「デュエルするったってよ、遊矢。どのデッキとやりたいんだ?」
城前はデッキケースをいじりながら聞いてくる。遊矢と初めてデュエルした時に使っていた、ライトレイとカオスの要素が混じったライトロードデッキ。沢渡とのデュエルで使ったカオスドラゴン。これもランク6軸と8軸があり、青眼軸と赤眼軸と細かく分けるなら結構オーダーに答えることができると笑う。黒咲とのデュエルで使ったランク4軸のデッキは、先日の制限改訂直前のままだからまだ調整が終わっていないからなし。ユートもユーリもユーゴも寝ているのか、遊矢と城前のデュエルに口出ししてくる人間がいないため、思いっきりデュエルを楽しむことができる。この状況がうれしくてたまらないのか、そーだなー、といいながら遊矢は城前を見上げた。
「最初のデュエルが中断したとき、結構オレのデッキわかったんじゃない、城前?」
「まあな」
「沢渡の時みたいに対策とか考えた?」
「当たり前だろ、あんだけフリーチェーンのオンパレードだとは思わなかったんだよ」
「へへっ、ならさ、なんとなくオレと戦うためのデッキとかあるんだろ?ほんとに対策になってるか調べてみる?」
「お、わざわざテストプレイにつきあってくれんのか?助かるぜ。それならサイチェンありにしようぜ。おればっか有利になっちまうしな」
「うん、うん、いいね。そうしよう。何連戦できるかな」
「さー?でも展開早いし、15分くらいで終わるんじゃねーか?お互い時間食うような構築してねえし」
「アクションデュエルじゃないし、そんなもんかな。よーし、それじゃ、おもいっきりデュエルしよう。次いつになるかわかんないし」
「バイキングにきたみたいなノリでいうなよ、お前な」
城前は苦笑いした。
「城前、あれやろうよ、あれ!」
「あれ?」
「モンスターは宙を舞いってやつ」
「でもあれってアクションデュエルの前口上だぜ、遊矢。今やってんのはスタンダードデュエルだ」
「いいだろ、そんな細かいこと!初めてデュエルしたときだって、スタンダードデュエルだったのに城前普通にいってたじゃないか!」
「ま、まあそうだけどよ。なんだよ、ずいぶん乗り気だな」
「だって楽しそうだったからさー!一度でいいからいってみたかったんだよね。どうせなら城前と一緒にさ」
「ふーん?そういうことならかまわねえぜ」
城前は笑った。
「うろ覚えだろ、遊矢」
「そりゃそうだろ、一回しか聞いてないんだから」
「おれと沢渡のデュエルみといてよくいうぜ」
「それでも2回だろ」
「はいはい、そういうことにしといてやるよ。じゃあ、よーく聞けよ、遊矢。おれのあとに続いてくれ」
「へへっ、そうこなくちゃ。やっぱ導入した張本人から伝授されるのが一番だもんな、りょーかい!」
「(単なるイベントの悪のりのつもりだったとはいえない)」
「どうしたんだよ、城前?」
「いんやなんでもねえ。それじゃいくぜ」
「おう!」
アスレチックサーカスの歓声がひときわ大きくなる。
「戦いの殿堂に集いし決闘者達が」
「戦いの殿堂に集いし決闘者達が」
「モンスターとともに地を蹴り宙を舞いフィールドを駆けめぐる」
「モンスターとともに・・・ってあれ、城前、こないだと口上違わない?」
「あんときはスタンダードデュエルだったからアレンジ加えてたんだよ。これが本元だ」
「あ、そうなんだ?じゃあ気を取り直してっと。モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い、フィールドを駆けめぐる!」
「みよ、これぞ、デュエルの最強進化系!アクションデュエル!」
「みよ、これぞ、デュエルの最強進化系!アクションデュエル!」
「ざっとこんなもんよ。まあ、アレンジ加えること多いから、そのまんま言うことは少ないんだけどな」
「ふーん、そうなんだ。おぼえとこっと。それにしてもおもしろいよね、この口上。これも城前のオリジナル?」
「いんや、これも前いたとこじゃおなじみだったんだ」
「前、ねえ。どこなんだか。孤児院じゃないってことだけは確かだよね」
「あっはっは、いってろ。それじゃ始めるとするか」
「うん。よーし、覚えた。城前とアクションデュエルするときは、絶対言うから!のってよ、城前」
「もっちろん」
城前はどこかうれしそうに笑った。そして城前と遊矢の待望のデュエルは始まったのである。
「おれはカードを7枚除外し、《妖精伝姫シラユキ》を特殊召喚。除外された《エクリプスワイバーン》の効果で除外されている《ダーク・アームド・ドラゴン》を手札に加え、特殊召喚。墓地の闇属性のカードを1枚除外し、遊矢の《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を破壊するぜ!」
「なら、オレは《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》のペンデュラム効果を発動!《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚して、さっきエクストラデッキに行った《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》をペンデュラムゾーンにセット!」
「おーっと、またフィールドに戻されちゃたまんねえからな、また破壊させてもらうぜ。闇属性カードを1枚除外し、もう1度破壊だ!」
「まだまだ!《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》のペンデュラム効果を発動!こいつは1ターンに1度、自分フィールドの表側表示のオッドアイズペンデュラムモンスターが破壊されたとき、自分のペンデュラムゾーンのカードを破壊してエクストラデッキからオッドアイズペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに設置できる!《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》を破壊し、エクストラデッキから《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》をサーチ!そしてあいてるペンデュラムゾーンにセットする」
「さらに1枚除外して《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を破壊だ」
「またあっ!?くっそー、それなら罠発動《ペンデュラム・リボーン》!自分のエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスター、または自分の墓地のペンデュラムモンスター1体を選んで特殊召喚するよ!《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》!」
「いい加減休ませてやれよ」
「城前がなにがなんでも除去しようとするからだろ!?」
「こうでもしなきゃ遊矢のフィールドはがら空きにならねえからな!フリーチェーンの効果が多すぎるんだよ、ふざけやがって。ようやく伏せカードを1枚使ってくれたし、あと1枚だな。さあ、お楽しみはこれからだ!」
にやりと笑った城前に、遊矢は身構える。
「おれは魔法カード《左腕の代償》を発動!このカードを発動するターン、自分は魔法・罠カードをセットできない。このカード以外の自分の手札が2枚以上の場合、その手札をすべて除外して効果を発動だ。デッキから魔法カード1枚を手札に加えるぜ。おれは加えるのは《強欲で貪欲な壷》!こいつは1ターンに1度しか効果を発動できないが、自分のデッキの上から10枚を裏側表示で除外して効果を発動できる。おれはデッキからカードを2枚ドロー」
さっきから城前の除外カードがものすごい勢いでたまっていく。遊矢はいやな予感しかしない。城前はディスクを操作して、除外されているカードを確認する。除外されることで効果を発動するカードがまだあるのだろうか。
「そして墓地にあるカード6枚、そして手札の《ライトロード・ビーストウォルフ》1枚を除外して、《妖精伝姫シラユキ》を特殊召喚。二体でオーバーレイネットワークを構築!現れろ、ランク4!《虚空海竜リヴァイエール》!こいつはエクシーズ素材を1枚取り除き、除外されている自分または相手のレベル4以下のモンスター1体をフィールドに特殊召喚することができる。おれが特殊召喚するのはこいつだ!《紅蓮魔獣ダ・イーザ》!」
リヴァイエールの力により、空間が避けて時空の彼方から魔獣が降臨する。頭部にある二対の角、縦に並ぶ突起、手首から腕へ伸びる歪なパーツ、すべてがまがまがしい赤色の悪魔のような風貌のモンスターである。脚がない独特の形状、翼が歪に曲がり城前の前に降臨した《ダ・イーザ》は圧倒的な巨体だった。
「《紅蓮魔獣ダ・イーザ》は除外されているカード×400ポイントアップする!おれが除外したカードは29枚。よって《紅蓮魔獣ダ・イーザ》の攻撃力は11600ポイントとなる!さあ、バトルだ、遊矢!《ダーク・アームド・ドラゴン》《紅蓮魔獣ダ・イーザ》《虚空海竜リヴァイエール》で攻撃だ!」
遊矢の伏せていたカードは《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》の攻撃力を上昇させる罠カードだったが、《紅蓮魔獣ダ・イーザ》を上回ることはできず、そのまま敗北を喫したのだった。
「あーもう!次は負けないからな、城前!」
「いいかげん勝利譲ろうぜ、遊矢。すでに2勝してんだからよ」
「やだね!2勝じゃ黒咲と同じだからつまんない」
「だっからあれは赤馬社長の嫌がらせでエクシーズ召喚ができなくなってたんだ。ノーカンだっておととい説明しただろ!」
「でも黒咲は2勝だっていってるんだろ」
「あいつが勝手にいってるだけだっての」
「城前、再戦したいんだろ?」
「ったりめえだろ」
「なら今やっとかないとすぐ対戦成績越しちゃうじゃないか」
「お前、なにと戦ってんだよ、さっきから」
ひみつ、と遊矢はいたずらっ子のように笑い、次なる対戦を急かしたのだった。
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