スケール13 デュエリストトーナメント5
初めてのドラゴン召喚。そして城前のフィールドにあった強そうなドラゴンをどけられたことで一安心である。閃光竜の効果と裁きの竜でコンボを決められたら、一方的にフィールドが焼け野原にされてしまうところだった。それにくらべたらずっとましである。それにまだ少年は巨神竜の召喚するまでのコンボがすっごく楽しかったため、そっちの楽しさが続いていた。


「おーけい。おれのターン、ドロー!」

「えっと、今がスタンバイフェイズなんだっけ?」

「おう、そうだぜ」

「じゃあ、ボクは罠カード《覇者の一喝》を発動するよ!このターン、城前兄ちゃんのバトルフェイズはなしね!」

「げっ、めっちゃいいカードひいてるじゃねーか、ナオ。仕方ねえなあ。おれは《ライトロード・セイント ミネルバ》の効果を発動!デッキからカードを3枚墓地に送るぜ。墓地にライトロードが4体そろってるから、《裁きの竜》を特殊召喚!ライフを1000ポイント払って効果を発動!」

「えっ、《巨神竜の遺跡》の効果は?」

「あー、セイントミネルバは発動する前に特殊召喚したからセーフ。《裁きの竜》はちょっと難しいんだけど効果がいっぱい発動したら、どれから先に発動するか困るだろ?だから順番が決まってるんだ。この場合、《巨神竜の遺跡》の前に《裁きの竜》の効果が発動するんだ。だから、《裁きの竜》の効果でぜんぶ破壊されてから《巨神竜の遺跡》の効果の順番がくるだろ。《巨神竜の遺跡》はドラゴンがいねえと発動できねえからから無理だな」

「わかったような、わからないような?」

「《巨神竜の遺跡》は癖の強いカードだしなあ。便利なんだけど。難しかったらもっとわかりやすいカードに変えようぜ。余ってるカードあげるよ」

「ありがとう、城前兄ちゃん。でもせっかく買ったカードだし、がんばってつかってみる」

「そっか。ならがんばれよ、ナオ」

「うん!」

「それじゃあ、《裁きの竜》の効果を発動するぜ」

「このままじゃ罠カード破壊されちゃうから発動するよ!《リビングデッドの呼び声》!・・・・・ねえ、城前兄ちゃん。この場合って、《青氷の白夜竜》の効果って使える?」

「あー、これも難しいんだよな。《青氷の白夜竜》ってさ、ホースで水をあげてるとしたら途中で蛇口をとめることなんだ。とめる前にホースにいった水は戻せない。《リビングデッドの呼び声》はホースに行った水だから特殊召喚はできるんだ。でもさ、蛇口の回すところがぶっこわれたらどうなる?水、止めれる?」

「ううん、無理」

「《裁きの竜》の効果ってそれと一緒なんだ」

「そっかあ。それじゃあ、《巨神竜フェルグラント》は?」

「《巨神竜フェルグラント》はな、蛇口をひねってホースから水を出すまでが効果なんだ。はじめはできてても、途中で蛇口の回すところがぶっこわれたらどうなる?」

「あ、ホースから水がでてこなくなるね」

「そういうことな。デュエルモンスターズって、できるか、できないか、しかないんだ。この場合は途中で邪魔されちゃうからできないな」

「そっかあ、難しいね。それじゃあ、《アークブレイブドラゴン》は?」

「それは大丈夫。ナオのスタンバイフェイズに効果が発動できるぜ」

「なら、《アークブレイブドラゴン》を特殊召喚するよ!」


少年の宣言と同時に、フィールドからまばゆい光がこぼれ落ち、それが次第に大きくなる。そこから大きな白の翼を広げた黄色い鎧をもつドラゴンが出現した。しかし、白亜のドラゴンの雄叫びにより世界は震撼し、すべては吹き飛ばされてしまう。もちろん、召喚されたばかりのドラゴンもだ。少年を守るように消え失せたドラゴンは、次のスタンバイフェイズに別のドラゴン族を呼び出す効果を持っている。


「おっと、次のターンにつなげてきたか。やるじゃん。よし、これで《巨神竜の遺跡》は墓地に行ったから効果はなくなったな。おれは《ライトロード・サモナー ルミナス》を召喚するぜ」


城前のフィールドに、褐色で白の法衣を纏った少年が現れる。


「そしてカードを1枚すてて、モンスター効果を発動」


少年の足下から真っ白な円形の光が形成され、空に向かって光の玉が無数に舞い上がる。少年は両手を広げて空を見上げ目を閉じる。鈴を転がしたような声が響きわたる。


「墓地から《ライトロード・アサシン ライデン》を召喚」


その無数の光は空間を裂き、大きな亀裂が光を呼ぶ。そこから褐色の青年が現れた。不穏な武器を携え、少年の傍らに着地する。


「レベル4《ライトロード・アサシン ライデン》に《サイトロード・サモナー ルミナス》をチューニング!光の精鋭を束ねし大天使よ、今ここに降臨しその威光を示せ!シンクロ召喚!こい、レベル8!《ライトロード・アーク ミカエル》!」


2体の霊力が還元され、本来の魔力の持ち主に返っていく。大天使が降臨するに足る魔力が一時的に空間を満たし、強烈な閃光が橋を包んだ。あまりのまばゆさに目を閉じた少年が目を開けると、黄金色の機械的な翼を携え、黄金色の武装に身を包んだ大天使がそこにいた。斧にも似た形状の剣を易々と振り回し、大天使は立ちふさがる。守備表示のため目前にその剣を突き刺し、次のターンに備えた。


「きたあ!」

「バトルできねえから、おれはこれでターンエンドだ。さーて《ライトロード・アーク ミカエル》のモンスター効果を発動。デッキからカードを3枚墓地に送るぜ。おっと、《ライトロード・ビースト ウォルフ》が落ちたからフィールドに守備表示で特殊召喚」

「ボクのターン、ドロー!いっくよー!ボクは《アークブレイブドラゴン》のモンスター効果を発動!墓地から《巨神竜フェルグラント》を特殊召喚!モンスター効果を発動するよ!ぼくが除外するのはね、城前兄ちゃんの《裁きの竜》と墓地の《妖精伝姫シラユキ》!《裁きの竜》はレベル8、《妖精伝姫シラユキ》はレベル4だから、1200ポイント攻撃力があがって4000だよ!城前兄ちゃん」

「きっついぜ」

「やった。じゃあ、ボクは手札の《フェルグラントドラゴン》を墓地に送って、《巨神竜の遺跡》を戻すよ。そして、《巨竜の守護騎士》を召喚!モンスター効果で墓地から《青氷の白夜竜》を装備!さっきもどした《巨神竜の遺跡》を発動して、《青氷の白夜竜》を墓地に送ることで《巨竜のトークン》を作って、《巨竜の守護騎士》と一緒にリリース!《青氷の白夜竜》を特殊召喚するよ!」

「絶好調だな、ナオ。デッキに愛されてる」

「ほんと?やった。じゃあ、バトルしよ、城前兄ちゃん!《青氷の白夜竜》と《巨神竜フェルグラント》で攻撃!」


「くっそ。じゃあ、おれは《ライトロード・アーク ミカエル》のモンスター効果を発動!墓地からライトロードモンスターを5枚デッキに戻して、ライフを1500回復する!ルミナスも破壊されちまうけど、なんとかセーフだな」

「うう、なかなか攻められない。ボクはカードを伏せてターンエンドだよ」

「おれのターン、ドロー!おれは《光の援軍》の効果を発動!デッキからカードを3枚墓地に送り、デッキからレベル4以下のライトロードを手札に加える。おっと、《ライトロード・アーチャー フェリス》がおちたから特殊召喚だ!おれが加えるのは《ライトロード・モンク エイリン》!墓地のカードを7枚除外し、手札から《妖精伝姫シラユキ》を特殊召喚!モンスター効果で《巨神竜フェルグラント》を裏側守備表示に変更だ。そして手札から《ライトロード・モンク エイリン》を召喚。レベル4《ライトロード・アーチャー フェリス》に《妖精伝姫シラユキ》をチューニング!電子の力をまといし戦士よ!電光石火の速さでその正義を貫け!シンクロ召喚!こい、レベル8!《SPYフレームロード・Ω》!さあ、バトルだ、ナオ!まずは《ライトロード・モンク・エイリン》のモンスター効果を発動するぜ!バトルを行ったとき、裏側守備表示のモンスターはナオの手札に戻る!さあいくぜ、ナオ!おれはシラユキでダイレクトアタック!」

少年は笑った。

「まだだよ、城前兄ちゃん!ボクは《王魂調和》を発動するね!」

「お、おうこっ・・・・!?ちょ、ちょっと待ってくれよ、ナオ!おまえ、そんなカードデッキに入れてたか!?シンクロモンスターもチューナーもまだ入ってないだろ!?」

「え?あ、あれ?さっきカードが散らばったとき、カード集めてくれたの城前兄ちゃんだよね?こっそり入れてくれたんじゃないの?」

「してない、してない!だっておれ、今日はこのデッキしか持ってきてねえって!」

「えっ、じゃあ、これは・・・?」

《王魂調和》は直接攻撃を無効にし、レベルの合計が8以下になるように、チューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ任意の数だけ除外してエクストラデッキからそのレベル分のモンスターをシンクロ召喚する罠カードである。少年の手には、デュエルディスクから除外するため墓地から吐き出された《ガード・オブ・フレムベル》と《巨大竜の守護騎士》が握られている。城前は目を丸くするほかない。少年が買ったストラクにも、体験会でもらったスターターパックにも、記念品のカードにも《ガード・オブ・フレムベル》はもちろん、レベル5のシンクロモンスターもなかったはずである。しかし、すでに罠は発動してしまった。効果を処理しなければデュエルが進まない。動揺している少年に城前は心配そうにみつめる。


「どうする?中断するか?」

「うう、でもいいところなのに」

「入れてないカードがあるのはあきらかに変だぜ。やっぱさっきの雷でなんかあったんじゃねーかな」

「そうかなあ?」

「おれはやめた方がいいと思う。ナオになんかあったら大変だ」

「でもボクまだデュエルやめたくないよ」

「うーん、でもなにがあるかわかったもんじゃねーぜ」


城前の気持ちもわかるが中断したくないと少年の心は揺れている。身に覚えのないカードたちは怖くてたまらないが、テキストをみる限りとても強そうなカードなのはわかる。どうしよう、どうしよう、と迷っているうちにデュエルディスクが点灯した。フィールドがシンクロ召喚の体制にはいる。

「え!?え!?待って、待って、ボクなにもしてなっ!?怖いよ、城前兄ちゃん、たすけ、」

「ナオ!?」


消え入りそうな声はかききえ、駆け寄ろうとした城前を特殊召喚のモーションが邪魔をする。明らかに城前が行っているシンクロ召喚とは異なるエフェクトだ。すさまじい電撃が走り、火花が散っている。さきほどの謎の現象によく似たものだ。やばい、やばい、もしかして訳ありのカードだったのか?!城前は少年を呼ぶが返事はない。代わりに聞こえてきたのは少年とよく似た声だった。

「ボクはレベル1《ガード・オブ・フレムベル》にレベル5《巨大竜の守護騎士》をチューニング!きて!レベル5!《転生竜サンサーラ》!」


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