海底牧場4

葉佩から私の体調不良の原因と解決、《隣人倶楽部》の解体と肥後大蔵の仲間入りが知らされたのは、翌日の10月8日のことだった。

そして、学校に復帰したのは翌週の11日である。早朝、溜まりに溜まった課題や提出物のために職員室に来ていた。担当教師の誰もが長期の休みについて言及するどころか腫れ物みたいな扱いをされていることが気になってしかたなかった。そしたら雛川先生に捕まり、奥の進路指導室に連れていかれたことでようやく私は事の深刻さを把握することになる。

「ねえ、江見君。たしかに私は今学期から赴任したばかりの信毎教師かもしれない。でも、私はあなたの担任なの。先生じゃ江見君の力になれないかしら?」

「......雛川先生?」

雛川先生は憂い顔である。

「劉瑞麗先生から聞いたわ。この一週間の体調不良によるお休みは、嫌がらせによる精神的な問題が大きいって。そんなに思い詰めていたのに、気づくことができなくてごめんなさいね」

瑞麗先生どんな説明をしたんだろうか、とものすごく気になったが雛川先生は止まらない。

「葉佩君と皆守君が心配していたわ。先生、ちょっと聞いちゃったんだけどね。体に不調が出て、死にかけるほど追い詰められていたなんて......いったいなにがあったの?やっぱり萌生先生じゃないと相談なんて出来ないかしら......」

その言葉に大体のことを把握した私は頭を抱えたくなった。学校のド真ん中で私の話をするわけがないから、きっと屋上や保健室など皆守の出席率をあげるために自主的に巡回している雛川先生は、たまたまた二人の会話を聞いてしまったのだろう。私の事情を限りなく正確に把握している皆守は、きっと私が死にかけたことに驚き、葉佩はそこまで追い詰められていた、と判断した。

客観的に見れば言われたとおりの状況だから困る。

しかも同じ《ロゼッタ協会》所属の大先輩たる萌生先生から教導をうけ、引き継ぎをしていた関係で、私がかつて萌生先生に相当懐いていたと考えているらしく、雛川先生はものすごく気にしているらしい。言葉の節々からベテラン教師から途中でかわったことに対するプレッシャーが透けて見えてしまい、気の毒になってしまう。

「えーっと......」

言葉を慎重に選ばなくてはならない。この人は特記事項に想像力が豊かですと書いてあるくらい、色々と不安になればなるほど考えすぎて視野が狭くなり孤立してしまうタイプの先生だ。新任ゆえなのか理想の先生になるために必死でがんばるのに、いまいち報われない。理想と現実の乖離と孤立気味な職場に涙しながらもら頑張るしでいい先生すぎて不安になる人なのだ。これは断片的な情報を渡して想像力をかきたてるより全部渡した方がいいかもしれない。

私は雛川先生をみた。

「江見睡院ってご存じですか、先生。18年前まではテレビにも出たりしてそこそこ知名度があった考古学者であり探検家なんですが」

「ええと......ごめんなさい。存じ上げなくて。同じ苗字ってことは......もしかして、江見君のお父さんかしら?」

「はい、そうです。18年前歴史の教師としてこの學園に赴任して、そのまま行方不明になったオレの父です」

「えっ......ほんとうに?」

「はい。オレは父を探しに5月からこの學園に転校してきました。そのとき、なにか資料は残ってないかと思って、探し回っていたんです。職員室の資料を見せてもらおうとしたから、萌生先生には事情を話しました。でも見つからなくて、今に至ります」

「そうだったの......それで......」

「これだけは知っておいてほしいのですが、雛川先生が頼りないからではなく、頼る機会がなかっただけなんです。生徒会室も図書室も職員室や書庫まで調べ尽くしてもなにも出てこなくて。だからもし雛川先生が4月から担任だったならオレは頼っていたと思います」

「そっか......ありがとう、江見君。でもね、嫌がらせについては相談して欲しかったな......」

「ああ......オレはあんまり気にしていなかったので......」

「でも、精神的に追い詰められていたから休んだのよ、江見君」

「そうですね......」

なにもしらない人にはそう説明するしかないから困る。私はほほをかいた。

「今月に入ってから、父から手紙が来たんです」

「えっ、ほんとうに?」

「ただ、學園から出ていけってメッセージが毎日ポストに入っていて、ほんとうに父の手紙なのかわからないんです」

雛川先生の表情が強ばるのがわかる。そうだよな、普通ならそうなるよな。そりゃ、私だってそんな状況になったら思い詰めてしまうことだってあるかもしれない。江見翔という存在そのものが虚構じゃなかったら、この世の終わりみたいな絶望感に苛まれていたかもしれない。雛川先生は生徒の側にたとうと足掻きまくる先生だから、私の状況がだいたい把握できたらしかった。

「なんてことを......そんなの悪質すぎるわ......。辛かったわね、江見君」

私はうなずくしかない。悪質な手紙なのは事実だし、この手紙のせいで危うくこの体に固着している私という精神そのものが死ぬところだったのだから。

「今は、もう大丈夫なの?」

「あ、はい、それは大丈夫です。それで、葉佩たちが犯人捕まえてくれたんです」

「そうなの......」

あっ、まずい雛川先生の目が一瞬濁った。同じ時期にやってきた自分はなにも出来ないのに、學園内で噂になっている葉佩九龍の活躍に対するいろんな葛藤が浮かんでるやつだ。......葉佩雛川先生攻略してるみたいだから上手くいってるみたいだな。なにか、なにかフォローしなきゃ。

「雛川先生、ならお願いがあるんですが」

目に光が戻った。よかった。

「BAR《九龍》ってご存じですか?」

「えっ、ああ、あの?以前瑞麗先生に教えてもらってからは時々いっているんだけど」

「実はあそこのマスター、18年以上前からマミーズとBARをやっているんです。だから父のこと知ってるはずなんですよ。オレ時々話を聞きに行くんですけど、なかなか本題に入れなくて」

「まあ、そうなの」

「だから、今度瑞麗先生と女子会開くとき教えてください。オレもいってみます。雛川先生、大人だからお酒飲めるでしょう?オレより話を聞き出しやすくないですか?」

「そうね、それはたしかに」

「お願い、できますか?」

「ええ、もちろん。瑞麗先生と都合が合わないときでも先生がんばるわね」

「えっ、先生、そこまでしなくても」

「いいの、いいの、気にしないで」

はたから見たら教え子とBARにいくやばいシチュエーションなわけだが、雛川先生はあっさりと了承してくれたのだった。さすがはみんなのオレスコ先生だ。なんだかよくわからないが、ものすごくやる気になってくれてなによりである。

ここが人気の秘密なのかもしれない、となんとなく私は思ったのだった。

「あら、もうこんな時間だわ。江見君、そろそろ教室にいきましょうか」

「そうですね」

このあと私は葉佩からやけに雛川先生と仲いいがどういうつもりだと尋問を受けることになるなどまだ知りもしないのである。





《江見翔(えみしょう)》
3のCに5月に岡山県から転校してきた江見睡院を父に持つ一般人。18年前行方不明になった父を探してやってきた。宝探し屋だった父のことを主人公から聞かされてバディに加入することになる。

知力+40
取得経験値とレベルアップ時の上昇ポイントに影響
精神−15
ステータス異常に影響
洞察+10
銃撃に影響
直感+10
すべての武器の攻撃力に影響
敏捷+10
最大APに影響

数学+10(鍵開け)
歴史+10(碑文解読)
地学+10(行動力)
体育+10(ジャンプの飛距離)
生活+10(料理に影響)

アクティブスキル《電気銃》謎の古代銃、必ず麻痺効果、威力ははかいしれない。or《冷凍銃》謎の古代銃、必ず氷結、威力は破壊しれない。

パッシブスキル《父の知識》H.A.N.T.にランダムで射程情報追加→《偉大なる知識》確定で射程情報追加

相関図
友情
→期待の星
→希望の星
→羨望の星
愛情
→愛の伝道師?
→いみがわからない
→きみのせい


江見翔の相関図はだいたい事情把握してそうな意味深なものが多く、瑞麗先生、夕薙、七瀬、やっちーは好意的、幽香、生徒会は否定的、黒塚と皆守がなんかおもしろいことになっている


江見翔の弱点は精神力への攻撃。精神交換により江見翔の体を動かしているため、貫通して精神力けずられると中の人死ぬのでだめ。基本ロゼッタ協会に回収されて五十鈴にこんなところで死ぬとはなさけないされるので復活に時間がかかる
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