スケール9-5 ハローアンダーワールド3
「ふふっ、いいでしょう。そこまでこの僕にケンカを売るというなら、全力で叩き潰してやるよ、城前克己。そして僕らについて持っている情報をすべてはいてもらうことにしましょうか!」

ユーリはターンを宣言した。ドローしたカードを掲げる。

「ここにくるまで、ワンキル館での決闘のルールを少々勉強をさせてもらいましたのでね、存分に活用させてもらうとしましょうか。アクションデュエルじゃないのは残念ですが、それもまた一興です」

「へえ、やってみろよ」

「僕はフィールド魔法《ブラック・ガーデン》を発動します!これによりデュエル・フィールドはモンスターを養分に花を咲かせる魔界の花園となる!」

げ、と城前はそのカードの名前を聞いたとたん、あからさまに顔をゆがめた。その複雑な効果故に使用者に多大な負担をかけるものの、使いこなすことができれば一流の決闘者ともいえるカードなのだ。めんどくせえカード発動しやがって、という声が聞こえてきそうである。


ユーリと城前の間に出現した石像を中心に、世界は花園とはほど遠い、薄暗くまるで今にも雨が降りだしそうな曇天の世界となる。長年の風雨にさらされ、首と羽の折れた天使像の台座は文字が削られて読めない。その天使を捕らえるように茨が走り、黒い薔薇が咲き誇っている。重厚な花弁はどこから栄養を蓄えているのか、幾重にも重なり大輪は咲き誇っている。長年放置された木々もすべて黒薔薇の養分となり、今は支柱の役割しか果たしていない。生い茂り、鬱蒼とした森となっている黒薔薇の背後。ろくに世話もされず延び放題なはずの下草はなく、人目を引くのは、黒い薔薇と複雑に絡み合う蔦だ。荒れ放題の庭園を占拠する無数の薔薇が荒涼とした花園をひとつに結い上げている。圧倒的な黒がそこにある。


「僕は手札から《イービル・ソーン》を攻撃表示で召喚」


ユーリのフィールドに緑色の蔦からピンクの花、そしてトゲが無数に生えた手榴弾が垂れ下がる植物が出現する。それに黒薔薇が反応し、城前のフィールドにはよく似た形状の薔薇が出現した。

「そしてこのカードをリリース!モンスター効果を発動します。まずは城前、君に300ポイントのダメージを与えます」

弾け飛んだ手榴弾の衝撃が城前を襲った。

「《イービル・ソーン》のモンスター効果を発動、自分のデッキから《イービル・ソーン》2体まで表側攻撃表示で特殊召喚することができます。この方法で出現した2体はモンスター効果が使えませんが、まあいいでしょう」

城前のフィールドに、さらに2体の黒薔薇がおかれる。

「それではいくとしましょう。手札から魔法カード《フレグランス・ストーム》を発動!城前のフィールド上に存在する《ローズ・トークン》1体を破壊し、自分のデッキからカードを2枚ドローします」

ユーリは笑う。

「僕がひいたカードは《魔天使ローズ・ソーサラー》。《フレグランス・ストーム》の効果により、さらに1枚ドロー」

城前の眼差しが食い入るように真剣なことに違和感を覚えながら、ユーリは続ける。

「僕の名前を知っているくせに、ずいぶんと興味津々ですね、城前」

「は?なにいってんだ」

「ずいぶんと白々しい反応だ。僕がユーリかユーゴかと聞いておきながら、はっきりと僕を名前で呼んだくせによくもまあ。その理由もこのあとゆっくり聞くとして、僕は魔法カード《置換融合》を発動!このカードは自分フィールド上に存在する融合素材のモンスターを墓地に送り、融合モンスターをエクストラデッキから融合召喚する事ができます。僕は《イービル・ソーン》2体を融合!」

《イービル・ソーン》が混じり合い、歪な揺らめきが毒々しい眼を拓く。

「魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな驚異を生み出せ!融合召喚!現れろ、飢えた牙持つ毒龍!レベル8!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

ふたたび城前のフィールドには《ローズ・トークン》がおかれる。

「1400、か。でもそれじゃ、おれのモンスターにはとどかないぜ?それとも《ローズ・トークン》を攻撃すんのか?いや、遊矢もユートもエースには強力な効果があったな」

「心配するな、城前克己。今の僕は気が立っています。生半可な攻撃ですませると思わないことだ。《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果を発動!このカードは融合召喚に成功したとき、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を選び、その攻撃力分だけこのカードの攻撃力をターン終了時までアップします。よって《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》の攻撃力3000を吸収!スターヴの攻撃力は2900となる!」

「おいおい、おれの覇王黒竜は攻撃力3000だぜ?《ブラックガーデン》の効果はすでにエクシーズ召喚してるおれのモンスターには効かないんだ。やっぱとどかねえじゃねーか」

「誰がバトルをすると言いました?僕は墓地の《イービル・ソーン》を除外し、手札から装備カード《黒薔薇の刻印》を発動します!このカードを装備したモンスターのコントロールを僕は得ることができる!」

「とんでもねえ効果だな、おい。じゃあ、ご退場願おうか。おれは手札から《幽鬼うさぎ》を墓地にすて、効果を発動!スターヴを破壊だ!」

「なんですって!?」

「その様子だと対抗手段はねえみたいだな!おれはツインツイスターをチェーンして発動、さあ、薔薇の刻印も墓地に行ってもらおうか」

「なるほど、ですが僕もただでは終わりませんよ!僕はスターヴのモンスター効果を発動します!城前のフィールドにある特殊召喚されたモンスターをすべて破壊します!これで返り討ちだ!」

「なっ!?」

「おや、意外ですね。僕が誰だか知ってるのに、僕のエースまでは把握しきれていないようだ。案外ワンキル館も大したことありませんね。これでペンデュラムによる蘇生は無効だ、墓地にいってもらいましょう」

「おーっと、それは覇王黒竜の効果を発動させてからいってもらおうか」

「!?」

「モンスターゾーンのこいつが破壊されたときに発動できる効果があるんだよ、これが。ペンデュラムゾーンの《相克の魔術師》と《相生の魔術師》を破壊し、こいつはスケール4のペンデュラムモンスターとなる。ライト・ペンデュラムゾーンにセッティングだ」

「墓地行きは回避、というわけですか。でもそれではペンデュラムできなくなりますよ?」

「いってくれるじゃねーか。偉そうな口叩いてるくせにお互いフィールドはがら空きなんだぜ?どうすんだよ」


「そんなもの、いくらでも状況は打開できることを教えてあげましょう。ですが、それには少々時間をいただきますがね。僕は墓地にある《置換融合》を除外し、墓地にあるスターヴをエクストラデッキに戻し、カードを1枚ドロー。カードを伏せ、ターンエンドです」

「おれのターン、ドロー!おれは《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》のペンデュラム効果を発動、デッキから《竜穴の魔術師》をセッティングするぜ。そして《竜穴の魔術師》のペンデュラム効果を発動!手札のペンデュラムモンスターを破壊する!」

「くっ」

「さらに《死者蘇生》を発動!よみがえれ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!そして、こいつのレベルを3つさげて墓地にある《貴竜の魔術師》の効果を発動だ!フィールドに特殊召喚する!」

「レベルを?」

「こいつはペンデュラム・チューナーだ。とくれば、やることはひとつだろ?おれはレベル3《貴竜の魔術師》にレベル4《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をチューニング!こい!レベル7!《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!」

「そうはさせません!罠発動、《ポリノシス》!《ローズ・トークン》をリリースして効果を発動します!さあ、墓地に行ってもらいましょうか!」

「くっそ、仕方ねえな。じゃあ、次の手をうつだけだ!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!こい、おれのモンスターたち!そしておれは《賤竜の魔術師》のモンスター効果を発動!デッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を回収!そして、手札から魔法カード《オッドアイズ・フュージョン》を発動!自分のフィールドと手札から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《相生の魔術士》を墓地に送り、融合召喚!こい、レベル8!《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!さらにおれはレベル7《竜穴の魔術師》と《賤竜の魔術師》でオーバーレイ!さあこい、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!さあ、バトルだ、ユーリ!こいつはレベル4だからルーンアイズは2回攻撃することができる!」

「いいでしょう」

攻撃力を半減され1500しかないためか、《ローズトークン》の800を越えた、700ポイントのダメージを2回。続いて、オッドアイズ・アブソリュートが攻撃するが、絡み付いていく茨に力を吸収され、700とふるわない。蓄積したダメージは2100となるが城前のモンスターたちは元気がなさそうだ。それと引き替えに、黒薔薇の庭園はますます大輪を咲かせていく。

「おれはカードを1枚ふせて、ターンエンドだ」

「それでは攻撃に転じるとしましょうか。僕のターン、ドロー!僕は《捕食植物フライ・ヘル》を召喚します。そして城前のルーンアイズに捕食カウンターをおきます」

「捕食カウンター?」

「このカウンターが乗っているモンスターのレベルは1となります」

「シンクロとエクシーズ封じか、やっかいな効果だぜ」

「もちろん、覇王黒竜を呼ばれないためでもありますが、それだけだとは思わないでもらいたいですね。僕は魔法カード《融合》を発動!《ローズ・トークン》と《魔天使ローズ・ソーサラー》で融合召喚!こい、《捕食植物キメラフレシア》!僕が召喚する度に増えていく君のフィールドの《ローズ・トークン》により、僕のフィールドのモンスターはまだ少ないです。よってこのカードを特殊召喚します。こい、《ヴェルズ・マンドラゴ》!さあ、バトルです、城前!まずはフライ・ヘルでルーンアイズを攻撃!」

「なにをする気だ!?」

「この瞬間、フライ・ヘルの効果を発動します!このモンスターは自分のレベル以下のモンスターを破壊することができる!ルーンアイズはフライ・ヘルの効果でレベルが1となっている!よって破壊!」

「ぐっ」

「まだまだいきますよ!キメラフレシアでアブソリュートに攻撃!この瞬間、キメラフレシアの効果を発動!アブソリュートのもともとの攻撃力を吸収します!これによって攻撃力はこちらが上回りましたね。攻撃です!」

「おっと、そうはいかねーぜ。おれはエクシーズ素材を1枚取り除き、アブソリュートの効果を発動!その効果を無効にし、墓地から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を特殊召喚する!」

「なるほど、次の布陣を整えてきましたか。でも次のターンは回ってきませんよ、城前」

「なんだって?!」

「僕は《瞬間融合》を発動します!《キメラフレシア》と《ヴェルズ・マンドラゴ》で融合召喚!もう一度フィールドに舞い戻れ、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!スターヴの攻撃力はアブソリュートの攻撃力分上昇します。よって2800!そしてペンデュラム・ドラゴンの名称をコピーし、このターンのみ、このカードは同じ効果を得ます!さあ、とどめといきましょう、城前!僕はスターヴで《ローズ・トークン》を攻撃します!」


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