スケール30 代償
その痣は素良の繰り返しが行われるたびにじわじわと背中を蝕んでいった。アイザックが診察してくれたが治療というよりは現状維持が優先された。どんな治療も意味をなさず、繰り返しの代償だと言われた瞬間、素良は広がりつつある痣を諦めた。

「私の痣より進行が遅い......おそらく君が私たちより繰り返しが少ないからだろう。G・O・Dの力は私達を導き時空の旅をさせた。その度に私達の体には絶対に消えぬ代償が刻まれてきた」

「じゃあさ、アイザックやイブは大丈夫な訳?僕より進行が早いんでしょ?」

アイザックはしばし沈黙したあと、静かにためいきをつく。そして首を振った。目を見開く素良にアイザックはいうのだ。

「できれば私はイブにG・O・Dを使って欲しくはないんだ。もし使えばどうなってしまうか誰にもわからない」

「......なんでそれを僕にいうのさ」

「いえないからさ」

疲れたように笑っていたアイザックが妙に印象に残っている。それを思い出したのは、ちりちりと焼け付くような痣が広がっていく感覚に気づいてしまったからだ。

「......あざってこれのことだよね、アイザック」

「素良?」

ふらりと素良の体がふらつく。慌てて城前は受け止めた。

「ぐううっ」

「おい大丈夫かよ、素良!って、熱っ!ひどい熱じゃねーか、おい大丈夫か?」

応答はない。意識を失うほどの重病人だとは思わなかったが、いくら揺さぶっても反応すらない。ただ痛みに呻く素良がいるだけだ。あまりにもいきなりである。城前は慌てて医務室に繋がる転移装置を発動した。

「......アイザックも蓮もどうしたんだよ、大丈夫か?!」

先に医務室で安静していたはずの2人まで苦しんでいる。慌てて素良をベッドに運び込んだ城前は、うっすらと目を開けたアイザックと目が合った。呻きながらもなんとか起き上がったアイザックに、無理すんなと城前は心配そうにのぞき込むがそれを利き腕で制する。

「......城前、モニタを起動してくれないか」

「えっ」

「今、彼女は榊遊矢とデュエルしているんだろう?見せてくれないか、彼女の行く末を私は、見届けなくては。説明するよ、G・O・Dの真実を」

「そんなことより、なんだよその痣!さっきより酷くなってるじゃねーか!」

「構わないさ、これがG・O・Dの力を欲するということさ。よく見ておくといい、城前。これが君の欲しがっている力の代償なのだから」

「アイザック......」

城前は飲み込んだつばの音がやけに大きく響いた気がした。

城前が転移装置を起動すると、アイザックが手伝ってくれる。巨大なモニターがアイザックと城前の前に出現した。

「これは私の憶測にすぎないが、私達はG・O・Dの力を欲したことで自らの時間を与えられ悔いのない人生を送る。そしてその引き換えに眷属としてG・O・Dの目的の手足となる。その目的は人類の滅亡」

「はあ?まーた大きく出たなおい」

「力を欲した者達に見合う世界を作る代わりに世界を滅ぼす。結果的に手元に残したのは私達だけだが標的となった世界の全ての人にG・O・Dは手を差し伸べる。手を取った者達は望む世界を生き、自滅していった。G・O・Dの監視下に置かれ、都合がいい世界で自分の満足だけを追い求め、文明は発展しなくなっていった。つまり堕落。与えられるだけの幸福により人々は進歩をやめ、ゆるやかに文明は滅びていった。そんな中、希望を捨てない者達が邪魔だった。だから眷属にすることで排除してきた」

「......そんなやつの力使ってよくもまあアダムが取り返せると思ったな。アダムはG・O・Dは危険だっていってたんだろ」

「ああ、そうだよ。人々の希望の象徴となる者達の排除を遂行すればG・O・Dの目的たる人類の滅亡は達成される。だが、覚醒させることが出来ればアダムの所在がわかる。G・O・Dの暴走を止めるために自ら楔となった彼の居場所が」

「......どこまで身勝手なんだよ。嫌いじゃないぜ」

「ふふ、君ならそういってくれると思ったよ、城前克巳。君もまた世界の平和よりも個人の幸せを優先する人間、我々側の人間だ。そのよしみで教えてあげたんだ」

「うれしくねえ情報をどうも。G・O・Dにおれの世界のことは感知されちまってるんだよな、たしか。手を取ればホントの世界の人々がみんなあの神様の餌食になって、おれは都合がいい世界で生きるわけか。んで抵抗したら弱みに付け込まれて眷属化しちまうと。ずいぶんと悪魔じみた神様じゃねえか、めんどくせえな」

「君の望みはG・O・Dをつくり、転移するゲートを作成した者達に接触できれば叶うかもしれないな」

「まーじかあ......まじでめんどくさいな」

ぼやく城前にアイザックは苦笑いする。

「G・O・Dのカードデータが欲しいんだろう?見なくていいのか、イブと榊遊矢たちのデュエルを」

「......赤馬社長が行方不明だ」

「アダムの因子なら私が奪ったから問題ない」

「んなわけあるか、おれがあの空間に幽閉しようとしたらいきなり消えやがったんだ。なんかの干渉があったんだよ。真打登場まで待たせてもらうぜ。ログはもらうけどな」

「赤馬零児が......?」


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