スケール24 デュエリスト・アドベント

星が切れるように冴え渡っていた。今にも降ってきそうな圧巻の星空だ。遠く青白く流れているような、天の川が見えた。紺青の空を天の川が白くにじんでいる。天の川の明るさがみる人をすくい上げそうに近い。金剛石や楠の露やあらゆる立派な宝石を集めたような、煌びやかな銀河の河床がそこにはあった。


星は瞬かない。空気がない宇宙空間では汚れた空気の妨害が存在しないからだ。深淵の暗闇でも互いに目視できるのは、星の聖域の名の通り、遊矢たちの足場である星々が輝いているからである。現在地の星はより輝きを増し、互いにどこにいるのか離れたフィールドでもすぐにわかる。きらきらと遊矢と城前の間を名前も知らない星が、後ろに長い光の尾を引いて流れていった。


「おれの先攻みたいだな!幸先いいぜ」


城前はデュエルディスクの点灯した光を見て、上機嫌でターンを宣言した。遊矢たちがここがネットの世界だと自覚しているためだろうか、わざわざデュエルディスクから手札が射出される演出ではなく、目前にカードが表示される形式で現れた。手を伸ばすと実体となって現れる。どうやら好きな方を選べということらしい。ソリッドヴィジョンとネットワークをリンクさせているからこそできる演出でもある。遊矢はちょっと笑って手札を見つめた。城前も旧式デュエルディスクを長いこと使用しているため、結局手元にカードがないと落ち着かないようだ。どのみち変わらない手札のカードたちである。


「おれはフィールド魔法《天空の虹彩》の効果を発動!」


はるか上空に虹色の円環が生まれる。そして、その七色の光の向こう側に、ドラゴンの影が見えた。支えきれなくなった表面を滑り落ちる雨粒のように、様々な色の光が滴となって零れていく。満たされた虹色は城前の周囲を一転させた。まるでオーロラである。城前が今立っている、とりわけ大きな星がきらきらと輝く。それに呼応して、周囲の足場となる星々が視界いっぱいにきらめいていた。距離があるはずなのに、星がとても近く見える。無数のきらめく光が、まるで夢のように広がり、ただひたすらに、美しい眺めがあった。いろいろな光度といろいろな光彩でちりばめられた無数の星々の間に、光っている。城前が好きだと公言するだけはあって、ギミックが凝っている。


「このカードがフィールドに存在する限り、自分のペンデュラムゾーンの《魔術師》、《EM》、《オッドアイズ》カードは相手の効果の対象にはならない!また、このカード以外の自分フィールドの表側表示カード1枚を破壊し、デッキから《オッドアイズ》カード1枚を手札に加える!」


円環からこぼれ落ちた光が集積し、一つのカードとなって城前の手札に加わる


『遊矢と同じフィールド魔法か、まさか《オッドアイズ》デッキか?』

「かもね、さっきまでモーションの確認をしてたってことは、専用のデッキ組んでる可能性高いし。でもライトロードに搭載してるわけじゃなさそうだね、シナジーがなさすぎる」


遊矢たちの会話をよそに、城前の展開は続く。


「《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》をレフトペンデュラムゾーンに、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をライトペンデュラムゾーンにセッティング!」


もちろん光の支柱となって現れたのは、遊矢もユートも知らないカードだった。ユーリ達が教えてくれたカードでもない。どうやらワンキル館が新規として作成したカードは《オッドアイズ》だけではないらしい。


「《天空の虹彩》の効果により《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を破壊して、デッキから《オッドアイズ》カードをサーチ!そして、《オッドアイズ・アーク・ペンデュラム・ドラゴン》をセッティング!」


遊矢はいよいよ驚くしかなくなる。支柱となって出現した《オッドアイズ》もまた知らないカードだったのだ。

「のっけから飛ばすなあ?!なんだよ、そのカードたち!」

「これがさっきいってた《オッドアイズ》だぜ。ついでに《EM》もお披露目だ」

「やっぱりペンデュラムモンスターなんだ」

「当たり前だろ、シナジー考えたら」

「そりゃそうだけどさあ……ううーん、なんか落ち着かない」


でも、遊矢からすれば少々意外だった。《オッドアイズ・アーク・ペンデュラム・ドラゴン》はなんとレベル7の通常モンスターなのである。紫色の光沢が美しい、きれいなドラゴンだ。人目を引くのは、その中央にある青色の球体を囲う銀色の装飾。まるで振り子背中に水晶のようなトゲが生えている


「ここで魔法カード《デュエリスト・アドベント》の効果を発動!自分または相手のペンデュラムゾーンにカードが存在する場合に発動できる!デッキからペンデュラムと名のついたモンスター1体、またはペンデュラム魔法・罠カード1枚を手札に加える」


城前の頭上に巨大な振り子が出現した。遊矢がペンデュラム召喚を行うときに出現する、あの振り子だ。《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》はあの振り子を破壊して出現するが、どうやら城前はそうではないようだ。頭上の円環の回転が加速する。そして、流れ星がまるで雨のように降り注ぎ、青く光る彗星となる。長くたなびく尾はやがてエメラルドグリーンとなり、城前のいる一番星よりも明るくなっていく。細かな粒子が散っていった。細い流れ星が幾筋も輝きはじめ、星が降ってくる。星が降る夜はこんな感じなのだろう。

その光が爆発的な広がりを見せた先に、ドラゴンの咆哮が響き渡った。


「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」


どうやら、ペンデュラム、と名のついたペンデュラムモンスターはサーチしなかったようだ。この時点でライディングデュエルで使用した《竜剣士》との混合デッキではない、と遊矢は判断した。遊矢のもうひとつのエースと比べると、心なしデザインが違うようにみえる。使用者の性格を反映させているのかもしれない。


「そして、《貴竜の魔術師》を攻撃表示で召喚するぜ!」


ずいぶんと可愛らしい少女が現れた。ユーリ達とデュエルした時に使用していたという《魔術師》カードのようだ。《オッドアイズ》と相性がいい効果だったはずだ、警戒するに越したことはない。


「ここで《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》のペンデュラム効果を発動!ドラゴン族融合モンスターの融合素材を墓地に送り、エクストラデッキから融合召喚することができる!融合召喚!こい、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚!」




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