Don't blind your eyes!(漫画版夢主がエクシーズ次元に落ちた場合)
「ユート、今度の土曜日予定はあるか」

「今度の土曜?予定は特に・・・・・・急にどうしたんだ、隼」

「今度学校対抗のデュエル大会があるだろう、観戦にいかないか」

「それはしってる。でも隼たちがでるのは日曜だろう?土曜は予選じゃないのか?」

不思議そうに訪ねてくるユートに、黒咲はパンフレットを渡しながらいった。

「カイトたちが出るんだ、行くぞ」

「えっ、カイト達が!?」

ユートはあわててパンフレットの出場者リストをめくり始めた。黒咲は真剣な表情のまま、なにかを考え込んでいるのか腕を組んだ。

プロデュエリストを目指す訓練生の実力向上と交流をかねて、定期的に開催されているのが学校対抗のデュエル大会である。団体、シングル、タッグデュエル、アクションデュエルの4種目で行われており、出場者は学校を代表するデュエリストばかりだった。

シングルスは勝ち抜き方式で行われ、それぞれの学校内で行われる予選を突破した決闘者のうち、シードを与えられる選手が各校2名、予選を免除される準シード選手各校4名を含む120名ほどが参加資格を得ることができる。シード選手は国際大会のルールに従い、世界ランキングを元に決定されていた。

団体はトーナメント戦で行われる。参加人数は16チーム。団体戦出場資格を得た各チームは、シングルスに出場資格を持つ決闘者に、団体戦のみに出場する決闘者に加えて、3名のチームを編成しなければならない。シード権のリストはシングル同様世界ランキングをもとに参加する決闘者を対象としたリストで順位が決定していた。団体戦はシングルスを2試合、タッグデュエルを1試合、シングルスを2試合の順で行われ、先に3試合を先取したチームが勝利となる。

監督から配布された日程表に目を通した黒咲は、いつもならすぐに見つけられるはずの名前が見あたらず困惑する。毎年、カイトを擁するクローバー校と黒咲率いるスペード校は、シングルスはもちろん、団体戦も毎年シード枠である。予選が行われる日程は訓練場で最終調整にいそしむのが定番だった。順当に勝ち進めばどのあたりでぶつかるのかシード枠をざっと確認した黒咲は、シングルスですぐにカイトの名前を見つけることができたのだが、団体の項目にクローバー校の名前が見あたらないのだ。どういうことだ。カイトもサヤカもランキング上位の常連のはず、普通ならば自動的にシード枠になるはずだ。まさか3人目がランキング上位ではないのだろうか。そう思って準シードのリストをめくってみるがそこには校章も名前も見あたらない。まさかと思って今までみもしなかった予選枠を確認した黒咲は、ようやくクローバー校の名前を見つけることができた。メンバーを確認してみる。カイトとサヤカはおなじみとして、今回、黒咲が知らない名前がそこにはあった。この決闘者がクローバー校の団体戦における平均ランキングを著しく下げているのは間違いない。いったい何者だろうか、と黒咲は思案するが全く記憶にない名前である。年齢は黒咲と同じ、一度も決闘をしたことがないのはめずらしい。団体の登録はタッグデュエルとシングルデュエルである。いつもは縁がないタッグデュエルの項目をみてみる。カイトと組んでいるこいつは予選に名前がある。疑問ばかりが浮かんでは消える。タッグデュエルのランキングもシングルスのランキングも予選を勝ち抜けなければいけないほどの実力なのに、わざわざカイトとおなじチームに入る理由がわからない。それだけ見込みがあるのだろうか、この決闘者は。


これは一度確認しなければならない。そう、思ったのだった。

「城前克己・・・・・・?」

「知らない名前だ」

「留学生?」

「さあ、な」

「カイトに聞いてみるか?」

「必要ない。トーナメントまで勝ち上がってこなければ、その程度の決闘者ということだ。目指すのは同じ高見だ、いずれぶつかるときがくる」

「でも、予選は見に行くんだろ?」

「それとこれとは話が別だ、ユート。俺はカイトの応援に行くだけだ」

「ほんとにそれだけなのか?」

「ユート」

ばつが悪くなったのか、低くなる声と黙れと言う無言の圧力をかけてくる金の目に、ユートはおかしくなってきて、笑ってしまったのだった。

トーナメントとは比べものにならない団体戦の予選会場は、早朝からごった返していた。もちろんクローバー校の制服が目立つ中、私服姿の黒咲達のような偵察にきているチームもちらほら見える。それだけ問題行動を起こしたわけでもないのに、予選から勝ち上がることになったクローバー校は注目の的だったのである。

城前克己という青年は、無名の訓練校から転校してきたライトロード使いである、という紹介がはいる。ライトロードといえば海外からハートランドに入ってきたテーマである。外国からの留学生だろうか、そのわりには黒咲達となんら変わらないようにみえたが。誰もが注目する試合は、シングルスにてサヤカが順当に相手を下し、クローバー校が1試合を先取した。次はいよいよ注目の城前克己である。戻ってきたサヤカにお疲れさん、とタオルとミネラルウォーターを渡した城前は、傍らでずっと話していた主将のカイトに声をかけられる。振り返った城前に、カイトは勝ってこい、と背中をおした。痛い痛いとおおげさに顔をゆがませた城前に、サヤカが笑う。せっかくの1勝ちをイーブンにするなと手厳しい応援がとんできたのか、城前はもっと応援してくれよとがっくり肩を落とした。

ずいぶんと仲がよさそうである。悪い奴じゃなさそうだ。カイトがわざわざ自分のチームに入れるくらいだ、当たり前だが。ほっとしたユートだったが、黒咲はデュエルをみてから決めると冷静である。対戦相手もやってくる。城前はデュエルディスクを構えた。ブザーが鳴る。先行は城前だった。


「おれは《ライトロード・アサシン ライデン》を攻撃表示で召喚する。そして魔法発動、《左腕の代償》!このカードを発動するターン、おれは魔法・罠をセットすることができない。このカード以外の手札が2枚以上の場合、その手札をすべて除外して発動できる。デッキから魔法カードを1枚手札に加える。おれが手にしたのはこいつだ、《同胞の絆》!このカードを発動するターン、おれはバトルフェイズを行えない。2000ポイントのライフを支払い、自分フィールド上のモンスター1体を対象に効果を発動することができる。ライデンと同じ種族、属性、レベルのカード名が異なるモンスター2体をデッキから特殊召喚することができる」


城前のフィールドには、《ライトロード・モンク エイリン》《ライトロード・ウォリアー ガロス》が特殊召喚された。黒咲は目を見開く。《左腕の代償》は2枚以上の手札をすべて除外という重い発動コストを持つが、この布陣では全く意味をなさない。デメリットのない魔法サーチカードと化しているではないか。黒咲の直感通り、超高速の墓地肥やしが始まった。


「ライデンの効果でデッキトップからカードを2枚墓地に送るぜ。そしてガロスの効果を発動、カードを2枚墓地に送り、2枚ドロー。おっと、《エクリプス・ワイバーン》が落ちたから効果を発動、デッキから《混沌帝竜ー終焉の使者ー》を除外するぜ。エンドフェイズにエイリンの効果でさらに3枚墓地に送る。追加でガロスの効果を発動、カードを2枚墓地に送り、1枚ドローだ。ターンエンド」


13枚の墓地肥やし、そして6枚以下のドローが可能になるコンボに黒咲は戦慄する。この墓地リソースを武器になにを仕掛けてくるのか、冷や汗が流れた。次のターン、なにもできなければ城前はゲームを終わらせにかかるだろう。ライトロードは墓地肥やしからすべてがはじまるテーマである。たった1ターンでここまでそろえてくるとは、さすがは混沌使いといったところだろうか。《裁きの龍》ではなく《混沌帝龍ー終焉の使者ー》のサーチを選択した理由が気になるところだ。


ターンの終了を宣言したとき、すごいな、と乾いた笑いがユートからもれる。黒咲の目に浮かんでいたのはいいようのない高揚感だった。


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