スケール22 vs素良@
「さーてと、とうちゃーく。それじゃあ、始めようか」

「いいのかよ、ドクターストップ振り切っちゃって」

「いいのいいの、どうせ暇だったし」

「アクションデュエルはできなくね?」

「ノリ悪いこと言わないでよ、城前。ボク、君とデュエルするの楽しみにしてたんだから」

「なんかやけに懐かれてんなおれ、全然理由がわかんねえ」

「いーのいーの、そんなこと城前が知らなくったっていいし。理由なんて特にないよ。城前って好きなお菓子にもいちいち理由求めるタイプなの?もしかして」

「あーそういう、考えるだけ無駄ってやつか。了解」

「そうそう。理由がないと安心できない程疑心暗鬼の塊じゃないでしょ?城前って。むしろほかのやつにどう思われようが実はそんなにダメージ食らわないタイプでしょ?」

「会って数回のやつにこの言われようである。お前の中のおれってなんなの」

「え、ちがう?」

「否定はしねえけど」

「でしょ?」

素良はふふと笑う。

素良がデュエルをすることに対して白衣の男は難色を示していた。えーやだ、の一言でそれを一蹴し、さっさと着替えてしまった素良である。どうもほかの仲間達は遊矢や赤馬社長のデュエルを現在進行形で観戦しているようで、一息ついたら紹介するといわれた。そっちの方が明らかに大事な気がするのだが、どうやら素良はいつぞやのデュエルを城前の自称弟子のデッキでやったことが残念で残念でたまらなかったらしい。城前の手を引いて部屋でると、迷子になってしまいそうなただっぴろい施設の中を歩き回り、ようやくデュエルスペースにたどりついた。

「なんか病人みてーだったけど大丈夫なのかよ?」

「検査してただけだよ、問題ないとはいわれてるし」

「ぜってーあるだろ問題」

明らかにあの白衣の男は素良がデュエルすることに対していい顔をしていなかった。

「デュエルはいつでも受けてやるからさ。休むときはしっかり休めよ、紫雲院。デュエリストは体が資本だろ」

「ありがと。でもほんとに大丈夫だからなあ。城前って意外と心配性なんだね」

「いやいやいや、お前がどんな状況で行方不明になったか考えてみろよ。沢渡たちも、遊矢も、すっげえ心配してたぞ」

「ふうん、案外みんな気にしてるんだ。意外だなあ」

「まさかの塩対応に驚きを隠せないんだけど、おれ」

「いやだって、ほんとに大丈夫だし」

「そんなにいうならいいけどよ」

「ほんと城前ってお人好しだよね。一応聞くけどさ、ボクがこないだやったこと、忘れてる訳じゃないよね?」

「覚えてるに決まってんだろ」

「だよね。だから遊矢たちより先に僕たちのこと探してたわけだし」

ほんとは結界の内部が見たいからカメラを探していたとは言い出しにくい雰囲気である。素良はデュエルディスクのボタンをいじる。

「イヴがね、城前にプレゼントがあるんだってさ」

「イヴ?」

「そ、イヴ。ここの主でね、すっごい綺麗な女の人なんだよ。城前好きそうだと思う。脱いだらすごそうだし」

「このへんが?」

「このへんもね」

「よくわかってんじゃねーか」

「城前のそういうとこわかりやすくて好きだよ、ボク」

「そのイヴってやつが紫雲院のほんとの上司って訳か」

「そゆこと」

「プレゼントねえ、いやな予感しかしねえ」

デュエルフィールドが展開される。世界は光に包まれた。

素良たちは雑踏のただ中に居た。

駅前から駐車場にかけて、すでに長蛇の列ができている。早朝だというのに、想定内だという顔をして熱中症対策を講じた人々はその列に加わり、時間が経つにつれてその列はふくれあがっていた。あまりの集客に入場が1時間早まるというアナウンスが聞こえてくる。

「うわあ、すごい人。なんだろこれ」

きょろきょろ物珍しそうにあたりを見渡す素良と引き替えに、城前はその周囲に広がる光景にただただ沈黙していた。言葉が見つからない。驚きばかりが先走り、その先にいけない。ひたすら口が渇いていることにようやく気づいた城前は、ようやく口を閉じた。どーしたのさ、と不思議そうに聞いてくる素良に軽口を叩ける余裕はなかった。あまりにも突然だったからだ。

デュエルフィールドはあくまでも演出のようで、城前たちがその列に並ぶまでもなく、その列の横で整備しているスタッフがどうぞと先を促してくる。そのままホールに通されるのかと思いきや、すぐ脇にある会場で待機している人々が見える。整理券が配られており、すでに5桁を超えている。様々なイベントが予定されている大規模な大会のポスターが張り巡らされ、素良はずっと顔を上げているのがつかれてきたと笑った。

「城前とデュエルした世界大会予選みたいな雰囲気だね。来場者の数、桁違いだけど」

「・・・・・素良」

「んー?どうしたのさ、城前。そんな怖い顔して」

「これ、イヴのプレゼントだっていたよな」

「うん、そうらしいよ。ボクよく知らないんだ。ここのフィールド使ったらきっと楽しいっていわれただけだしね。でも確かに楽しそう。こんなにたくさんの人の前でデュエルするなんてボク初めてだなあ。ガラにもなくどきどきしてきちゃった」

「そーかよ。詳細を聞くにはイヴに聞くしかねえってか」

「お、興味わいた?ま、それが狙いだと思うよ」

「いい趣味してやがる」

城前はこわばったままだ。そして城前達が通されたのはどこかの待機室だった。そして、城前たちは予選大会のときのようにネームプレートを渡され、デュエルディスクを渡され、それぞれがそれぞれの入り口をくぐった。

素良はみたことがない会場に目移りしている。すさまじい数の観客に埋め尽くされた会場は、この間の予選大会なんてかわいいレベルの規模である。ワンキル館だってここまで大きなイベントを行える収容スペースはない。架空世界のフィールドをつかったって無理だ。そんな規模なのにリアルタイムで進行するのは、スタンディングデュエルでも、アクションデュエルでも、ライディングデュエルでもなく、まさかのテーブルデュエル。にも関わらずネットを通じて全世界に配信されている。ほかの参加者はNPCのようで城前たちが入ってくると自動的にデュエルは終了した。参加者は少ない。外国人も日本人もいる。どうやら総当たりのようで、城前達は決勝という設定らしく、巨大スクリーンには二人が表示されている。一気に観客のざわめきが大きくなった。

すっごいなあ、と素良は息を呑む。

テーブルデュエルのギミックは用意されているが、所詮はフィールドにすぎない。決勝だけはスタンディングデュエルであるという設定なのだろう。城前達がデュエルディスクを持っていることに対して、誰もなにもいわない。さも当然という顔をしている。


「もしかして、ここ、城前の世界のデュエル大会の会場だったりする?」

「なんでそう思う?」

「どんなにちゃっちい大会でもさ、テーブルデュエルはないよ、テーブルデュエルは」

「そりゃそうか。まー、おれの世界にデュエルディスクはねーからな。もしかしなくてもそうだよ。それも代表を選出するなんてレベルじゃねえ。世界大会の、だ」

「え、それほんと?イヴもすごいこと考えるね」

「どっから入手したんだよ、そんな情報。おれのデュエルディスクのデータにはそこまで載ってねえぞ。どこまで俺の頭の中のぞいたら、徹夜組すれすれの時間に並んでなんとか観戦することが叶った国内の世界大会の状況なんてここまで完全再現できるんだよ。ふざけてんのか」

「さすがにそれはイヴに聞いてくれる?城前。ボクはさすがにわかんないし」

「そーかい」

「うん、そう。でもそっか。混沌使いの城前でさえ、観客の一人にすぎないんだね、城前の世界だと」

「まあな。世界大会には上位150位以上にならねえと、そもそも参加資格がねえからな」

「ハードル高い!」

「だからこそ、あこがれの舞台だった」

「なるほど、イヴのプレゼントってそういう」

「夢の舞台を完全再現とか悪趣味だな、紫雲院の上司は」

「うーん、否定できない。でもさ、せっかくの世界大会なんだし、ふさわしいデュエルをしたいよね」

「まあ、な。こんな場所でデュエルしろってんなら応じてやるよ。ここに立つ以上、生半可な気持ちでデュエルできるわけねーからな」


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