憑依學園剣風帖10

遠野曰く、緋勇の歓迎会は主賓の緋勇、提案者の蓬莱寺、そして醍醐、美里、桜井、遠野、私といういつものメンバーにマリア先生。裏密も誘ったのだが占いで不吉な暗示がでるからと断られてしまったらしい。緋勇はひどく残念がり、裏密は悪い気はしなかったようで代わりに状態異常を治すアイテムをもらっていた。ちなみにそれは熱烈に残念がらないともらえないから仲間になるフラグ立ては順調なようでなによりである。緋勇自身は毒効果の攻撃手段があるやつが襲ってくるんじゃなかろうかという顔をしている。気が気じゃなさそうだ。

実際、妖刀にとりつかれたサラリーマンが花見大会のど真ん中で日本刀振り回してどっから湧いてきたのかたくさんの野犬と大暴れするからだいたいあってる。

「あ、そうそう。槙乃、これミサちゃんからね」

「え、私にもですか?」

「うん。槙乃にも良くない暗示がでてるからって」

「えええ......」

それは真っ赤な水晶だった。ヘマタイトという粉末状になり水につけると真っ赤に染る面白い性質がある成分が僅かに混入し、その鉄分によって赤色の発色を示しているのだ。

《如来眼》で見てみるとこの赤水晶は内側からエネルギーが煌々と揺らめいている。割れたら内側から炎が吹き出しそうな勢いだ。どうやら《火神之玉》という火神の霊力が宿った霊玉のようだ。これは文字通り火のダメージを与えるアイテムである。こんな序盤に入手できるようなアイテムではない。

「ありがとうございます......」

こんな序盤に火が弱点の敵が出るとか言われてもこまるわけだが。緋勇に毒治癒のアイテム渡したから、サラリーマンと野犬がいるのは変わらないとして、追加で敵が現れるといいたいんだろうか。こんなことなら犬神先生の呼び出し無視して裏密迎えに行くんだった、と私はちょっと後悔した。

「そこでミサちゃんがいってたんだけど〜、剣の暗示だって。それで思い出したのよ、こないだ槙乃がいってたやつじゃないかって。ね?」

遠野が後ろを歩いている緋勇たちに声をかける。幽霊が大嫌いな醍醐と裏密が苦手な蓬莱寺はオカルト研究会に連行されたことを思い出したのか顔色が悪い。緋勇がうなずく。桜井は不安そうな美里を励ましていた。

それは犬神先生に調べているのを見られて苦い顔をされたニュースだ。2週間ほど前、緋勇が転校してきた日だからよく覚えている。


今、国立博物館では全国から古い名刀を集めて日本大刀剣展をやっているのだが、そこに展示してあったはずの刀が一振夜のうちに忽然と姿をけしてしまったのだ。未だに犯人は捕まっていない。その盗まれた状況が異常であり、見回りの警備員も気づかず、防犯装置も作動せず、その刀が入っていたガラスケースもロックされたままで外部から刀に触れた形跡は一切無し。文字通りその刀はその場所から消えてしまった。盗まれた刀は室町時代の頃に鍛えられた無銘の刀だが、国立博物館に来る前に納められていた場所がいわく付き。

「日光の華厳の滝で古びた日本刀が発見されたのがその消えた刀らしいじゃない。滝壺の奥にあった祠の下に埋まっていた時点でフラグはたってたわけね、封印されてたのを掘り起こしたりするからよ」

「そうですね......私が調べた伝承と憶測に過ぎないのですが、日光東照宮の宮司となった男がその刀に操られたことがあり、その《力》を恐れて封じたと聞きましたし」

「うん、改めて聞いても明らかにヤバいやつだったわけね」

かつて戦国の世の頃にある一振りの刀があった。その切れ味は朝露を切るが如く、刀身は曇ることを知らず。まさに名刀と呼ぶに相応しい刀だったという。でも一方でその刀には不吉な噂がつきまとっていた。その刀は怨念に満ちた妖の刀で、人の血を求め、持ち主の生気を吸うといわれていた。室町時代、伊勢地方で三四代続いたある刀工が鍛えたその刀は江戸時代になり、徳川家に数々の悲劇的な死をもたらした。

家康の祖父、松平清康はその刀の持ち主によって殺された。そして父広忠もその刀によって傷を負い、さらに家康の子、信康が切腹に使ったのもその刀だった。

偶然かどうかはわからないが、それ以来その刀は徳川を祟る妖刀としてその大半が徳川によって処分された。やがて時代は移り、その芸術性を認められたその刀のうちの一振が後世、徳川との協議によって残されることになった。

残すためにはそれなりの条件があった。徳川を祟る妖刀といわれている刀だ。その刀を残す、封印する場所は、東照宮の膝元、つまり徳川の霊的聖地である日光東照宮の支配が及ぶ日光の土地が選ばれた。今までどこにあるかわからなかったが、今回華厳の滝で発見された刀はその妖刀の可能性が高いと専門家はみている。

「妖刀村正───────ほんとに実在するなんてね。あの時代は村正はクオリティが高すぎて全国の武将が買い漁ったからなにをするにも村正村正だっただけで、単純にそれだけ普及しただけらしいのに。幕末の志士があやかったのが広がったって思ってたわ」

「槙乃が気になってた事件だけあってオカルトじみてたな」

「でしょ?」

「槙乃ちゃん、槙乃ちゃんも、ミサちゃんの占いはその盗まれた刀が関係あると思う?」

美里に聞かれて私はうなずいた。

「他に剣の暗示と聞いて思い出せるような事件はありませんし」

「そう......そうなの......」

「何も知らないまま、巻き込まれるよりは頭の隅にでもおいておいた方が安心できませんか?葵ちゃん。誰かを守れると思いませんか?」

「誰かを......」

「葵ちゃんがいってたんですよ。素敵だなって思ったから使わせてもらいました」

「槙乃ちゃん......ありがとう」

「大丈夫、葵ちゃんが不安がるのは無理ないですよ。私みたいにオカルトが大好きだったり、アン子ちゃんみたいに好奇心の塊だったり、緋勇君たちみたいに初めから《氣》がつかえていた訳でもない。葵ちゃんは、ほんとに普通の女の子だった訳じゃないですか。しかも自分の《力》がどんなに怖くてすごいのか客観的にわかっちゃうんですよね。不安で怖くてたまらないけど、みんな誰も気にしてないように見えるから相談しにくいんですよね」

「それは......」

「緋勇君に相談してみたらどうでしょう?《力》については先輩なわけですし、ちゃんと話を聞いてくれそうですし、口固そうですし」

「槙乃ちゃん......ありがとう......。私、一度聞いてみる」

「ファイトです」

「ええ......ありがとう。頑張ってみるわ」

「おーい、2人とも!なにしてんだよ、置いてっちゃうよ!?」

校門前で1度解散し、6時になったら現地集合とのことだ。

新宿中央公園は、新宿区立の公園としては最大の面積を誇る都市公園だ。西新宿の近代的な高層ビル群に囲まれた場所にありながら、落ち着いた雰囲気で四季折々の豊かな自然が楽しめます。都庁と桜のコラボを眺められるのはまさにここだけ。

ソメイヨシノはもちろん、東京都庁を始め、そびえ立つ高層ビル群の中に、大都会のオアシスとして都民に親しまれている、緑豊かな公園でもある。フリーマーケットをはじめ、様々なイベントが開催され、夏に開催されるジャブジャブ池には多くの子供たちの姿がみられる。

姉妹都市である長野県伊那市の高遠コヒガンサクラが春の訪れを告げ、園内の植物が四季折々に彩る。そこには鳥や昆虫などの生き物も集っていた。桜特に濃いピンク色で非常にきれいだ。

さて、誰かもういるだろうか。

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