本当の幸せ
「幸せって何かな」
「いや、知らないけど」
何を言い出すかと思えば、私の妹はこんなことを言いだした。いきなり幸せについて聞かれても。
私の妹はこうやっていつも訳の分からないことを言い出す。妹は12歳である。恐ろしき小学6年生。ホントに小学生なのかコイツ。因みに私は中学2年生だ。
すると聞いた理由を妹が説明しだした。
「今日さ、道徳の授業で“幸せ”について考えたんだけど……よくわかんなくって」
「先生はなんて?」
「さぁ? 訳のわかんないこといってたよ」
「ふーん。辞書で調べたら幸福だってさ。また運が向くこと」
そう言うと「そうじゃなくってー」と妹は口を尖らせた。私に言われても。
するとおもむろに私の方を見た。今度は何だ。
「お姉ちゃんの幸せはなに?」
「幸せ? うーん……アンタが答えてくれたら答えてあげる」
そう言うと妹はむすっとした表情になり、私の傍にあったデカイぬいぐるみを抱えた。そんなに難しい質問だったかな。
このままいられても困るのでどうにかしなければ。
「幸せって言うのはさ、案外 間近にあるのに気付かないモンだよ」
「そうなの?」
「そうそう。ちょっと考えてごらん。間違い、なんて言わないから、アンタが最近 幸せだと感じたことを言ってみな。ちょっとしたことでいいから」
「最近……幸せ……」
必死になって考える妹に苦笑する。お前はそんなに幸せなことがなかったのか。
窓を見ると空が赤くなっていた。もう夕方か。……そろそろお母さんとお父さんが来るかな。全く、2人ともどこいってんだか。
すると思いついたのか、妹が「あ!」と声をあげた。
「お母さんに褒められたこと!」
「褒められた? 何を」
「テストで100点とったこと! すっごい嬉しくて、幸せだと思った!」
「おー、そうかそうか。そりゃおめでとう」
ガシガシと妹の頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める妹。ホントに撫でられんの好きだなぁ。
すると撫でられたまま妹が言った。
「今も幸せだよ。お姉ちゃんとこうやってお話が出来て、頭撫でられて」
「……そりゃ光栄だ」
わしゃわしゃと頭を撫でると「髪の毛がぼさぼさになる!」と言ってきた。しかし本気で抵抗しないところを見ると嫌がっている訳ではないのだろう。
撫でている手をとめ、自分の膝におく。妹は不思議そうに私を見た。
「な? 案外 間近になるだろう? ……幸せなんてそんなもんさ」
「確かに間近にあった……!」
ぽん、と左の掌にグーになった右手をのせ納得したというポーズを見せる。こういうトコはまだまだ小学生だと思えるところだな。
「じゃあお姉ちゃんは?」
どうやらコイツは自分が言ったら私が言うという約束を覚えていたらしい。記憶力だけはいいな。
うーん、と考える素振りを見せてから、妹の頭に手をのせた。
「アンタと、母さんと父さんと話してるときさ」
そう言うと、嬉しそうに「あたしも!!」と妹が言った。元気だなぁ。
すると母さんと父さんが入ってきた。そして私と妹の姿を見ておかしそうに笑った。入ってきた瞬間にそれはないんじゃないかな。
まぁ、これも幸せの1つかな。
本当の幸せ(幸せってモンは、身近にありすぎて気付けないモンだ) 当たり前だと思ってる奴には、絶対に気付けない幸せがある。私にとっては当たり前だと思えないから、それが幸せに見える。
「私にとっては、健康であることが1番の幸せに見えるね」
2週間っていう時間は、あまりにも短すぎやしないですかね。神様。
えーと……説明するとですね……。
主人公は病気で、あと2週間しか生きられないのです。そして此処は病院で、主人公は入院中です。
妹ちゃんはそんなこと知らず、また姉が家に戻ってくると思ってます。そんな話。
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