vsハルムベルテ@
《ファイアウォール・ドラゴン》と《星杯神楽イヴ》という強固な布陣を前にしてもハルムベルテは物怖じする様子はない。堂々とターンの開始を宣言した。


「アタシのターン、ドロー!《マスマティシャン》を攻撃表示で通常召喚!モンスター効果を発動するわ!このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキからレベル4以下のモンスター1体を墓地へ送る!アタシが選択したのは《ダンディライオン》!」


植物族を中心に相性がいいカードを入れているようだ。《トロイメア 》はメイン1枚、他が全てリンクモンスター という驚異のテーマである。どうあがいてもメインは別テーマやカードコンセプトで埋めなければならないのだ。センスが問われる極めて難しいテーマである。


「墓地に送られた《ダンディライオン》のモンスター効果を発動!自分フィールドに植物族、風属性、レベル1、攻撃力・守備力ともに0の《綿毛トークン》2体を守備表示で特殊召喚!このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできないわ」


もちろん、リンク召喚を前にそのデメリットは意味をなさない。


「開きなさい、灰色の法典で導く電子回路よ!アローヘッド確認!召喚条件は植物モンスター2体!アタシは《綿毛トークン》2体をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク2 《アロマセラフィ−ジャスミン》!!」


ハルムベルテの前に紫の花を見にまとう美しいモンスターが現れた。


「1ターンに1度このカードのリンク先の自分のモンスター1体をリリースして発動できる。デッキから植物族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する!アタシは《マスマティシャン》をリリースし、《捕食植物オフリス・スコーピオ》をリクルート」


ここから怒涛のリンク召喚が始まった。


「《水晶機巧−ハリファイバー》をリンク召喚!このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。手札・デッキからレベル3以下のチューナー1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン効果を発動できない。アタシはこの効果で
《幻獣機オライオン》を特殊召喚!」


和波は眼を見張る。ゴーストのときのデュエルではなかったカードだ。


「アタシは《水晶機巧−ハリファイバー》と《幻獣機オライオン》で《サモン・ソーサレス》をリンク召喚!そして墓地に行った《幻獣機オライオン》のモンスター効果を発動!このカードが墓地へ送られた場合、機械族、風属性、レベル3、攻撃力・守備力共に0の《幻獣機トークン》1体を特殊召喚できる!守備表示で特殊召喚するわ!」


ハルムベルテの《トロイメア 》をちゃんと回したという発言はどうやら本当のようだ。


「アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体!アタシは《幻獣機トークン》と残りのモンスター1体でリンク2《プロキシー・ドラゴン》リンク召喚!ここで《サモン・ソーサレス》のモンスター効果を発動よ!このカードのリンク先の表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターと同じ種族のモンスター1体をデッキから選び、このカードのリンク先となる自分・相手フィールドに守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される!アタシは対象として《プロキシー・ドラゴン》を宣言!サイバース族の《夢幻崩界イヴリース》をリクルートするわ!攻撃表示で特殊召喚!」


闇落ちした《妖精神楽イヴ》が和波の前に現れた。


「アローヘッド確認!召喚条件はカード名が異なるモンスター2体以上!アタシはリンク3《サモン・ソーサレス》と《夢幻崩界イヴリース》をリンクマーカーにセット!リンク召喚!リンク4《トロイメア・グリフォン》!《プロキシー・ドラゴン》の隣に特殊召喚!!」

「えっ」

「驚いた?」

「よっぽどリボルバーに気に入られてるんだね」

「だと嬉しいんだけどね。アタシはこのカードがリンク召喚に成功した場合、手札を1枚捨て、自分の墓地の魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを自分フィールドにセットする。そのカードはこのターン発動できない。この効果の発動時にこのカードが相互リンク状態だった場合、さらに自分はデッキから1枚ドローできる。だから1枚ドローよ!」


このカードがモンスターゾーンに存在する限り、フィールドの特殊召喚されたモンスターはリンク状態でなければ効果を発動できない。どうやらこいつが《トロイメア 》のエースのようだ。


「さすがですね、ハルムベルテさん」

「でしょ?ゴーストにはまだ《トロイメア》をちゃんと把握してないのにデュエル挑んじゃったからぼこぼこにされちゃって反省したの。成果でてる?なかなかいい布陣だと思うんだけど」

「はい、けっこうやっかいな盤面だと思います。僕がplaymakerとカードバンクを共有だって把握してるってことは、ハルムベルテ、あなたはグレイ・コードですよね?」

「どうしてそう思うの?」

「だって、僕が《ファイアウォール・ドラゴン》を使っても驚かないし、僕がフェッチ事件の被害者だって知ってる。僕がいつも《代行天使》を使ってるのに《星杯》デッキを使っても驚かない。それが当然だって顔してデュエルしてる。ぜんぶぜんぶわかってる。ハノイの騎士はそこまで僕のこと把握してないですよ。幹部の人たちならロスト事件の当事者あるいは当時を知る人たちばかりだからわかってるとは思いますけど。ハルムベルテ、あなたはどこをどう見てもグレイ・コードです。でもあなたは若すぎる。《トロイメア》なんて特別なテーマもらえたのに下っ端ってことはないですよね?いったい何が目的なんですか?幹部にしては若すぎるけど」

「ま、アタシが幹部になれたのはお父さんの影響が大きいと思うけどね」

「お父さん?」

「それはあなたが一番よく知ってるんじゃないの?アタシは皮と骨だけになって生命維持装置につながれてるお父さんしか知らないわ」

「……キミはまさか!」

「そう、そのまさかよ。あなたがイグニスと一緒にグレイ・コードから脱出するときに植物状態にした研究員の一人だったの」

「そ、そう、なんですか」

「そうよ?嘘ついても仕方ないじゃない。アタシがグレイ・コードの幹部みたいなコードネームなのもお父さんを引き継いだからよ」

「まさかキミは同じ道を?」

「全くの偶然だったけどね、血は争えないってことかしら。リボルバー様が声をかけてくださったの!」

高揚感に満たされたように彼女は笑う。天真爛漫の笑顔に和波は凍り付くのがわかった。

『だから俺様のせいにしとけって言ったんだよ、誠也。いつかこんな日が来ると思ってたんだぜ』

「……何が目的なんですか?」

「話が早くて助かるわ、和波誠也。アタシが望むことはただ一つ。あなたが持ってるはずのお父さんのアバター、魂のデータ、すべてをもってアタシとデュエルしてほしいの」

「え、返してほしいじゃなくてですか?」

「どうして?あなたが報復として電脳死や植物状態を強いているのは当然だと思うわ。アタシだってそう思うもの。それだけのことをアタシのお父さんはしでかしたし、表沙汰にならないだけでアタシは犯罪者の娘なのよ。謝罪したって足りないくらいよ」

「そう、ですか」

「でもね、一度だけでもいいからお父さんとデュエルしたいと思うのはいけないこと?」

「……ごめんなさい、あなたのお父さんの魂のデータはあるけど復元する技術は……」

「しってるわ。ゲノム様から聞いたから」

「Dr.ゲノムから?!」

「ええ、当然でしょ。アタシをグレイ・コードに、ハノイの騎士に引き込んでくれたのはDr.・ゲノムなんだから」

「……つまり、あなたは部下の一人ってことですか。お礼参りのつもりです?」

「ああ、フランキスカとかスクラマサクスのこと?ごめんね、アタシほんと新人だから幹部たちのことあんまり知らないのよ」

「知らないのにグレイ・コードに入ったんですか?!」

「知ってるに決まってるでしょ。直々にリボルバー様が教えてくださったわ、馬鹿にしないでちょうだい」

「あ、ごめんなさい」

「わかってくれたらいいのよ。アタシはね、何度も言うけど公私混同はしない主義なの。ここからはほんとに個人的なお願いよ。アタシはね、ものごころついた頃から植物状態のお父さんしか知らないの。昔のお父さんはすんごく強かったってリボルバー様からもゲノム様からも聞かされてるわ。だからお願い、アタシとデュエルして」

「僕にあなたのお父さんを再現しろっていいたいんですか?」

「ええ」

「いやですよ、そんなの」

「そう?」

「はい」

「なら、ゴーストは?ゴーストが使ってる偽垢たちは、あなたが電脳死や植物状態に追いやった研究者たちのアバターを使ってるって話よね。きっとあなたと出所は同じよね。データは減らない、なくならない、それが利点だもの。魂だってデータ化すれば複製できちゃうんだから」

「ゴーストならきっとするでしょうね」

「奇遇ね、我ながらいい思いつきだと思うわ。ありがとう、和波誠也。ついでだから連絡とってくっれたりとかは……」

「無茶言わないでくださいよ、僕生体情報やアバター情報とられただけで、いつもいつも一方的に連絡よこしてくるんですよ」

「あら、そうなの?わかった、それならアタシからまた連絡入れてみるわね」

「ええ、そうしてください」

「そう怖い顔しないでよ、和波誠也。アタシ、あなたといいお友達になれそうな気がしてるのよ?」

「悪い冗談はよしてくださいよ、僕は絶対にいやです」

「そう?残念。アタシの連絡先はここだから。気が向いたら連絡ちょうだいね」

ハルムベルテは笑ってフレンド申請してくる。和波は拒否しようとしたがHALが止めてきた。

「HAL」

『せっかくの情報通が現れたんだ。もらえるもんはもらっとこうぜ。邪魔になったら新しいコレクションに入れちまえばいいんだよ』

「そうだけど」

『まーまー、俺様に任せとけって。な?』

「……わかったよ」


和波はしぶしぶフレンド申請を承認した。茶番はここまでだ。せめてデュエルで勝たなければ。


「僕のターン、ドロー!僕は永続魔法《ブリリアント・フュージョン》を発動します!このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できません。このカードの発動時に、自分のデッキから《ジェムナイト》融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を、攻撃力・守備力を0にしてEXデッキから融合召喚します」


和波のデュエルディスクから紫色のカードが現れた。


「僕は《ジェムナイト ・ラズリー》と《星杯妖精リース》を墓地に送り《ジェムナイト ・セラフィ》を守備表示で特殊召喚!《ジェムナイト・ラズリー》のモンスター効果を発動!このカードが効果で墓地へ送られた場合、自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加えます!」


美しい鉱物の女神が微笑む。光が現れ、デュエルディスクからカードが1枚和波のところに舞い込んだ。


「僕は《星杯妖精リース》のモンスター効果を発動!このカードが墓地に存在する場合、自分の手札・フィールドのモンスター1体を墓地へ送って、墓地のこのカードを手札に加えます。僕は手札から《星杯を戴く巫女》を墓地に捨てて、《星杯妖精リース》を手札に加えます。そして攻撃表示で通常召喚!第2の効果を発動!このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから《星杯》モンスター1体を手札に加える。《星遺物−『星杯』》 をサーチ!《ジェムナイト ・セラフィ》の効果でもう一度通常召喚することができます!《星杯妖精リース》をリリース!《星遺物−『星杯』》 をアドバンス召喚!」


黒いオーラをまとう聖杯が空中に浮遊する。そして溢れた黒がリンクマーカーを出現させた。


「きて!未来に導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件は種族と属性が異なるモンスター2体!僕は《ジェムナイト ・セラフィ》と《星遺物−『星杯』》 をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク2《星杯神楽イヴ》!」


可憐な少女は祭器を振り上げ、墓地に送ったモンスターの効果を呼び起こす。


「《星遺物−『星杯』》 の第2の効果により通常召喚した表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動できます。デッキから《星遺物−『星杯』》以外の《星杯》モンスター2体を特殊召喚!きて、《星杯を誘う者》と《星杯妖精リース》!」


再び和波の前にリンクマーカーが出現した。


「アローヘッド確認!召喚条件は《星杯》モンスター2体!僕は《星杯妖精リース》と《星杯神楽イヴ》をリンクマーカーにセット!リンク召喚!リンク2《星杯剣士アウラム》!このカードはリンク先の自分の《星杯》モンスター1体をリリースし、
そのモンスター以外の自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できます!そのモンスターをこのカードのリンク先となるフィールドに《星杯の守護竜》を特殊召喚!」


そして和波はまたリンク召喚の準備にかかる。


「さあいきますよ!《創造の代行者ヴィーナス》を通常召喚!モンスター効果を発動!ライフポイントを1500支払い、《神聖な球体》を特殊召喚!」


和波は《プロキシー・ドラゴン》や《星杯竜イムドゥーク》をリンク召喚し、《ゼンマイネズミ》や《発条空母ゼンマイティ》を絡めつつ、無限ドローを繰りかえしていく。


そして並ぶ《ファイアウォール・ドラゴン》と《デコード・トーカー》、《星杯神楽イヴ》。


「さあ、一斉攻撃です!」


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