奇妙な客人(漫画版夢主が漫画版の知識有の場合)
ひきだしの中身さま制作のクトゥルフシナリオ、杉山屋敷怪奇譚の一部をお借りしてます。



温かすぎる冬の終わりのことだ。少年はがらがらに空いているバスの座席に腰かけていいる。一人旅にしては大きなバッグを傍らに置くその手には、プリントアウトされたA4用紙が握られている。それは幾重にも折りたたまれて、すでにごわごわになっていた。

拝啓 ファントム様
突然のメールをお送りする失礼をお許しください。私はデュエルモンスターズのカードコレクター、久実遊人(ひさみ ゆうじん)の娘で久実東子(ひさみ とうこ)と申します。このたび、メールをお送りすることにしましたのは、父の残した書類を整理しておりましたところ、デュエルモンスターズのカードコレクションの中に、あなたがたが探し求めるものと思しきカードを当家にてお預かりしていることが判明したからでございます。素人目ながらもとても価値のあるものに見受けられましたので、私の判断だけではどうすることもできず、こうしてメールを差し上げた次第です。このカードは、私の父である久実遊人、そして他のご友人の方々と共同所有をしていたものを、一時的に当家で保管させていただいたものです。しかるべきところに鑑定していただいたところ、このカードは、歴史的価値からして非常に希少なものであり、おそらくはデュエルモンスターズ創世記につくられた、世界でも数枚しかないものであろうとのことでした。保存状態は大変良く、デュエルモンスターズの歴史資料としても遜色ないものと考えています。このようなせっかくの品物ですので、再びこの件について所縁の方にお集まりいただき、みなさまとご相談させていただきたいと思っておりました。その矢先、とあるご縁があり、あなたがたが探し求めるものであると風のうわさで耳にし、こうしてお送りした次第でございます。いかがなものでしょうか。御多忙のところお手数をおかけして申し訳ございませんが、連絡をお待ちしております。

かしこ    久実 東子

既に読み終えた手紙を確認して、少年は息を吐いた。市街地を走っていた車窓は次第に見慣れた大都会を離れ、閑散とした山に向かって突き進んでいる。まだ冬の盛りだというのに、気を急いている草花がすでに咲き始めているのが見えた。ここのところ、冬とは思えない春の日の温かさが続いている。

「どう思う?」

少年の視線はMAIAMI市にはないのどかな田園風景と背景に迫る海を見つめていた対面の座席に投げられた。

(どう思うも何も怪しすぎるだろ、ユート。これで怪しくなかったら、おかしいってくらい怪しい。このメール自体がつっこみまちなんだよ。だいたいさ、なんでオレたち宛にメールが届くんだよ、そっからまずはおかしいだろ)

「そのわりには乗り気だな、遊矢」

(だってファントムがG・O・Dを捜してるなんて、レオ・コーポレーションと特別な繋がりもないただの資産家がなんで知ってるんだよ。それを聞きだすだけでも悪い話じゃないだろ?面倒事はでっかくなる前に片づけないとさ)

「たしかにな」

遊矢と呼ばれた精神体の少年が自称する通り、MAIAMI市を騒がせているハッカーとは、何を隠そう、ユートと遊矢、このふたりのことなのだ。二心同体という奇妙な特性を持つデュエリストでもある。ファントム様、と送り付けられたメールには、ファントムが二人であること、その活動の目的についても言及がある。その上で、世界の命運を握るとされている世界に4枚しかない伝説のカードの存在を匂わせている。この時点で二人の興味をひくのは十分だった。あきらかな挑発だ。

「……ただのレアなカードかもしれないが」

(あー、そうなったらユート頼むな!オレ、鑑定なんてできないし)

「馬鹿言え、俺もできるわけないだろ」

(まあまあ、調べてみた限りじゃ、結構な資産家っぽいしー?たまにはバカンスってのもいいよな!オレたちを呼ぶってことは、特殊部隊の方は何とかしてくれるってことだろうし)

「調子のいいことを」

(なんだよ、ユートだって乗り気なくせに)

「うるさい。オレはただ可能性がゼロじゃないなら乗ろうと思っただけだ」

外の温かさを考慮して暖房がゆるく設定してあるようだが、西日が傾くせいか車内はことの他あつい。愛用しているフードを脱いで、バッグにかけるくらいには暑かった。人工の風に時折揺れるA4用紙には、郵便番号と住所、氏名、そして電話番号とメールアドレスが丁寧に記載されている。そして、交通費分がすでに振り込まれていたとなれば、乗っからない理由がみつからなかった。ここまで筒抜けなのは二人にしても初めてだったのである。ファントムが14歳の少年たちと分かっているだろうに、ここまで懇切丁寧に書かれては相手が強敵であると確信するのは十分だった。

二人は手紙に記されている久実東子なる人物が住むMAIAMI市にほど近い田舎に向かっていた。目的のバス停についたころ、ただでさえ空いていた車内はいよいよもって人がいなくなり、ユートだけ降ろしていってしまう。物珍しそうに学生が見届けるのが見えた。噂通りの無人駅である。初めてみる無人駅に興味津々で辺りを見渡す精神体は放置して、ユートは駐車場を目指して歩いていく。さいわい敷地は狭く、目的のものはすぐ見つけられた。携帯は安定の圏外。資産家はどうしてこう不自由な場所に豪華な邸宅を構えたくなるのか、現代の英知に慣れ過ぎた少年たちは不便すぎる環境に不満を漏らす。さすがに資産家屋敷内ではインターネットは完備されていると事前情報として調査は終わっている。カードコレクターだった男の邸宅だ、アクションフィールドの環境は揃っていることは確認済だ。そうでなければ、敵の陣地に潜り込むなんて真似、ユートが承諾するわけもない。問題はあまりにも田舎すぎてまわりには民宿程度しかやっておらず、邸宅から移動するには車を持たないユート達には絶望的な距離であり、久実邸で宿泊するしか道がないということだろう。

他の客人を幾人も迎え入れることを事前に告知していた主人は、すでに手筈が万全である。そこには無人駅には不似合いな外車が止められていた。ユート達を見つけた人影が外車から下りてくる。老齢ながら趣味のいい洋装をしている男性だ。

「ファントムさまですね?」

その問いは疑問ではなく、たんなる確認である。

「久実…さん…ですか?」

ユートの問いに、はい、使いのものです、と男性はうなずいた。

「主様は邸宅でお待ちです。どうぞ、こちらへ」

後方のドアを開けられ、促される。精神体の遊矢は口笛を吹いた。当然男性には聞こえない。さすがは大富豪、執事だ執事、と遊矢はテンションが上がっている。ファントムについて聞かされているようで、ユートしかいないのに男性はユートが乗り込むと他に仲間はいないのか訪ねてくる気配すらなかった。

「すいません」

「いえ、お気になさらず。お招きしたのはこちらですから」

ゆるやかなエンジン音の後、外車は悪路を走り始めた。ふかふかなリクライニングシートに座り心地が悪いのか、ユートはそわそわしている。遊矢は子供じみたことばかりしている。咎めるような視線を投げてもハンドルをとる男性は興味を示す様子はない。欠伸をしてしまいそうな春の陽気とはいえ、まだ冬である。日が落ちてから真っ暗になるのはあっという間だった。

手持無沙汰のユートは外を見ていた。ヘッドライトが照らす先は針葉樹林の影が迫る。不安になるほどゆがんだガードレールでまじきられた一車線の悪路を走る外車は、ずんずんと進んでいく。さっきまで見えていた満月も、この深い山道ではたいした光源にはなりえない。ヘッドライトの照らすほんの少し先の明かりだけがすべてだった。リアス式海岸に沿って這う悪路は左右にユートたちを揺らし、乗り心地がいい外車でも気分が悪くなる程度には酷かった。少し気分が悪い。運転手にことわって、ユートは窓を開けた。さすがに夜になると一気に気温が下がる。凍えるような風がなだれ込んでくる。頬を掠める冷たさに、フードを厳重に羽織る。すこしだけ目が覚める。窓はそのまま少しだけ開けておいた。無人駅から車を走らせること半時間、後部座席のユートを映すルームミラーに視線を投げた運転手はもうすぐですと告げた。田舎のもうすぐがもうすぐではないことを都会の少年たちは知らない。

道は針葉樹林から徐々に岩壁が張り出した寒々しい土地に続き、だいぶん開けてくる。ここまでくれば満月も結構な光源となる。いよいよ私有地なのだろう、最低限しか舗装されていないがアイフォンに電波がたつあたり人の気配を感じる。やがて三人を乗せた車は月が満ちる海岸が印象的な邸宅に辿り着く。古い洋館である。高い屋根と大きなガラス窓、そして海外の古い洋館を移築したといわれれば納得する佇まいである。時代は感じるが具体的に求められたらユートも遊矢も答えられないような、お屋敷らしいお屋敷だった。

「空がぐずついてきたようです、どうぞ中に。主様がお待ちです」

呼び鈴を鳴らして、立派な扉が開かれるのを待った。一礼して招き入れたのは先ほどの男性と似たような洋装の女性だ。本格的なメイドさんだとテンションが上がっている遊矢に頭痛を覚えながら、ユートは入っていく。玄関から入ってすぐ、シャンデリアがまぶしい応接間が鎮座していた。螺旋を描く階段の中央には分厚くて柔らかなじゅうたんがひかれている。それが良質なことはふかふかで落ち着かない足元が教えてくれる。趣味のいいガラスの机と向かい合うように置かれた豪華絢爛な椅子。遊矢が目を輝かせるくらいには豪邸だった。見渡すだけでも楽しめる博物館とはこのことだろう。

「久実…さんは…?」

「少々お待ちくださいませ、ただ今主様は他のお客様の対応をしておられます。どうぞ、こちらにおかけください」

「あ、はい」

ユートたちは促されるまま歩き出す。そこには既に先客がいた。ユートたちより年上の青年である。外ハネの目立つ茶色い髪に、色素の薄目な茶色の目。髪に隠れている銀のピアス、ちらほらアクセサリが見えるが、シンプルなデザインが目立つ。快活そうな笑みが印象的な、話しかけやすそうな雰囲気がある青年だ。十代後半だろうか、ユート達が自分たちは場違いだと自覚する程度には趣味のいい服を着ている。人好きのする笑みを浮かべて、青年は軽く会釈した。ユート達はつられて挨拶する。どうやら客人のなかで一番若いのはユート達のようだ。いままで最年少だったらしい青年は、年近いユート達をみてうれしいのか声をかけてくる。

「はじめまして。おれは城前克己っていうんだ、よろしくな」

「オレはユート、です。よろしく」

「おう、よろしくな。あ、そうそう。無理に敬語使わなくていいぜ、おれ、そういうの気にしねえから」

右手を差し出され、ユートは握手を交わした。

「あんまきょろきょろすんなよ?ユートの前のテーブル、売れば新車が買えるぜ」

「!?」

ぎょっとするユートに、反応が気に入ったのか城前と名乗った青年は、足元を指差した。

「絨毯も」

思わず爪先立ちになる。

「もちろん、このソファもな」

背もたれにはくつろげなくなった。あははっと城前は笑う。

「まあ、普段使いしてるみたいだし、そんな緊張しなくても大丈夫だと思うぜ?」

「そ、そうなのか…?」

「でもま、特に後ろのコレクションなんかは、倒すなよ?絶対に倒すなよ?」

つられて振り返った先には、思わず立ち上がりたくなるようなカードが並べられていた。

「東子さんは全然興味ないみたいだけど、もったいねえよな。こっからここまでは、いろんな商品の特典だったんだけど、ランダム封入だったから高いんだぜ。どいつもこいつも状態いいし、さすがはコレクターの屋敷だよな。えーっと、こっちは初期ウルレアだぜ、信じらんねえ。なんでカードが反らないんだよ」

「レプリカか?」

「いや、ホンモノだろ、これ。よっぽどレアハンターだったんだな、遊人っつー人は。こっちの段はパラレル、シクレアか、すげー」

ぴたりと城前の脚が止まる。

「ちょいまて、待て待て待てなんでホーリーナイト・ドラゴンがあるんだよ!マジモンのレアカードじゃねーか!初期のアルティメットレアまであるとかどうなってんだよ、ここのコレクション。二期のレリありすぎだろ……!」

「そんなにすごいのか?」

「昔の封入率はとんでもなかったんだよ。ボックス買ってもほとんどでないから、コピーカードが横行してたんだ」

「よく知ってるな」

「まあな。はえー、しっかし、命でも賭けてたのか、ここのコレクターさんは」

にひひ、と笑う城前と名乗った青年はずいぶんと観察眼があるようだ。

「城前はどうしてここに?」

「おれ?おれか?えーっとなあ、ユートはMAIAMI市にあるデュエルモンスターズ史料館ってしってるか?」

「ああ、聞いたことならある」

「おれ、代理で来たんだ。ホントはうちの館長が来るべきなんだろうけど、どうしても外せない用事があってさ。館長がご友人だったらしいぜ。ユートは?」

「……俺も似たようなものだ」

「だろうと思ったぜ!よかった、おれが一番下じゃないかって心配だったんだ。仲良くしようぜ」

「ああ、よろしく」

城前は笑った。ウエイトレスらしき女性がユートに紅茶かコーヒーか聞いてくる。あ、おれも手伝いますよー、と見た目通り女性に優しい城前は女性について奥の部屋に行ってしまう。ユートは静かにコレクションを見つめている遊矢に視線を投げた。

「どう思う?」

(ワンキル館の城前克己ってあれだろ、カオス使いの。世界で一番カード所有してる博物館が出てくるってことは、結構期待しちゃうよな。ここでお近づきになっとけば、ワンキル館にお邪魔する時結構お世話になるかもよ。ハッキング的な意味で)

「そうだな」

(でも、G・O・Dが出てきちゃったりしたら、結構厄介な相手だよな。審美眼結構あるみたいだし、ニセモノとすり替えたら速攻で気付かれそうだ。気を付けていこうぜ)

「ああ」

女性と一緒にお菓子を運んできた城前がユート達のところに帰ってくる。城前はコーヒー派のようでいい香りを纏いながらやってきた。ユートの隣に座る。女性に紅茶を受け取ったユートはさっそく口を付けた。いいなあ、と遊矢は羨ましそうに見つめている。お菓子をつまんでいる城前が話題を振ってきた。相当暇なようだ。

「ユートも食っとけよ、ここの主のお手製らしいぜ」

「お菓子か?」

「お菓子だけじゃなくて、今日のディナーもそうだってさ。金持ちの道楽はちがうねえ」

「城前もだろう、違うのか?」

目を丸くした城前は、おれ?と指差す。思わず破顔した城前は、食べかけのクッキー片手に、ちがうちがう、と首を振る。

「おれは単なるアルバイトだよ。これはよそ行き。馬子にも衣装ってな」

「そうか?着られてる感じはしないが」

「お、そーか?さんきゅー。でもそもそも借りもんだしなあ……似合うの適当にお願いしたからオープンザプライスはしない予定なんだ。汚れでもしたらエライことになる」

「そうなのか」

「まあ、一応、館長の代理だし。おれだってユートみたいな服で来たかったよ」

どこまでホントかは分からないが、城前はおしゃべりしたい青年のようで、暇つぶしには事欠かないようだった。

「もう他の人は来てるのか?」

「ああ、来てるぜ。そのご友人っていう50歳くらいのおっさんが来てた。なんか、部屋で休んでるみたいだぜ。ほら、えーっと、名前が思い出せないんだけど、デュエルの実況解説で時々コメントしてる人いるだろ?やたら戦士族押してくる人、元プロの」

「ああ、千紙とかいう?」

「そうそう、千紙。千氏陽生。あとは、えーっと、お母さんの代理って30歳くらいの里宙っていうおばちゃんがいたっけな。今は外の薔薇園観に行ってるぜ。そんで息子が死んじゃったから代わりに来たっていう来往っていうおじいちゃんがひとりいるんだけど、その人に接客してるみたいだな。今」

「これでぜんぶか?」

「さあ?それは聞いてみないとなんとも。あ、でも、特別ゲストを呼んでるとかなんとか言ってるのが聞こえたぜ」

「特別ゲスト?」

「あーうん、ファントムってしってるか?」

(あー……やっぱり客寄せパンダなんだ、そうきちゃうんだ。むっかつくなあ)

「噂なら聞いたことがあるな。MAIAMI市を騒がせてるハッカーだろ」

「そうそう、指名手配中の。そいつが捜してるカードがどうたらって。ほんとに来るのかねえ。ファントムってMAIAMI市を中心に活動してるやつって話だろ?それにカードを捜してるとか初耳なんだけど、おれ」

「ファントムに興味があるのか?」

「まあ、それなりに?だってレオ・コーポレーションのソリッド・ビジョンハッキングしてる、神出鬼没のデュエリストってはなしだし?一応、デュエリストの端くれだし、お手合せ願いたいなあ、なんて?まあ、ファントムがどんなやつか、知りたいってのもあるんだけどな!」

(ここにいるんだけどな!つーか、目の前でおしゃべりしてるユートとオレがファントムなんだけどな!)

あっはっは、と笑っている遊矢を尻目に、そうか、とユートは頷いた。

「城前はデュエルが好きなのか?」

「そうじゃなきゃ、ワンキル館の広告塔なんてやってねえっての。あ、ユートはデュエルすんのか?よかったら、あとでアクションデュエルやらねえ?自由に使っていいって話だしさ」

「ああ、よろこんで」

「そうこなくちゃな!あ、きたぜ、ユート」

促されて立ち上がったユート達は、螺旋階段を見上げた。そこにおりてくるのは老人と女性だ。どうやら彼女がここの女主人のようである。ユートは立ち上がった。

遊矢は興味なさそうに窓の外を見ている。ぽつりと水滴がついたかと思うと、ひとつ、ふたつ、と増えていく。不自然に針葉樹林が曲がっているのが見えた。これは一雨きそうである。そう考えている間にも、横殴りの雨がだんだん強くなっていく。さっきまで明るく照らしていた満月が遠くにあったはずの分厚い雲に覆われてしまっている。これは嵐になりそうだ。雨に気付いたのか、バラ園にいた女性が呼びに行ったメイドと共にかけてくるのが見える。これは閉じ込められたかな、と遊矢は思った。常闇が落ち、いよいよこちら側を映す鏡となっている窓をぼんやり眺めていた遊矢は、じっとその窓ごしに遊矢をみている視線に気付いて振り返る。

(やばい、見られてた!?)

遊矢はあわてて確認するが、もうその視線はユートを東子という女性に紹介するのに熱心になっている。これはうかつだった。遊矢は窓からうつらないところにこっそり移動する。

(城前克己だっけ)

冷や汗をたらりと流すが、城前はユートに確認をするそぶりは見せない。息を吐いた遊矢だったが、あのときみた城前という青年が笑っていたことがどうにもひっかかる。とても楽しそうな笑顔だった。カードのコレクションを見て、テンションが上がっていた時と同じような笑顔だった。遊矢は城前と会ったことはない。もちろんユートもこれが初対面だ。ファントムの姿を知るはずがない城前がどうして笑っていたのか、どうにも気にかかる。ファントムに会いたい、と言っていたから、白いフードをかぶっているファントムらしき姿が見えて、テンションが上がったとも考えられたが、誰にも言及しないのがおかしい。遊矢がやっぱり警戒した方が良さそうだと城前を見つめる。もしかしたら、ということもあるのだから。 


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