「大地の豪雄と近づく危機」




 今日はディスト達の救助に向かう日である。因みに起きたばかりで日記を書いている。夢で重要な会話があったから、忘れないように。

 今日は夢にサーナイトが出てきた。
 サーナイトは俺たちが地底に行くのを知っているようだった。
 俺が「少し不安だ」とこぼせば、サーナイトは笑いながら「蒼輝さんなら大丈夫ですよ」と言ってくれた。サーナイトといい、翡翠といい、どうしてこうも俺のことを過大評価しているのだろうか。
 サーナイトにグラードンのこと等は知っているかと聞くと「知らない」と答えた。ただ俺を励ましたくて出てきたらしい。……いや、まあ確かに不安だったんだけどな。

 しかし、とサーナイトは言った。

「1つだけ分かることがあります。……蒼輝さん、貴方の役目が、少しずつ終わりに近づいてきています」

 俺の役目、それが終わり……。全く意味が分からない。サーナイトは続けた。

「貴方はある役目をおってポケモンになり、この世界にきました。その役目は……とうとう終わりに近づいてきています」

 どんどん消えそうになるサーナイトに、何とか聞こうと声をはりあげた。「俺の役目とは一体何なんだ。俺は何故ポケモンになったのか」。
 しかし、サーナイトは答えなかった。

「それは時がくれば……次の冒険が終わったら、お話できると思います。……では、また」

 そういって、夢は終わってしまった。
 ……俺の役目。俺がポケモンになってしまった理由。それは、次の冒険が終わったら……つまり、地底のダンジョンを、ディスト達を助けに行けば、話してくれるのだろうか。
 俺のことが、分かるのだろうか?

 ……そろそろ出なければならないから、この辺で終了しておく。




 疲れた。
 ……何て言ってられないんだがな。

 グラードンのいる“マグマの地底”というのは、確かに厳しいところだった。リフィネが何度 死にかけたことか。俺はそうでもないが。タイプ的に。
 翡翠も問題なさそうで、シィーナは敵のレベルが高いからか苦戦していたが。やっぱタイプなのか。タイプが全てを左右するのか。

 ……ていうか本気でこんなくだらない話をしてる場合じゃなくて、……これからは手短に書いていく。本当に大変なのだから。

 グラードンの元までは辿り着けた。
 途中でガルヴィとバルが倒れており、そのまま奥に進むとディストがボロボロの状態で立っていた。しかしいきなり場が光り、その瞬間にディストはいなくなっていた。
 リフィネが「あの一瞬でやられたっていうの……?」とうろたえていた。当たり前だ。あのディスト達がやられたのだ。困惑もする。

 するとまた場が光り、赤い大きなポケモンが現れた。
 ソイツこそが、グラードン。凄い迫力で、もう言葉がほぼ通じていないような状態で襲いかかってきた。何ていうか……目が血走っていたっていうか……まあ、そんな感じだ。

 正直、リフィネを戦いながらだったと思う。だってアイツ(グラードンのことである)火炎放射とか炎タイプの技を使ってくるし。
 どうやらグラードンは炎タイプ兼じめんタイプなようで、俺がダメージを与え、翡翠はリフィネの援助をしながら、シィーナは俺の援助をしながら戦った。あとアイツはかなり大きかったので死角にまわったりしながら。

 そんなこんなで、どうにかグラードンを倒すと、いきなり3ヵ所が光りだし、ディスト達が現れた。3匹ともボロボロである。
 バッグからオレンの実を渡すと、何とか3匹は体をおこした。
 リフィネが「大丈夫?」と聞くと、ディストは「あぁ。それより、早く此処から出るぞ」と言った。グラードンが気がかりだったが、俺の様子に気付いたディストが説明してくれた。
 どうやらグラードンは眠りを妨げられ、我を忘れていただけらしい。目を覚ませば大人しくなっているはずだ、と。

 そんな会話をしていると、いきなり大きな揺れがその場を襲った。いつもよりずっと強い揺れだった。
 慌ててディスト達を支えながら、地底を出た。二度とあんなところに行くものか。


 そして帰ると、皆が温かく迎えてくれた。本当に、温かく迎えてくれた。
 どうやらキリトが号外で先に知らせてくれたいたらしい。

 「凄い」「よくやった」「ありがとう」――色々な言葉を貰った。
 俺はどうも反応できなかったが、リフィネは何でか号泣し、皆にからかわれていた。シィーナは何故か誇らしげであった。翡翠は苦笑しながら上手い具合に流していた。

 そんなときだ。
 いきなり頭に声が響き、――その声、セルズが「大変だ」と切羽詰った声でテレパシーで話しかけてきたのは。
 全員に話しかけているらしく、場が静まり返った。そしてセルズはそのままテレパシーで話しかけてきた理由、そして早口で何が大変なのか説明をした。

 誰が、こんなことを考えられたことか。

「空から……空から、星が接近している!」

 全員が、は、と息を呑んだ。セルズは気にすることなく続けた。

「とても大きな……巨大な星だ! おそらく今までの多くの災害も、世界のバランスが崩れたのも……この星が原因だ……。
 このままだと大地に衝突し……大変な、大変な大災害になる……!」

 何とかしなければ、という小さなセルズの声が聞こえた。
 全ての災害。世界のバランス。全ての謎が、とけた。セルズが「怖い」と言っていたのは、星が大地に衝突した未来を見ていたためだろう。

 するとディストが静かに尋ねた。星の衝突を防ぐ方法はあるのか、と。
 少し黙ってから、セルズは答えた。1つだけ、シエロというレックウザに星を壊してくれと頼むことらしい。

 セルズは簡単な説明をしてくれた。
 シエロははるか天空に住む伝説のポケモンらしい。その上空から、シエロほどの強さであれば、星も破壊できる。
 ……ということらしい。俺には想像もできないことだ。

 ディストがシエロの元に行くには? と聞くと、セルズは案外あっさりと答えた。
 セルズとディストのテレポートの力を増幅させ、ポケモンを飛ばすこと。それ以外、方法はないらしい。ポケモンの技でそんなことできるとは。本当に凄いことだ。

 しかし、とセルズが言った。問題がある、と。
 テレポートの増幅といっても、沢山のポケモンが行くことは不可能だと。ただでさえ大変な場所に飛ばすと言うのに、複数のポケモンを飛ばすと言うのは負担がかかりすぎ、失敗すると。
 そしてシエロがいるのは雲の上の世界。そこでは何があるかなど、全く分からないと。まあ誰もシエロを見たことがないらしいので、仕方ないことだとも言える。
 その後どうなるか分からない。つまり、命を落とす危険は大いにありうる。

 するとリフィネが俺の方を見て、それから口パクで言った。正直、驚いた。無意識に頷いてしまった。
 リフィネはそれを見ると、大きな声で、広場のポケモン全員に聞こえる声で言った。

「私たちが、私と蒼輝が行く! 私たちが行って、シエロにお願いしてくる!」

 しん、と広場が静まり返った。ただ、そんなに長くは沈黙は続かなかったが。
 ディストが小さく言ったのだ。「ワシも……お前たちしかいないと思っていた」と。すると、広場のポケモン達が次々と声をあげだしたのだ。
 それでも、渋っているものもいた。心配してくれているのだろう。

 だけどこのまま星を放っておいても死ぬかもしれないのだ。
 結局、誰かがいかなければ多くのポケモンが犠牲になる。その誰かが、俺たちなだけ。まあ、仕方ないだろう。

 セルズはあくまで冷静であった。
 「今日ディストと準備をする。出発は明日だ。お前達は休んでくれ。最後に。大変な冒険になるが……頼む」そういって、テレパシーの声が消えた。
 ディストは俺たちに一言二言と「頼む」と言って、おそらくセルズのところに向かったんだと思う。去ってしまった。

 あと……シィーナは渋っていたのだが、「……無事に帰ってこないとボクの晩御飯 自分個人の金で奢らせるからなー」と言った。……たまったもんじゃない。そんなことされたら次の日から一文無しである。
 翡翠はリフィネに「お願いします」と言った後、俺に「明日の朝、少しお時間をいただけますか?」と聞いてきた。……何か分からなかったが、一応オッケーしておいた。

 さて、明日に備えて寝るとする。
 ……胸騒ぎは、気のせいだと思いたい。





 

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