳がある。

 カイアをずっと引き連れていたのだが、どうやらカイアは素晴らしい能力を秘めているらしい。
 まずカイアは誰よりも人(ポケモン)の感情を読み取るのが上手い。
 それで多々 問題をおこしてきたのだが……しかし、時々いいことをする。あまりに敏感すぎて最初は俺たちも戸惑った。
 そして何といっても1番凄いのは地図の読み取りだ。此処が何処なのか、そしてその次の道はどうなっているのか。ただ地図を見るだけで分かるらしい。それも、地図には書いていない場所さえ把握するのだ。

 だからこそ、その才能を無駄にしないためにも勉学にはげむべきだと俺は思った。そしたらもっと凄い力になるはずだから。
 しかしカイアはそれを望まない、と首を横にふった。

 俺が困っていると、カイアと仲が悪い(カイアは別にどうとも思っていないようだが)リフィネが声を荒らげた。

「なーんーで、そんな素晴らしい才能を無駄にしようとするの!?」

 そんな素晴らしい才能が元からないリフィネは仕方ない。そう思った瞬間に睨まれたので目を逸らしておいた。
 するとモグモグと口の中を動かしながらシィーナが発言した。

「でもまー、勿体無いとは思うけどねー。潜在能力がそんだけ高いんだから、ちょっとは鍛えればいいのにさー、んぐ」

「おい、シィーナ。口の中に物を入れながら喋るな。汚ねぇ」

「蒼輝は最後の一言をどけたらまるで口うるさいお母さんみたいだねぇ」

「俺は男だ。……お前の母親なんて死んでもゴメンだ」

「ボクもこんな口うるさい母親いやさー」

 何故コイツに拒否されなければならないのか。拒否権は俺にあるだろ。
 そんな意味合いを込めてシィーナを睨んだがスルー。思わずはぁ、とため息をつくと翡翠が苦笑いで会話に入ってきた。

「僕はカイア君をどこかに預けて学業に力を入れさせなくてもいいと思いますよ? こうやって旅していることでも色々と学べていると思いますし……」

 「ですよね?」と翡翠が聞くとカイアは小さく頷いた。カイアはほぼ翡翠の問いかけには答える。おそらく無駄な質問、カイアが答えなくてもいい質問をしないからだろう。
 これはカイアにとって答えなければならなかった質問だったのだろう。つまり他のところに預けられる気はないという意思表示である。

「ま、本人がそう言うなら強制はしねぇよ。……おい、ふて腐れるなリフィネ」

「ふて腐れてないもん」

「どう見たってふて腐れてるよねー。お、この木の実と木の実の組み合わせはいけるね」

「シィーナさん、1つずつ食べましょう。そして汁をなるべくこぼさないように食べましょう。蒼輝さんの目が怖いです」

「…………。」

 まあ、いいか。暫くはこのままでも。……多分。





 

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