非の打ち所がない

「できないこと? ……ポケを捨てることですかね」

「いや、そうじゃなくて」

 至極真面目な表情で答えた凛音に、シアオが首を横に振る。
 「凛音ってできないことあるの?」とシアオが聞くと、そう答えたのだ。スウィートもまさかの答えに苦笑している。
 するとメフィが「はいはい!」と元気よく挙手した。

「凛音が完璧すぎるから先輩たちは欠点を探しにきたんですよね!」

「欠点っていうか……凛音ちゃんでもやれないことがあるのかなぁって思って」

「あ、じゃあ凛音。家事はできんの? 料理とか裁縫とか掃除とか」

「一通りはできます」

 スウィートが言ったとおり、『シリウス』は凛音の不全なところを探しに来たのだ。
 依頼でも、戦闘でも、見張り番といった仕事でも、何でも卒なくこなす凛音。そんな凛音にできないことはないのだろうか、とシアオが言い出し、今に至る。

「ないに決まってるじゃないですかー。だってあたしが凛音に「苦手な物ないの?」って聞いたら「私が鬱陶しいと思ったものは苦手です」って答えたんですよ! 苦手っていうかそれは嫌いなんじゃん! みたいな」

「う、鬱陶しいと思ったもの……」

「いかにも凛音らしい答えだな。因みにメフィの苦手なものは?」

「にっがい食べ物です!!」

「あれ、そうなの? メフィは残さないから苦手な食べ物ないんだと思ってた」

「出たとしても勿体ないので無理やり食べさせてます」

「「「「あぁ…………」」」」

「ちょ、先輩!? 何でそんな哀れんだ目で見てくるんですか!?」

 やはりメフィは凛音に世話されているらしい。スウィートたちはすぐに悟った。
 まだギャーギャー言っているメフィを放っておいて、フォルテが凛音に問う。

「何でもいいから苦手なものとか嫌いなものとかないの?」

「……あぁ、自然災害は対処できない上に予測不可能なので苦手です」

「何かズレてる気がするんだけど。何かおかしい気がするんだけど。自然災害が苦手って何」

 フォルテが何コイツみたいな顔で言う。スウィートはやはり苦笑することしかできない。
 うーん、と唸ってからシアオが「ほら」といって喋りだす。

「もっと具体的にさー。こう、……今みてもアレは駄目! とかいう奴ないの?」

「別にそういったものはありませんが……親族の死は駄目ですね」

「重っ! 何か内容がすごい重いんだけど!!」

「凛音、それは誰でも嫌だと思うぞ」

 どこかズレているらしい凛音は、『シリウス』がほしい答えを一向に答えてくれない。
 この調子では本当に苦手な物やできないといったことがないのだろう。

 するとスウィートが恐る恐るといった感じで声をあげた。

「できないこと……ポケ関連以外でないの?」

「ポケ以外で、ですか……。……あぁ、それなら1つだけありますね」

「「「何!?」」」

 異様な食いつきを見せたのはシアオとフォルテとメフィだ。
 若干だが鬱陶しいといった表情をした凛音だが、すぐにもとの無表情になりスウィートの方を向いた。

「私、長距離を泳げないんですよ」

「……泳げない?」

「はい。1キロぐらいなら泳げるんですが、それ以上の距離となると無理です」

「「1キロでもあたしは無理だけど!!」」

 それはできないというのだろうか。
 スウィートとアルは悩んだ。寧ろこれはフォルテとメフィのような者をできない者だと言い、凛音のような者をできるというのではないか。

 ますます凛音の完璧像が頭の中でできあがっていく『シリウス』とメフィであった。




非の打ち所がない
(ちょっとぐらいあってもいいのになぁ)



「大食いとか駄目なんじゃない?」

「大食いなんて消費が悪いだけでしょう? そんなものするくらいだったら保存してください」

「1番の理由は?」

「ポケが勿体無い」

(やっぱり凛音ちゃんの世界はポケが中心だよね……)







凛音の完璧っぷりを少し書いてみたかった。
『シリウス』と『アズリー』は仲良しです。




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