新たな小さい成員




「で、お前の名前は?」

「…………。」

 俺は今、猛烈に困っている。
 怒っているリフィネは翡翠に宥められており、シィーナは呑気に「う〜ん」などと言っているが俺に任せる気満々である。

 俺が困っている理由とは――俺の傍からずっと離れない小さなカラカラにあった。

 何かデカく厳ついとても悪そうな連中に絡まれているところを助けたところ、懐かれたのか知らんが離れなくなってしまった。
 親は?と聞くと首を横にふる。どうやらいないらしい。……あんまり考えたくはなかったが、1つ親がいない理由が思い浮かんでしまった。

 このカラカラ、普通のカラカラと色が違うのだ。体の色が、緑色だ。

 俺の考えている可能性は、親が捨てたという可能性だ。あまり考えたくはないが、そいう奴は旅の道中で何匹か見てきた。
 色違いというのは親からも好奇の目で見られることがある。それは気味が悪いといった感情で、見るものもいるということだ。

「……いい加減、名前ぐらい答えてくんねぇかな。色々と困るんだよ」

 とりあえず近くの町とかそこらに辿り着いたら、コイツが安全に暮らせるように頼もう。このまま置いていくのは危険である。
 するとようやくカラカラが口を開いた。

「……カイア」

 ぽつりと、まだ発達していない幼い高い声でカラカラはおそらく自身の名前――カイアという名前をいった。
 ようやくか、と思いながらカイアに話しかけた。因みに俺はもう自己紹介は済ませた。

「とりあえず……カイア、町にいこう。そんでお前が安全に暮らせるように頼んで――」


「……ついていく」


 は? と声をだしてしまった。しかしカイアは動じず、言葉をポツリポツリとつむいでいった。

「そうきに、ついていく」

 ……どうやら、俺は懐かれてしまったようだ。
 するとリフィネが「駄目、絶対に駄目!」と怒った様子でいってきた。

「預けよう! 安全なところに! そうした方がいい! 絶対いい!」

 リフィネがこうも反対しているのは、最初の印象が悪かったからだ。カイアはリフィネに失礼なことを平然と言ってのけた。だから、リフィネは大反対している。
 翡翠の宥めは効かなかったか、と翡翠を見ると目線だけで謝られた気がする。

「まあまあリフィネ、落ち着きなよー。でもさー、本人が望んでいるようにやったほが、本人にはいいんじゃないのー?」

 シィーナがオレンの実を食べながら言う。正直やめろといいたいが、どうせ止めないので諦めている。
 リフィネはうっ、と黙って「でも〜……」と渋りを見せた。

 そんなリフィネを無視して、カイアに聞いた。

「あのな、俺たちは平和に旅してるわけじゃねぇぞ? 危ないところに突っ込んでいったりして……危ないことをやってんだ。だから、付いて来たらお前の身が危険かもしんねぇ。
 お前は、それでもいいのか?」

「いい」

 きっぱりと言い切ったカイアに肩をすくめた。コイツはなかなかの頑固者とみた。説得は望めない。
 まあカイアよりは、リフィネを説得する方がよっぽど楽だ。

「翡翠はどう思う?」

「僕は別に構いません。ただ……リフィネさんが大反対していらっしゃいますが、いいんですか?」

「よくないよね! 蒼輝、ぜんっぜん良くないよ!!」

「よし、じゃあカイアも連れて行くか」

「ちょっと!?」

 リフィネを見ると口元をひきつらせている。そこまで嫌か。
 しかし色違いというのは厄介だし、カイアはまだ幼い。それだったらもう少し大きくなるまで俺らが面倒をみてやった方がいいだろう。……少なくとも、訳も分からないところに預けるよりは安心だ。
 救助活動のときはまあ、翡翠とかシィーナとかにみてもらって、他のメンバーで行けば何とかなるだろう。

「じゃ、よろしくな。カイア」

「ん」

 一言っていうか一音で返事をした会話に翡翠は丁寧に、シィーナはのんびりと「よろしくー」と挨拶した。
 俺がリフィネを見やると、とても嫌そうな顔をしていた。

「おいリフィネ。仕方ねぇだろ。諦めろ」

「うぅっ……。よ、よろしくー……」


 リフィネの挨拶に対するカイアの反応は、無。


「うなぁぁああぁぁぁぁぁッ! やっぱ腹立つぅぅぅ!!」

 まだカイアは小さいというのに掴みかかろうとするリフィネを、翡翠がおさえる。
 おそらくこの場で1番ため息がつきたいのは翡翠だと思うのだが、俺がついてしまった。この様子じゃ苦戦しそうだ。
 シィーナは「大変だね〜」と他人事のように言っている。ふざけんな。

「……カイア。リフィネに反応くらいは示してやれ」

「…………。」

 どうやら、カイアはリフィネに限らず、反応しないときは反応しないらしい。

 本日2度目のため息は、翡翠の「リフィネさん、落ち着いてください」という声とかぶって消えた。





 

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