「帰ってきて」




 やっと帰ってきた。俺の家に。……俺の家、に。

 帰ってまずシィーナにタックルを食らわされ、胸倉を掴んで前後に揺さぶられるという酷い仕打ちをうけた。帰ってこれとか本気でない。
 翡翠が何とか止めてくれたからよかった。死ぬかと本気で思った。

 そこには俺たちを見送ってくれた奴らが勢ぞろいしていて、今か今かと真実を言うのを待っていた。
 とりあえず“氷雪の霊峰”でロフェナに言われたことを全て伝えると、皆して安堵し、喜んでくれた。翡翠は「申し上げにくいんですが、僕は知ってたんですよね」と苦笑いしながら、シィーナは「ふふーん。行く前のボクの言葉のお陰だねー!」と胸を張って言ってきた。
 まあシィーナが言ってることは強ち間違いではないので「あぁ、ありがとう」と言うと、「そこはツッコむところだよ!?」とキレられたので、「知らねぇよ!」と怒鳴った。

 何もおかしくないし面白くもないのに、皆 笑っていて、つられて笑ってしまった。

 「とりあえず俺の家に埃がたまってないか……」と言うと、リフィネに冷たい目で「この潔癖症が」と言われた。何故そんな目で見られなければならないのか。
 しかし、俺もリフィネも俺の家を見た瞬間に固まった。
 そんな俺らの様子を見て、後ろで翡翠たちがクスクスと笑っているのが分かった。しかし、本気でそれどころではなかった。


 何故なら、俺の家が、俺の普通の家が、何故かミズゴロウの形をした家に変わっていたから。


 え、何で。何でマジでどうなってんの。
 そんな思いを込めて呆然と変わり果てた家を見ていると、シィーナが「はっはっ、ボク達の苦労してリフォームした家はどうだー!!」とか何とか言っていたが知らん。
 リフィネはハッとして「凄い、凄い!」と目を輝かせていた。

 俺はというと何もできずただ家を見ることしかできなかった。
 翡翠は困ったような声音で「蒼輝さんに許可も得ずにすみません。ただ、救助基地を作るって言ってたじゃないですか。蒼輝さんやリフィネさんが苦労している間に、僕らも何かしようと思って……」と言った。そう思って結果こうなったわけか。
 ……俺の家はどうやら救助基地にされてしまったらしい。
 もう何も言わない。とりあえず「僕たちも手伝ったんですよ!」と報告してきたミフィとアンセの頭を撫でておいた。うん、よくやった。

 一応ワタッコ達とフェクと翡翠にもお礼を言い、盛り上がってるリフィネとシィーナを放っておいて家の中に入った。どうやら中は変わっていないようだ。安心した俺がいた。
 その後のシィーナの煩さと言ったら叶わなかった。最後は翡翠が「蒼輝さんもリフィネさんも、もうご自宅でお休みになられたらどうですか?」という言葉で何とか救われたが。

 ……とりあえず、帰ってきてから色々あった。でも、悪い気はしなかった。
 とにかく本気で疲れたのでもう寝る。……我が家で寝るのも久々だな。





 

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