光の崩落(漫画版夢主×ライトロード×ヤンデレ)

天界の命に従い、死んだ英霊の魂を別次元にある自らの居城に導き、正義の名の下に集う騎士と魔導師の集団を組織した大天使がいた。開祖にして守護主である大天使の指揮により、弱者の祈りに呼応して現れる正義の集団はこうして誕生した。彼らは疾風の様に現れて悪を切り捨て去っていく。つかの間の平和は穏やかな日々を噛みしめ修行に励み、今日も現世の何処かに現れ悪を裁く、その集団の名はライトロード。いくつかの少数部隊で構成された正義の集団である。



ライトロードは5部隊に分かれている。まずは先発であり前衛部隊の第1部隊。先陣を切って現世へと出撃するライトロードの戦士達のことだ。この先発隊だけで事足りることも多いだけあり、強者が揃う。


次が第1部隊を後方から魔法で援護する第2部隊。先発隊だけでは状況が困難であると判断された場合、次に投入されるのが魔法に秀でた者達だ。


そして、相手が龍などの有力な存在であったり、戦場が空中となる場合に出撃する部隊、それが第3部隊である。
空からの支援と攻撃によって、戦場全てを掌握することを使命とする。


以上が実働部隊である。他にも敵地に侵入して情報を収集、及びかく乱を行う第4部隊がある。


そして第5部隊は裁きの龍。悪しき者を罪の大小にかかわらず等しく裁くライトロード最大の兵力である。大天使自ら出撃するその勇姿は全てをなぎ倒し、単体で一国を攻め落とすほどである。



そんなライトロードの諜報部隊に所属し、第1部隊として内側からの瓦解も行うのがライトロード唯一の暗殺者、ライデンである。彼は争いを止めるため殺すという一見した矛盾した正義を遂行する。 それは平和のため、そして仲間のため、全ては誰かの哀しみを殺すことに通じているためである。彼もまた、誇り高い英雄なのだ。



非常に残念ながら、大天使アークミカエルが使用者として相応しいと見定めたデュエリストは、そうは思ってくれないようだったが。



城前がカオスモンスターを活躍させるために、ライトロードを組んだことは知っている。ギミックとしての墓地肥やしが優秀で光属性のテーマのため、カオスモンスターを特殊召喚するための光餌が確保できる。常々城前が公言していることであり、ライデンはその優秀な効果故に他のカオスデッキに出張させられたから、城前が所持するデッキも把握しているのだ。



正義の名の下に集う光の精鋭にとって、デッキに組み込まれるカオスモンスターをはじめとした闇のモンスターは本来ならば不倶戴天の敵である。許容できているのは所詮まがいものにすぎないからだ。ライトロードに見定められながら、城前は精霊が見えない。質量を持ったまがいものとソリッドビジョンを改竄し実体をもった精霊の区別がつかない。異次元から城前と共にやってきたカードたちには意思はないが城前との思い出が存在する。触れることで読み取れることはたくさんあった。アークミカエルの危機感は肥大していった。


直接的な引き金は、城前が特定のテーマをどれだけ使い続けても愛着が湧いてくるデュエリストではないと結論が出たことだ。異次元から城前と共にやってきたカードたちはあっさりと城前が特定のテーマを使わないデュエリストだと思い出を提示する。変化する環境によってあっさりデッキを崩して、新しいデッキをくみ上げるデュエリストだと。中には大切にされていると勘違いしてしまいそうな扱われ方からカードプールに流された思い出もあった。いつか必ず起こりえる未来に目眩がしたのはみな同じだったに違いない。


大天使アークミカエルによる号令がかけられたのは、天界の許可が下りた即日だった。





城前はアクションデュエルを行うため、会場のコントロールパネルを開示した。新しいデュエルフィールドが導入されたため、アクションカードの位置やデュエルの流れなどを確認する必要があったのだ。初めて見るアクションフィールドにわくわくする様子の城前が選んだのはディストラクションオブライト。ライトロードメタにデザインされたにもかかわらず、今の環境ではむしろライトロードを強化させるフィールド魔法から生まれたアクションフィールドだ。


『アクション・フィールドをセッティング。フィールド魔法、《ディストラクションオブライト》を発動します。このカードには2つの効果があります。ひとつめは、このカードがフィールド上に存在する限り、アクションカードを使用することができます。アクションカードは1ターンに1枚しか手札に加えることができません。このカードはこのカード以外の効果を受けません』


「ディストラクションオブライト?」

「えっ、なんで館長知らないんだよ?館長が依頼したんじゃねえの?」

「アタシはこんなフィールド魔法発注した覚えはないんだけどねえ」

「まじでっ?!やばい、コントロールパネルがフリーズしてるっ?!」

「新手のウィルスにやられちまったかね。気をつけな、城前、来るよ!」


世界は強烈な赤に塗りつぶされた。



やはりアクションデュエルのソリッドビジョン程度では精霊世界の再現は不可能だったようだ、とライデンは思った。ライトロードは本来実体を持たない過去の英霊たちであり、実体するのはアークミカエルによる膨大な魔力により正常な精神と身体を維持しているに過ぎない。もともと仮初めの身体なのだ。そのため魂さえ不滅なら何度でも蘇生が可能である。そのためこの世界のソリッドビジョンの技術はライトロードの負担を大分軽減していたから期待したのだが、ライトロードの居城を完全再現するのは難しかったようた。



真っ赤な夕焼けに染まるジャスティスワールドは、謎の赤い光により攻撃を受け、壊滅状態に陥っている。すでに終焉を迎えた世界に倒れていた城前をライデンは揺り起こした。


「あれ、ここは?」


城前を心配そうに覗きこむと、驚いた顔をする。


「え、あ、ライデン?」


頷きながら手をさしのべると、サンキュー、といいながら城前は立ち上がった。砂埃を払い、辺りを見渡す。


「ここは......ジャスティスワールドだよな?なんかすっげえぶっ壊れてるけど......ディストラクションオブライトのイラストまんまだな。まさかアクションフィールド?」


ライデンは静かに首を振った。


「アクションフィールドじゃない?まさか精霊世界とかっ?!何があったんだよ、ジャスティスワールド!」


ライデンは悲しげに目を伏せた。


「あ、ごめん...まさか精霊世界があるとは思わなかったんだよ。なんでおれ、こんなとこに...」


ライデンは首をかしげる。


「だよな、わかんないよな。悪い。新しいアクションフィールドの確認してたら、どーも紛れ込んだやばいやつ起動しちまったみたいでさ。あ、そうそう、ライデン。おれ以外に人間がこなかったか?これくらいの背の女の人なんだけどさ」


ライデンは首を振った。そっか、と城前は焦ったようにつぶやいた。もともとこの世界に堕としたのは城前しかいない。はたから見れば忽然と姿を消したのは城前の方だが、戒厳令が下っているのでライデンは話す術を持たない。


ライデンは破壊されたライトロードの居城を指差し、手をさしのべる。


「案内してくれるのか?ありがとう、ライデン。お前のおかげで助かったよ」


ライデンは目を細めて笑った。安心したのか城前は素直にライデンに従い、瓦礫を歩き始める。


「精霊ってしゃべれないんだ?なんかイメージとちがうな」


ライデンは首をかしげる。そして城前の名前を呼んでみるが、本人はなんていったのかわからないようで、え?という顔をした。城前を指差し、もう一度いいなおす。


「あ、おれのことか?」


ライデンは頷いた。まいったなあ、と城前は思案顔だ。


「これからアークミカエル......様、のところに行くんだろ?おれが言ってること、通訳してもらってもいいか?」


もちろん、余すことなく伝わるだろう。いつもは付き従える立場だが、今は謁見するにもお伺いを立てなければならない、となんとなくわかって緊張気味な城前なら。言葉が通じないのはあまりにも予想外だったようで、城前の表情が曇る。ライデンからすればライトロードたちとの会話は城前が聞き取れたら不都合な真実ばかりなのだ。これからの処遇というすでに決められていた既定路線に疑問を抱かれたら困る。ライデンは頷いて城前を安心させることにした。


はじめからこちらを向いてくれたら、こんなことをする必要はなかったのに。


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bkm
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