遊矢は《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》に飛び乗り、一気に駆け上がる。熱湯のようなものが胸へ突き上げてくる、その高揚感のままに攻撃を命じた。城前の目前に光の砲撃が襲いくる。
「そうはいかねえなあ!オレは手札から《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》 のモンスター効果を発動だ!」
「えっ」
「1ターンに1度自分のPモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、その自分のモンスターはその戦闘では破壊されない!攻撃表示で特殊召喚させてもらう!もちろん効果の対象は《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》だ!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》はもう攻撃宣言してる、対象の変更はできないぜ。こいつの守備力は3000、《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の攻撃力は2000、追撃は無理だな諦めな!」
《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》は城前の前に進みでると、呪文を唱えながら結界を張る。その緑の杖出もって光の砲撃を薙ぎ払った。そして挑発めいた笑みを浮かべる。
「うーん、やっぱりダメかあ。あわよくばと思ってたんだけど」
「あたりまえだろ!お前のデッキ殺意が高すぎることはよーくわかってんだよ、こっちは!!後攻ワンキルとか笑えねえにも程があるわ!あんだけ啖呵切っといてまさかのワンショットとか!」
「まあ、お楽しみはあとでとっとくよ。これで《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力は戻り、オレはターンエンド」
「よっしゃエンジンかかってきた!おれのターン、ドロー!」
城前の宣言どおりワンキル館オリジナルの《EM》カードが目白押しである。強力なサーチの連鎖によりどんどん手札が肥えていく上に、ちゃっかり《オッドアイズ・ペンデュラム ・ドラゴン》や《EMオッドアイズ・ユニコーン》をサーチする。そしてがら空きのペンデュラムゾーンに《EMオッドアイズ・ユニコーン》と《EMドクロバットジョーカー》をセッティングした。《天空の虹彩》の効果でエクストラデッキが表側表示モンスターで積み上がっていく。ようやく手が止まる。ここまでの間の隙をつき、遊矢はこのターンのアクションカードを入手することに成功した。だが城前は反応がうすい。気にもならないようだ。妨害が来るかどうかに神経を尖らせていたようである。
「まずは《天空の虹彩》にチェーンして《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》のペンデュラム効果を発動だ!1ターンに1度しか自分フィールドの《オッドアイズ》カードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から《オッドアイズ》モンスター1体を選んで特殊召喚する。蘇れ、窮地の壁を打ち砕く頼もしき渾身の一撃!墓地に眠りし《オッドアイズ・ランサー・ドラゴン》!」
「うっわ、また守備を固めてきた!」
デュエルディスクに表示されたモンスター効果を見て遊矢は反応する。
「でも、ほんとに意外だね。こいつもただの効果モンスターなんだ?ペンデュラムモンスターでもなさそう?」
「おれのデッキだと大事な守りの要なんだよ」
「なるほど、そういうことか。《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》に《オッドアイズ・ランサー・ドラゴン》!やな効果!」
「褒め言葉だと受け取っておくぜ。
さあ、そろそろいくか!揺れろ、魂のペンデュラム !天空に描け光のアーク!ペンデュラム 召喚!雄々しくも美しく輝く二色のまなこ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
城前の手には魔法カードがある。くるか、と遊矢は身構える。
「さっきのお返しだぜ、遊矢!おれは装備魔法《魔界まかいの足枷》の効果を発動!装備モンスターは攻撃する事ができず、攻撃力・守備力は100になる。また、自分のスタンバイフェイズ毎に、装備モンスターのコントローラーに500ポイントダメージを与える。さあ、遊矢!お前の《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》に装備してもらおうか!」
「んなっ!?さっきの攻撃一撃も食らってないくせに殺意高すぎない!?」
「さっきあわよくば後攻ワンキル食らわせようとしたテメーに言われたかねえよ!これで《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力はたったの100だ!さあ、楽しい楽しいバトルの時間だぜ、遊矢!おれは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を攻撃!」
「ほんとにいいの?全滅するよ?」
「やってみろよ、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》で返り討ちにしてやらあ!問題ねーな!このターンで終わらせてやる!まずは《EMオッドアイズ・ユニコーン》のペンデュラム 効果で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に《EMドクロバット・ジョーカー》の攻撃力をあたえる!これで攻撃力は4300!さらに《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のモンスター効果を発動!戦闘ダメージを倍にするぜ!」
「いっ!?」
「さあ、8000越えの大ダメージを受けな!螺旋のストライクバースト!」
「通せるわけないだろ!!オレはアクションカード《スターコート》を発動!自分のモンスターは魔法・罠の対象にならず、戦闘で破壊されない!よって《魔界の枷》の効果は無効化されて墓地に行く!そして《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力は元に戻る!2800だ!」
「だが切れ味は受けてもらうぜ!3000のダメージを喰らいな!」
《オッドアイズ・ペンデュラム ・ドラゴン》の輝く咆哮が炸裂する。
「ぐううっ」
「忘れちゃいないだろうな、まだ追撃があるんだぜ?次は《オッドアイズ・ランサー・ドラゴン》で《超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン》を攻撃!これで終わりだ!」
全身が滾り、血を沸き立たせるような高揚感に身を任せ、城前は高らかに宣言した。
「残念だけど通せないよ!オレは永続罠《EMピンチヘルパー》の効果を発動!1ターンに1度、相手モンスターの直接攻撃宣言時にこの効果を発動できる。その攻撃を無効にし、デッキから《EM》モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される!おいで、《EMローリング・サンバー》!」
遊矢の目の前に愛らしい少年が現れ、陽気なサンバを踊り始めた。
「おいおい忘れてねーか?まだ《EMディゾルヴァー》がいるんだぜ?」
「ここで発動するんだよ!《EMローリング・サンバー》のモンスター効果をね!このカードは召喚に成功したとき、相手のモンスターを守備表示に変更することができるんだ!もちろん対象は《EMディゾルヴァー》!」
《EMディゾルヴァー》は《EMローリング・サンバー》が呼び出した不思議な光に包まれ、強制的に表示形式を変えられてしまう。
「あーくそ、うまくいくと思ったのに!でもま、今回のデュエルで遊矢の新しいカード情報の大盤振る舞いだし?悪くねーな、デュエルログの解析が楽しみだぜ!」
「そうやってオレのカード再現して使うのが目的なんだろ!」
「そうですけどなにか?おれの本業だからな、あっはっは。仕方ねえ、オレはターンエンドだ」
「ふー、なんとか凌ぎ切った!よーし、今度はオレのターン!ドロー!」
遊矢はカードを手札に呼び込む。いいカードが引けたのか笑顔がはじけた。
「よーし、今度こそこれで終わりだ!覚悟はいい、城前?オレは《超天新龍 オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン》のモンスター効果を発動!1ターンに1度、LPを半分払って発動できる。このカード以外のお互いのフィールド・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻す!」
「はあっ!?んなの認められるか!チェーンして《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》のモンスター効果を発動するに決まってんだろ!このカード以外のモンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に自分のエクストラデッキから表側表示のPモンスター1体をデッキに戻し、その発動を無効にし破壊する!」
「でもこれで二度目はないよな」
「バカ言え、まだ《オッドアイズ・ランサー・ドラゴン》があるぜ」
「でも全体除去したら意味がないよな!」
「あっまさか」
「気づいたみたいだね!《天空の虹彩》で《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を破壊するよ!」
「何考えてんだ、遊矢!?自爆特攻じゃないのかよ?」
「まあまあみててよ。《天空の虹彩》の効果でデッキから《オッドアイズ》カード1枚を手札に加える。そして、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》のモンスター効果を発動!融合召喚したこのカードが破壊された場合に発動できる。相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊する!」
《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》が爆発四散する寸前に巨大な茨がのび、城前のモンスターたちを一気に破壊してしまう。足場を失った城前は真っ逆さまだが遊矢は容赦しない。城前は近くの星に着地したのが見えたからだ。
「さらに《超天新龍 オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン》のペンデュラム効果を発動だ!自分の墓地のドラゴン族の融合・シンクロ・エクシーズモンスター1体を対象として発動できる。このカードを破壊し、そのモンスターを特殊召喚する!」
「はああっ!?なんだよ、その超絶効果!?ドラゴン専用の《復活の福音》じゃねーか!」
「もちろん《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を蘇生するよ!そして今、オレのエクストラゾーンには《オッドアイズ》モンスターがいる!運命の次元で止まった振り子が新次元で新たな時を刻む!スケールを無視して現れろスケール0!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》!」
「スケール0!?」
「そしてさあ、バトルと行こうか、城前!その身に受けろ、この一撃!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》でダイレクトアタック!!」
「アクションカード《回避》を使用するぜ!」
「でも後続がいる!さあ、みんなで一斉に攻撃だ!ダイレクトアタック!」
「うわあああっ!」
足場が一気に崩れ落ちる。城前の姿はやみにとけていった。
「だああくそ、また負けた!」
はるか上空から聞こえてくる声に遊矢は笑った。
「はい、これで2連勝!オレの勝ち越しだね、城前!」
「次は負けねえからな、遊矢!」
「もちろん、いつでもリベンジは受け付けるよ。もっとも互いにやることが終わったらね」
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