こたつに置かれるプレイマット。運命のダイスロールにより、先行は城前である。お互いにデッキを交換し、念入りにシャッフルする。手札は5枚。隣には電卓代わりの携帯電話。この時点で城前はニヤニヤしている。
城前LP4000
ユートLP4000
「おれの先行だな!いっくぜー、まずは光の援軍を発動!デッキトップからカードを3枚墓地に送り、サーチすんのはライトロード・アサシン・ライデンだ。そんでもって、ソーラー・エクスチェンジを発動!ライデンを墓地に捨てて、デッキから2枚ドロー!よっしゃあ、ウォルフが落ちたから特殊召喚するぜ。さらにデッキトップからカードを2枚墓地に送る。お、また来たからソーラー・エクスチェンジでミネルバを捨てて、さらに2枚ドロー。デッキトップから2枚墓地に送るぜ。ミネルバ効果でさらに1枚墓地いきだ!あっはっは、どうよ、ユート!絶好調だぜ、おれ!」
(うわー、すっげえ積み込み!)
「……違う、遊矢。積み込みじゃない」
「え?なんだよそれ、遊矢がなんか言ってんのか?おれとユートで1回ずつシャッフルして、さらにユートが3つにわけて並べ替えただろ、さっき!なんつー言いがかり!」
「落ち着いてくれ、城前。積み込みじゃないのは俺もわかってる。俺も似たような手札だからな」
「え?まじで?ユートもそんなにいいのかよ、なーんだ。全然まざってねえじゃねーか!おっかしいなあ、学校のヤツラとデュエルするときは、いっつもこうなのに。まーいいや、続けるぞ。おれはライデンを召喚して、効果を発動!デッキトップからカードを2枚墓地に送る。ライデンとウォルフでオーバーレイ、ランク4セイント・ミネルバをエクシーズ召喚するぜ!エクシーズ素材を取り除いて、効果を発動!デッキトップを3枚墓地送ってっと。えーっと、ライロ1枚落ちたから1枚ドロー。墓地のグローアップ・バルブを特殊召喚して、デッキトップから1枚墓地送り。そんで手札からライトレイ・ダイダロスを特殊召喚。レベル1バルブにレベル7ダイダロスをチューニング!うーん、どっちにすっかなあ。よし、決めた。スターダスト・ドラゴンをシンクロ召喚!ターンエンドだ、ユート」
城前LP4000…スターダスト・ドラゴン、セイント・ミネルバ
ユートLP4000
「わかった。俺のターン、ドロー。いくぞ、城前」
「おうよ!かかってこい!」
「言われなくてもそうさせてもらうさ。俺はデスガイドを召喚して、効果を発動する。デッキから彼岸の悪鬼スカラマリオンを特殊召喚。デスガイドとスカラマリオンでオーバーレイ、ランク3の彼岸の旅人ダンテをエクシーズ召喚する。オーバーレイユニットを一つ取り除き、効果を発動。デッキトップからカードを3枚墓地に送る。ダンテの攻撃力は2500だ」
「げっ、そっちかよ」
「残念だったな。スターダスト・ドラゴンじゃミネルバは守れない。バトルだ、城前。セイント・ミネルバにダンテで攻撃だ」
「まだだ、まだ終わんねえよ。ミネルバの効果を発動。デッキトップからカードを3枚墓地に送って、ライロがあったらその分破壊だ」
「落ちなかったな」
「うわーん」
「ダンテは攻撃を行ったことで守備表示となる。そして、カードを3枚伏せさせてもらう。エンドフェイズに、スカラマリオンの効果でデスガイドをサーチ。ターンエンドだ」
城前LP3500 スターダスト・ドラゴン
ユートLP4000 ダンテ
「くっそう。でも、墓地が結構肥えたから、一気に決めさせてもらうぜ!おれのターン、ドロー!よっしゃ、きた!どうやらデッキに愛されてるのはおれの方だったみたいだな、ユート!おれは手札から死者転生を発動するぜ。カードを1枚捨てて、墓地からカードを1枚手札に加える。墓地に光が4体以上溜まったから裁きの龍を特殊召喚!」
「それは通せないな。罠カード発動、幻影霧剣」
「げっ」
「裁きの龍は効果を発動することも攻撃することもできない」
「ですよねー、嫌な予感はしてたんだよ。でも負けねえ!墓地肥えたカオスライロを舐めんなよ!ライトレイ・ダイダロスを特殊召喚!」
「フィールド魔法がないのに入れてるのか」
「ゴーズが意外と腐るんだよ、これが。それじゃ、ダイダロスと裁きでオーバーレイ、ランク7迅雷の騎士ガイアドラグーンをエクシーズ召喚!」
「幻影霧剣は墓地か」
「さらに、ルミナスを召喚して、手札を捨てて効果を発動!ライデンを特殊召喚!効果で2枚墓地に送るぜ。レベル4のライデンにレベル3のルミナスをチューニング!シンクロ召喚!こい、アークミカエル!さあ、いくぜユート。ガイアドラグーンでダンテを攻撃だ」
「なら俺は幻影翼を発動する。対象はダンテだ」
「でもダメージは受けてもらうぜ、貫通効果だからな!100だけ!そんでもって、スターダスト・ドラゴンで攻撃だ」
「ダンテの効果で墓地のスカラマリオンを手札に加えさせてもらう」
「ずいぶん余裕だなあ?アークミカエルでダイレクトアタック!」
「トラップ発動、幻影騎士団ダーク・ガントレット。守備表示で特殊召喚だ」
「でも破壊されるぜ。それじゃ、アークミカエルの効果で墓地肥しさせてもらって、ターンエンドだ。よっしゃこいよ」
城前LP3500 スターダスト・ドラゴン、ガイアドラグーン、アークミカエル
ユートLP1400
「俺のターン、ドロー。おれは闇の誘惑を発動する。デッキを2枚ドローし、闇属性モンスターを除外だ。デスガイドを召喚する。そしてデッキからスカラマリオンを特殊召喚。2体でオーバーレイ、エクシーズ召喚。こい、幻影騎士団ブレイクソード!」
「いいのかよ、スターダスト・ドラゴンがいるんだぜ?」
「かまわないさ、このターンで決着をつけるからな」
「へーえ、やってみろよ」
「ブレイクソードとガイアドラグーンを破壊だ」
「スターダスト・ドラゴンで無効にして破壊させてもらうぜ」
「破壊されるのはブレイクソードだけか。なら問題ない。ブレイクソードが破壊されたこの瞬間、俺はラギッドグローブとダスティローブをレベル4で特殊召喚する!2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!来い、ランク4ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!そして、オーバーレイユニットをすべて取り除き、効果を発動し」
「ちょーっと待ったぁ!墓地のブレイクスルー・スキルを除外して効果を発動するぜ!ダリべの効果は無効はこれで無効だ」
「なら、次の手を考えるだけだ。幻影翼、幻影霧剣を除外して効果を発動だ。ラギッドグローブとダスティローブをさらに蘇生、レベル3の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚、来い、ランク3リヴァイエール!オーバーレイユニットを1つ取り除き、効果で城前のライラを特殊召喚させてもらう」
「えっ、ライラをか?」
「ああ。どうする、なにかあるか?」
「うーん……いや、いい」
「なら続けるぞ。今、俺の墓地に罠カードは存在しない!罠発動、シェード・ブリガンダイン!フィールドに特殊召喚させてもらう!ライラとブリガンダインでオーバーレイ!エクシーズ召喚!こい、ランク4!狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク!」
「えええっ!?」
「何驚いてるんだ、城前」
「えっ、いやだって、えっ!?なんでユートがもってんだよ、ナンバーズ!」
「ナンバーズ?ああ、このナンバーのことか?なるほど、ナンバーがついてるやつは、ナンバーズというのか。覚えておこう」
「いやいやいや、なんで知らないのに持ってんだよ、ユート!」
「驚いてくれたようでなによりだ。あの時は攻撃を悉く無効化されたからな、せっかくの2回目だ。それなりを披露しないと、城前も不満だろう?探してたらみつけたんだ。このあいだ発売されたパックに入ってただろ?」
「そ、そうだっけ…?」
「意外だな。城前のデッキに刺さると思うんだが、知らなかったのか?」
「……うん、知らなかった。まじかよ、うわっ」
「なら効果は知ってるな?墓地を見せてくれ」
「うわーまじかよーっ!」
「超電磁タートルとガードナーを除外させてもらおう」
「ですよねえっ!」
「さらに墓地のラギッドグローブを除外して効果を発動、デッキから幻影騎士団の魔法か罠を1枚墓地に送る。もちろん俺が墓地に送ったのは幻影剣!その効果を発動する!蘇れ、墓地に眠りしブレイクソード!そしてバーサークを1200の装備としてブレイクソードに装備する。さあいくぞ、城前。このあいだのお返しだ、バトル」
ユート
ダーク・リベリオン→3500
ブレイクソード→3200
リヴァイエール→1800
城前
ガイアドラグーン→2600
アークミカエル→2700
城前LP0
ユートLP1400 WIN!
「だーっ、負けたーっ!悔しい!」
「……よしっ」
(ユート、おめでとー!めっちゃ悔しがってたもんな!)
「うるさい、だまってろ」
(なんだよ、なんだよ。気を効かせて黙っててあげたのに!世界でいちばんやさしいオレに向かってなんてことを!)
「もっかい、もっかいやろうぜ、ユート!」
「ああ、もちろん」
(えええっ!?なんだよそれ、ユートばっかずりい!変われよ、ユート!)
「だから、遊矢は黙ってろ、うるさい!俺はまだ何も食べてないんだ!」
「おっと、忘れるとこだったぜ、サンキューユート!そろそろ食べようぜ!」
(城前ずりい!これで2回目じゃん!オレも食べたい!)
「城前が買ってくれたんだ、一番食べなきゃいけないのは城前だろう」
(でもさー!)
「ほい、これ。適当に好きなの食べてくれ。具材はぜんぶ浚いたいから、食べれる分だけ食べちゃってくれ。残りはおれが食うから」
「ありがとう」
「おう」
俺にも食わせろとうるさい遊矢に見せ付けるように、ユートは味が良くしみた鍋の具材に手を伸ばした。遊矢とユートの一人漫才をみて、城前は笑う。
「そんなに不満なら、最初にユートに食べてもらえばいいじゃねーか。いっつも遊矢はなんかいってんな」
「先に食べてもおかわりと言いかねないな、遊矢なら」
(だっておいしそうだから仕方ないだろ!いっつもこんなの食えねえもん!)
居城に構えているアジトを思い出し、レトルトやインスタントに溢れた食料庫を思い出し、遊矢は大げさにため息をついた。トークンが食事をしたところで、遊矢がお腹いっぱいになれるわけではないのだ。街を自由に出歩けないのは結構ストレスなのである。遊矢の姿がみえるわけではない城前は、ユートが投げる視線から、だいたいこのあたりかなと目測している。にと笑った城前に、遊矢は、疑問符を飛ばす。
「それじゃあ、おれも、いただきまーすっと」
(城前の鬼ー!悪魔ー!いたいけな少年になんて拷問を!)
「遊矢もたくさん食べただろ」
「そんなに食べたいっていってるのか、遊矢?」
(いえす、いえす、いえす!!)
「城前は気にしないでくれ。いつもお菓子ばかり食べて、ろくな食事とらないのはこいつの自業自得なんだ」
「あっはっは、まじか。心配して損した」
(ユートの薄情者―!また城前が余計なこと学んじゃったじゃないかあ!)
「城前、これが終わったらまたデュエルしよう」
「おう、いいぜ!次は勝つ」
「俺も負けるつもりはない。でも、今度はデュエルディスクにシャッフルを頼もう」
「ほんとにな!」
(ひっでえ、オレまだ城前とデュエルの決着ついてないのに!ずるいぞ、ユート!)
ぎゃーぎゃーわめく観客を尻目に、ユートは2杯目をよそい始めたのだった。
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bkm