「救助隊とは」




 朝、起きたら地震がおきた。最近こんなんばっかりだ。
 そういえば……セルズはこの自然災害と俺が関係していると言っていたが、結局それについては分かっていない。……俺が原因じゃないといいんだが。

 すると俺の許可も得ずにリフィネとシィーナが入ってきた。続いて翡翠も入ってきた。翡翠はおそらく2匹が入っていったのでついてきただけだろう。
 しかし何故かリフィネが泥だらけだったので俺は思いきり怒鳴った。
 「汚ねぇ! アホ、汚れるだろうが! 洗ってこい!」「そんなことどうでもいいんだよ潔癖症が!!」「そんなことじゃねぇよ!」「そんなことだよ!」
 そんな不毛な会話が続き、シィーナに「あのさ、2匹とも。本題に入りたいんだけどさー」と言われて止まった。

 シィーナによると、広場で何だか騒ぎになっているらしい。だから慌てて入ってきたのだとか。
 とりあえずリフィネは基地の近くにある水に沈めて泥をおとし(もちろん文句を言われたが)、広場にむかった。

 広場につくとハディが俺たちに気付き、「奥に行ってみな……」と深刻そうに行ったので言われたとおりに奥に進んだ。そこには昨日 地底にいくといった3匹。
 ヴァフテによると、地底でやられたらしい。ディオンによるとグラードンにさえ会えなかったとのこと。地底はかなりキツいことが想像できた。寧ろ甘く見すぎていたのだ。ディスト達が帰ってこないほどなのだから、よほどの場所だと容易に想像できたはずなのに。

 あのガクスやディオン、ロウェットでさえやられた。勿論みんな不安そうな顔をしていた。
 すると「ケケケッ」と独特な笑い方をした、俺の大嫌いな笑い方をした……ソヤが広場に現れた。あの時以来だ。アイツを見たのは。……法螺をふきやがった以来だ。

 ソヤは「バカな奴らだな。はじめから駄目なのに無茶するからこうなるんだよ」と言った。リフィネはその発言に怒って「ディスト達が帰ってこないんだよ!? 無茶するのは当たり前でしょ!?」と言い返した。
 しかし、ソヤは「周りの奴らの方が賢いぜ?」と言った。
 広場に集まっていたポケモン達は、口々に無理などと言い出したのだ。ヴァフテまで、同じ事を言い出した。つまりそれは、ディスト達を見捨てるということ。

 ソヤはそれを聞いて笑い「頑張ったからといってそれが必ずいいとは限らないのさ。ときには諦めるのは肝心なのだ」といった。そして「我ながら言いことを言った」と自分を賞賛するような言葉を言った。
 心底、虫唾がはしる。……コイツの言葉や行動にはムカついてばかりだ。思わず舌打ちしてしまった。
 そして何故かその時、何かの言葉が頭を過ぎった。うろ覚えだが、書いておく。


 頑張ったからって、夢が叶うとは限らない。頑張ったから、何かできる様になるわけじゃないかもしれない。
 でも……少しでも可能性があるとしたら、頑張りたいって、そう思うの。

 だから私は、諦めたくないし、頑張ることもやめたくない。


 確かに、強い口調ではっきりと、そう言っていたんだ。
 ……俺は、過去の俺は、どんな反応をしたのだろう。同意したのか、それとも否定したのか。今の俺なら、同意する。

 そして、意識もせずに口から大声が出ていた。
 「俺が地底に行って、ディスト達を救助しに行く!!」――と。リフィネとシィーナは目を丸くしていて、翡翠は相変わらずニコニコしていたのを覚えている。
 全員が黙り、少し間が空いた後にリフィネがシィーナと翡翠に目で合図を送り、大声で「蒼輝じゃなくて……私たち『ベテルギウス』が、ディスト達の救助に行く!!」と言った。……見事に俺の言葉を訂正してくれた。

 そんな発言に、他の奴らは騒ぎ始めた。
 弱そうだ、とか。大丈夫なのか、とか。あとキュウコン伝説で追われていた救助隊だ、という声も聞こえた。……覚えてやがる奴はまだいるのか。面倒くさい。
 ソヤは驚いているようで、何も言わなかった。こちらにとって黙っていてくれた方が好都合であるが。

 リフィネはその言葉に負けず、しっかりとした口調でいった。

「私は昔、災害に巻き込まれたときにあるポケモン達に助けてもらった。それで、私のような災害で苦しんでるポケモンを助けたいって思って、救助隊になった。災害で苦しんでるポケモンを助けるために、救助隊になったの。
 だから今 苦しんでいるかもしれないディスト達を絶対に助けたい。確かに、地底は厳しい所かもしれない。でも、私たちは救助隊なんだ。救助を諦めるなんてことは、絶対にしたくない!!
 ある救助隊のポケモンはこう言ってた。「救助隊の誇りは、諦めないことだ。そうすれば、助けられる命を1つでも多く助けられる」って……。皆には、皆にはないの!?」

 場が静まり返った。リフィネの言葉に、何匹のポケモンが心を打たれたのだろうか。何匹のポケモンが、救助隊の意味を考え直したのだろうか。
 何匹のポケモンの気持ちを、リフィネは変えたのだろうか。

 しかし、ソヤには伝わっていないらしい。だが、少しの困惑の色が見えた。
 また俺らをバカにしたようにいい、周りを見ろ、そう言った。しかし、周りはソヤの期待したような反応ではなかった。

 皆、リフィネの言葉に変えられたのだ。

 大事なことを忘れていた。自分たちは救助隊じゃないか。誇り……その誇りなら、俺たちも持っている。

 口々にそういい始めたのだ。
 ソヤはまだ反論するが、ボロボロっであったガクスやディオン、ロウェットも立ち上がり、もう一度チャレンジしようといい始めた。
 もう、ソヤの立場はないようなものだった。

 それから口々に「突破口はどこかにある」「救助隊同士で協力しあえばきっと助けられる」と前向きな発言がとびはじめた。
 リフィネは感動してか涙目になり、翡翠とシィーナは穏やかな笑みで周りを見ていた。

「残念だったな。お前の意見に味方する奴は、此処には誰もいない」

 俺がそう言うと、悔しそうに、そして困惑った表情でソヤが俺を睨みつけた。どうせハナから相性などあっていない。喧嘩腰になろうが、関係ないだろう。
 ソヤは「痛い目みても知らないからな!」とそのまま逃げるように去っていった。

 その後はディスト達の救助について話し合い、結局 今日は準備を万全にして明日みんなで行くことになった。あと実際に地底にいったガクス達にアドバイスを聞いて。
 それから、明日がんばろう、と言って解散になった。

 リフィネに「お前は結構いいこと言うんだな」と言うと、葉っぱで俺を殴った後に「蒼輝は私に対してだけは何か失礼だよね」といわれた。そんなつもりは毛頭ない。
 シィーナは笑いながら「ボクにも酷いけどねー」といい、翡翠は「蒼輝さんはいい方ですよ?」ともうフォローか何だか分からんことを言っていた。

 まあ、今日も今日とて賑やかだったよ。救助隊『ベテルギウス』は。





 

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