閑話B
風が全てをなぎ払っていく。在りし日の思い出は消え去り、気づけば白亜の世界だ。影もなく光もないただの白。黒咲と城前の間にはいつのまにかデュエルフィールドが出現していた。どうやらソリッドビジョンではなさそうである。黒咲はデュエル成立のメッセージのあと、ターンを知らせるメッセージとライトの点灯に口元をつり上げた。城前はげえとあからさまに嫌そうな顔をする。互いに先行がいいに決まっているのだ、構築的に考えても。


「先行は俺がもらう。まずは《RR−バニシング・レイニアス》を攻撃表示で召喚!このカードが召喚・特殊召喚に成功したターン、俺は自分メインフェイズに1度だけ手札からレベル4以下の《RR》モンスター1体を特殊召喚する!こい、《RRートリビュート・レイニアス》!そしてモンスター効果を発動!このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに発動できる。デッキから《RR》カード1枚を墓地へ送る。俺が墓地に送るのは《RRーミミクリー・レイニアス》だ。さらにこのカードが墓地へ送られたターンの自分メインフェイズに、墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから《RR−ミミクリー・レイニアス》以外の《RR》カード1枚を手札に加える。永続魔法《RR−ネスト》をサーチ、そして発動!1ターンに1度しか使用できないが、自分フィールドに《RR》モンスターが2体以上存在する場合にこの効果を発動できる。自分のデッキ・墓地の《RR》モンスター1体を選んで手札に加える。墓地の《RRーミミクリー・レイニアス》を回収だ」

「しょっぱなからブン回ってませんかね、黒咲サン?もうちょいゆっくりしてくれてもいいんだぜ?」

「は、どの口が抜かす」


鼻で笑った黒咲は自らのフィールドにいる機械仕掛けのハヤブサたちを一瞥して、特殊召喚の構えに入る。


「レベル4が2体!くるか、黒咲」

「ああ、言われなくても見せてやるから黙ってろ。俺はレベル4 《RR−バニシング・レイニアス》とレベル4 《RRートリビュート・レイニアス》でオーバーレイネットワークを構築!こい、ランク4《RRーフォース・ストリクス》!守備表示でエクシーズ召喚!そしてモンスター効果を発動だ!このカードの攻撃力・守備力は、このカード以外の自分フィールドの鳥獣族モンスターの数×500アップする。よって攻撃力は600、守備力は2600となる!さらにオーバーレイユニットを1枚取り除き、1ターンに1度、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4モンスター1体を手札に加える。カードを1枚伏せてターンエンドだ」



城前は笑う。


「びっくりするほど順当な滑り出しだな、黒咲!その手札がこえーぜ。怖。よし、それじゃおれのターン!ドロー!」


城前は魔法を駆使して準備を墓地を整えていく。すさまじい勢いで肥えていく墓地により、《ライトロード ・ビースト ウォルフ》が召喚された。


「さーて、そろそろ動くとしますかね!おれは《ゴブリンドバーグ》を召喚!このカードが召喚に成功した時に手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚することができるぜ。ちなみにこの効果を発動した場合、このカードは守備表示になる。さあこい、《ライトロード ・アーチャー フェリス》!そしてライフポイントを1000支払い、《Emトリック・クラウン》を墓地から攻撃表示で特殊召喚!そんでだ、ダメージを受けた時、墓地にある《H・C サウザンド・ブレード》のモンスター効果を発動しフィールドに特殊召喚!」


あっというまに城前のフィールドはモンスターで埋め尽くされてしまう。


「さあいくぜ!レベル4《Emトリック・クラウン》とレベル4《ゴブリンドバーグ》でオーバーレイユニットを構築!エクシーズ召喚!ランク4《ラヴァルバル・チェイン》!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキからカード1枚を選んで墓地へ送る!」


墓地に送られたカードを見て黒咲は眉を寄せた。《妖精伝姫シラユキ》である。嫌な思い出しかない。


「さーらーに!俺はレベル4《H・C サウザンド・ブレード》とレベル4《ライトロード ・ビースト ウォルフ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!ランク4《ライトロード・セイント ミネルバ》!このカードのX素材オーバーレイユニットを1つ取りのぞき、自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る!その中に「ライトロード」カードがあった場合、その数だけ自分はデッキからドローする」


城前はカードを公開した。


「よっしゃあ、2枚!俺は2枚ドロー!よっしゃ、さらに《ソーラーエクスチェンジ》を発動だ!手札から《ライトロード》と名のついたモンスター1体を捨てて発動できる。
デッキからカードを2枚ドローし、その後自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る!さらに」

「そうはいくか!俺は罠カード《ゴッドバードアタック》を発動!さあ、《ライトロード ・アークミカエル》と《ライトロード ・セイント ミネルバ》を破壊しろ!」

「ただでは終わらねえさ!《ライトロード ・アークミカエル》のモンスター効果を発動!このカードが破壊された時、このカード以外の自分の墓地の《ライトロード》モンスターを任意の数だけ対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻し、自分は戻した数×300LP回復する。おれは7枚戻して2100回復。さらに《ライトロード ・セイント ミネルバ》の効果を発動だ。その数だけ自分はデッキからドローする。さらに《ライトロード ・セイント ミネルバのカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合に発動できる。
自分のデッキの上からカード3枚を墓地へ送る。その中に「ライトロード」カードがあった場合、その数までフィールドのカードを選んで破壊できる。ま、意味ねえけどな!さあ、バトルだ黒咲!」


誰もいないフィールドである。


「《ラヴァルバル・チェイン》でダイレクトアタック!」




「ぐうっ」


黒咲に1800のダメージが襲う。ガンガン減っていく数字。ぴ、という音と共に2200の数値がデュエルディスクに表示された。ライフポイントのコストをガンガン使いまくる城前のせいで、一見すると黒咲の方が勝っているように見えるが、黒咲はまだ攻撃するターンが回ってきてすらいなかった。つまりここまで城前が一人でやったも同然である。舌打ちをした黒咲は城前を睨みつけた。


「おいおい大丈夫かよー?なんかすげえ声でたぞ」


けらけら笑いながら茶化してくる声にいらっとした黒咲は言葉を荒げる。


「まだまだこの程度なら大したことないな。いいのか、城前。たった1ターンで2000も使うとは」

「あはは、問題ねーな!なんせおれの手札と墓地はおれのライフポイントも同然だからな!」


すでに半分以下のデッキ、それ以上に蓄積された墓地、そして手札。黒咲は眉を寄せた。あの墓地には幾度も邪魔をしてきた《妖精伝姫シラユキ》がスタンバイしているのである。


「俺のターンドロー!」


それでも黒咲は舞い込んだカードを加えた手札と墓地を見つめ、展開を迅速に考えていく。見え透いた地雷なら吹き飛ばしてしまえばいいのだ。そして動いた。


「俺は魔法カード《死者蘇生》を発動!自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。俺が選択するのは《RRーフォース・ストリクス》。守備表示で特殊召喚!さらに魔法カード《RUMーアージェント・カオス・フォース》を墓地に捨てる」

「え、捨てる?」

「そうだ、これが次なる布石となる!俺は《RRーフォース・ストリクス》でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!エクシーズ召喚!現れろランク6 《RRレイド・ラプターズ−レヴォリューション・ファルコン−エアレイド》!このカードは手札の《RUM」》魔法カード1枚を捨て、自分フィールドのランク5以下の《RR》エクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚する事もできる。このカードがエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!さあ、1800のダメージを受けろ!」


《RRレイド・ラプターズ−レヴォリューション・ファルコン−エアレイド》が放った一撃により《ラヴァルバル・チェイン》の断末魔がかき消される。轟音と爆風が城前を襲った。思わず体をかばう。


「うわああっ」

「さっきのお返しだ」


ピピピという音がなりやまない。城前のデュエルディスクのモニターは真っ赤になった。


「ふん、だから言っただろう。ライフポイントを削りすぎたとな」


黒咲の手にはもう一枚の緑のカードが握られていた。無意識のうちに手が白むのは城前が防御札を出してこないからである。違和感しかなくて気持ち悪い。墓地が肥えていないならいざ知らずだ、城前はカードを引き込む能力に恵まれていないから。だが今は違う。それを補うためにデッキの構築を考え、理論で武装しながら城前はデュエルを行うのだ。いくら運命力が低い城前でも確率的に間違いなく有利な盤面をととのえていれば話は別となる。なのに何もしてこないのだ、この男。黒咲は張り詰めた緊張感と警戒心をむき出しにしたままデュエルを続行する。


「俺は魔法カード《RUMランクアップマジック−レイド・フォース》を発動!自分フィールドのエクシーズギフトモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターよりランクが1つ高い《RR》モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。俺は《RR−レヴリューション・ファルコン−エアレイド》でオーバーレイ!ランクアップエクシーズチェンジ!ランク7《RR−アーセナル・ファルコン》 !オーバーレイユニットを1枚取り除き1ターンに1度、デッキから鳥獣族・レベル4モンスター1体を特殊召喚する。こい、《RRートリビュート・レイニアス》」


ここで黒咲は《RRーミミクリーレイニアス》を絡めたエクシーズを並べていく。気づけば《ファイナル・フォートレス・ファルコン》のモンスター効果の弾を稼ぎつつ、《ファイナル・フォートレス・ファルコン》を呼び出す迎撃準備が整っていった。そしてフィールドを埋め尽くす《RR》たち。黒咲は総攻撃を命じた。


「オーバーキルにもほどがありませんかねえ、黒咲さんよっ!」

「どの口がいう」

「そうはさせるかあっ!おれは《超電磁タートル》のモンスター効果を発動!こいつを除外してバトルフェイズを終了させるぜ!」

「ふん、無駄なあがきを」

「無駄かどうかは次のターンになってみなきゃわかんねーだろ!!くっそー好き勝手にいいやがって!」


城前はドローを宣言した。



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