スケール21 vsマーメイル
『私が行こう』


ずい、と前に出たのはユートだった。デュエルする気満々だった遊矢は目が点になる。


「え、ユートが?」

『ここは私に譲ってくれないか、遊矢』

「いいけどさ、なんで急に?」

『ここから先、何があるかわからないからな。遊矢はその時のために備えていてくれ』

「……まーたそれ?あのなあ」

『愚痴ならいくらでもあとで聞いてやるから頼む。彼女のデュエルはさいわい動画で見たことがあるからな、おそらく問題ないはずだ』

「えー、やだっていったら俺が聞き分けのない子供みたいじゃないか!あーもうわかったよ。あとよろしくな、ユート。いっとくけど絶対に負けるなよ!」

『ああ、それこそ無用の心配だ』


突然遊矢の姿が変わり、違う少年が目の前に現れた。目を丸くした女性は目を瞬かせる。


「同じアカウントを数人で使っているのかしら?さっきの城前さんのお友達と同じアカウントを使用しているようだけど」


ユートは思わず破顔した。ここは本来肉体は外においてきて、精神だけがログインするネット上の仮想現実だということを忘れていた気がする。女性のいうとおり、ネット上でもユートは遊矢の体を借りている現実世界となんら変わらないらしい。


「ああ、そんなところだ」

「やっぱり、そうなんですね。時々いるんですよ。ひとつのアカウントを代わりばんこに使ってるご兄弟や恋人」

「私たちはいずれも違うがな」

「あら、そうなんですか?珍しい。では、あなたが私のデュエルのお相手ということでよろしいですか?」

「ああ」

「わかりました、よろしくお願いいたします」


礼儀正しく女性は一礼する。ユートもつられて礼を返した。


「では、はじめるか」

「ええ」


侵入者を迎えうつには、あまりにも穏やかな導入だった。半透明の遊矢はユートと女性を見守る。


「どうやら先攻は私のようだ。いくぞ」


デュエルディスクから5枚のカードが開示される。ユートはターンを宣言した。墓地を肥やし、手札を増やし、どんどん盤面を整えていく。


「これでエンドだ」


女性のデュエルディスクが点灯する。


「私のターン、ドロー!私は魔法カード《成金ゴブリン》を発動します。私はデッキから1枚ドローして、相手は1000ライフポイントわ回復させます」


ユートのライフが5000となった。


「私は《海皇子ネプトアビス》を攻撃表示で召喚します。そしてモンスター効果を発動!《海皇子 ネプトアビス》は1ターンに1度デッキから同名カード以外の《海王》カードを墓地へ送って発動できます。デッキから同名以外の《海皇》カード1枚を手札に加えます」

「手札を整えているのか」

「ええ、そんなところです。そして私は手札から《水精鱗−ディニクアビス》のモンスター効果を発動、自分のメインフェイズ時、手札からこのカード以外の水属性モンスター1体を墓地へ捨てて発動できます。このカードを手札から攻撃表示で特殊召喚します」


次々に《海王》、そして《水精鱗》モンスターたちが女性のフィールドに集いはじめた。


「この効果で《水精鱗−ディニクアビス》の特殊召喚に成功した時、デッキからレベル4以下の《水精鱗》と名のついたモンスター1体を手札に加えます」

「なかなか後続が途切れない、嫌な効果だ」

「ふふ、ありがとうございます」

「なにがおかしいんだ?」

「城前さんと同じこというから」


遊矢は思わず笑ってしまう。ユートに睨まれてしまい、それとなく目をそらした。

「さらに《水精鱗−メガロアビス》のモンスター効果を発動。自分のメインフェイズ時、手札からこのカード以外の水属性モンスター2体を墓地へ捨てて発動できます。このカードを手札から特殊召喚します。この効果で特殊召喚に成功した時、デッキから《アビス》と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える事ができます」

「バックまで整えてきたか、厄介だ」

「私は墓地に送った《海皇の竜騎隊》の効果を発動するわ。このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時、デッキから同名カード以外の海竜族モンスター1体を手札に加えます。さらに《水精鱗マーメイル−ネレイアビス》を手札から捨て、自分フィールドの水属性モンスター1体を対象としてモンスター効果を発動。自分の手札・フィールドの水属性モンスター1体を選んで破壊し、対象のモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、この効果で破壊したモンスターの元々の数値分アップします!」


女性が宣言したとたん、モンスターたちが雄叫びをあげる。


「私は《海皇子ネプトアビス》を破壊し、《水精鱗−メガロアビス》の攻撃力をアップ!さらに《海皇子ネプトアビス》の第二のモンスター効果を発動!このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた場合、同名以外の自分の墓地の《海皇》モンスター1体を対象として発動!フィールドに特殊召喚します!私は《海王の竜騎隊》を攻撃表示で特殊召喚!さらに墓地の《フィッシュボーグ−ランチャー》 のモンスター効果を発動します!
このカード以外の自分の墓地のモンスターが全て水属性の場合、自分のメインフェイズ時に発動できます。
このカードを墓地から特殊召喚します。この効果で特殊召喚したこのカードはフィールド上から離れた場合、ゲームから除外されます。なお
このカードをシンクロ素材とする場合、水属性モンスターのシンクロ召喚にしか使用できません」

「ここでチューナー……まさか」

「そのまさかです」

女性は高らかに宣言する。エクストラゾーンにモンスターが召喚された。

女性の上空にただよう真っ白なモンスターにユートは目を丸くする。


「来て、《白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス)》 」

「な、なんで君が蓮のカードを持っているんだ!」

「はい?」

「白闘気は蓮の使用テーマだろう!」

「あら、そうだったんですか?申し訳ありません。私はデュエルモンスターズ資料館の方々から頂いたカードを使用していますので、本来の持ち主については存じ上げておりません」

「……そうか」

「はい。このカードはワンキル館オリジナルだと聞いておりますから、白闘気と名はついていますが、蓮さんて方はもってらっしゃらないのではないかしら」

「……そうか、そうだったな。うっかりしてた。ワンキル館はそういうところだったな」

「納得していただけましたか?」

「納得はしてないが、理解した」

「ではデュエルを続けましょう」

「ああ」

『これがワンキル館のやり方かあ。本領発揮って感じだな』

「そうだな」


悠々と夕暮れの空を泳ぐ一角獣を仰ぎ見て、遊矢は複雑な表情を浮かべた。


「このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地の魚族モンスター1体を対象として発動できます。
そのモンスターを特殊召喚します。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できませんが問題ありません。次なる布石とするだけです。さらに《アビスケイル−クラーケン》の効果を発動!《水精鱗》と名のついたモンスターにのみ装備可能な装備魔法です。私は《水精鱗−メガロアビス》にこのカードを装備!装備モンスターの攻撃力は400ポイントアップします。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上で発動した効果モンスターの効果を無効にします。その後、このカードを墓地へ送ります。さあ、準備は整いました。バトルといきましょうか!」

「受けて立つ!」

「まずはその伏せてあるモンスターを攻撃します!」


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