vsハルムベルテ
「……なるほど、事情はわかった。で、誠也はいきたいんだね?」

「うん。いく。いかせてお姉ちゃん」

和波の表情は揺るぎない。こうなってはてこでも動かないことを知っている姉は深い深いため息をついた。

「ゴーストがデュエルログを送ってきたんだ。この子が僕とデュエルをしたがってるよって」

和波はデュエルディスクを姉のノートパソコンに接続し、再生する。

「これは……」

思わず彼女は眉を寄せた。

ハルムベルテはまちがいなく、ハノイの騎士としては新人である。ゴーストが和波であると知らないで接触をしてきた時点で、普通なら無視してもいい対象だが、いくつかがそれを許さない。与えられたハンドルネームは古代武器の名前である。それに彼女が使いこなしていないところからみて、どうみても支給されたと思われるデッキ《トロイメア》。どうみても和波の《星杯》のバックグラウンドと関係がありそうなテーマ、カテゴリだった。ゴーストとハルムベルテの会話ログも一緒にデータに入っていたが、どう見ても和波と同じくらいの少女である。

「もしかしたら、だまされてるんじゃないかと思って」

「ゴーストと誠也にデュエルをねえ。いったい何が目的なんだ?」

「それを確かめに行くんだよ」

「ま、それもそうだね。アナザー事件以後、下っ端どもがドンパチやらかしてるだけで、幹部連中はおろかリーダーすら顔を見せず、完全に行き詰まりをみせてる。そんな矢先にあれだ。はい、インカム」

「ありがとう」

「一応聞くけど、誠也がいく?」

「うん、僕いくよ。ハルムベルテは僕とデュエルしたいっていってるし。動画見る限り悪い人じゃなさそうだし、なにか教えてくれそうな気がする」

「どう見ても地雷なのに?」

「どのみちゴーストのリストから僕のアカウントとか、生体情報とか、ばれちゃってるもん。僕から行かないとだめだよ、きっとね」

「それもそうか」

はあ、とため息をついた彼女は和波を見る。

「何度も言うけど、絶対に私の指示には従ってもらうからね、誠也」

「わかってるよ、お姉ちゃん」

「さっきからだんまり決めこんでるキミもだよ、HAL」

「え?俺様もかよ?きょうだいみずいらずの邪魔しちゃだめだとおもって気を利かせてやったっつーのになんつう言いぐさだ」

「ひどい八つ当たりだ」

姉は苦笑いした。






それはひょうたん型をした本島と、その周りにちらばる小島から構成されている島々だった。緑の自然と青のグラデーションが美しい海に囲まれた島々は人々を魅了してまない。和波がログインしたのは、水上コテージの宿泊施設だった。


「すごい、なにこれ!」


和波は思わず駆け出す。全面ガラス張りの水上コテージの部屋は、中から青いグラデーションの海を見渡すことができる。寝ても覚めても海を見ることができ、コテージのテラスからすぐに海に入ることができるようだ。島の周りには透き通るブルーラグーンが広がっており、その景色はユーザーの心を魅了する。海の綺麗さはさることながら、緑の自然の美しさも感じることができるのが、この島である。二階の反対側からは島の中心に空に向かって尖った形をした山が島全体を見渡すように聳え立っており、その姿はとても凛々しく感じられた。山とブルーラグーンが織りなす美しい景観を見ることができる。



果てしなく続く青い空、そして海。この世のものとは思えない美しい景色が和波の視界いっぱいに広がっていた。施設のほとんどが水上にあるリゾートを再現したエリアだ。水上に浮かぶコテージたち。滞在中のほとんどを海の上で過ごせるのが最大の魅力であり、自然に寄り添うエココンシャスなリゾートながら、高級感漂う造りが非日常の世界へと導いてくれる?2階のプライベートデッキから眺める景色は格別で、これを目にしたユーザーは海の向こうの南の島に行きたくてたまらなくなるという。実際にここで体感できるエリアを設置したところリピーターが増えたらしいから、VRの威力はすさまじいものがあるのだ。


「待ってたわ、和波誠也」

「きみがハルムベルテ?」

「ええ、そうよ。初めまして、アタシはハルムベルテ。ハノイの騎士ではあるけれど、強いデュエリストと戦うのが好きなの。ゴースト、ちゃんと約束守ってくれたのね、よかった」

「え、も、もしかしてそれだけ?」

「ええ、そうよ。アタシはデュエルをしに来たの。ハノイの騎士ではあるけれど、ひとりのデュエリストであることには変わらないもの。なにか問題でもある?」

「問題……問題はない、です?うーん、あまりにも想像と違いすぎて、え、あ、うーん??あ、でも今、僕聞きたいことがあるんです。このデュエルが終わったらいいですか?」

「あら、奇遇ね。アタシもあなたに聞きたいことがあるのよ、和波誠也。デュエルに応じてくれるなら、考えてあげるわ」

「わかりました。よろしくお願いします」

「ええ」


ふたりは大海原を背にデュエルを開始した。



「僕のターン!僕は《レスキューラビット》を攻撃表示で召喚!モンスター効果を発動します!同名のレベル4通常モンスター2体を特殊召喚!きて、《星杯を戴く巫女》!」


和波の前に可憐な少女があらわれる。


「アローヘッド確認!召喚条件は《星杯》通常モンスター一体!僕は《星杯を戴く巫女》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク1《星杯竜イムデューク》!」


可愛らしい龍が鳴き声をあげた。


「《星杯竜イムデューク》のモンスター効果で通常召喚を行います!僕は《星杯竜イムデューク》をリリース!《星遺物-『星杯』》をアドバンス召喚!」


禍々しいオーラを放つ遺物が南国の海に浮遊する。


「さらに再びアローヘッド確認!召喚条件は《星杯》モンスター2体!僕は《星杯を戴く巫女》と《星遺物-『星杯』》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク2《星杯剣士アウラム》!」


星杯の力を得た少年は剣をふりあげた。


「ここで墓地に送られた《星遺物-『星杯』》のモンスター効果を発動!デッキから《星杯の守護竜》と《星杯の妖精リース》を特殊召喚!」


星杯に抱かれて、青い精霊が現れた。星杯は音もなく消えてしまう。


「墓地に送られた《星杯竜イムデューク》のモンスター効果を発動します!手札から《星杯に誘われし者》を特殊召喚!さらに召喚に成功したこの瞬間、《星杯の妖精リース》のモンスター効果により、デッキから《星杯に選ばれし者》をサーチ!ここで《星杯剣士アウラム》のモンスター効果を発動します!《星杯の守護竜》をリリースして、墓地の《星杯竜イムデューク》を特殊召喚!墓地にいった《星杯の守護竜》のモンスター効果で、墓地の《星杯を戴く巫女》を特殊召喚します!さあ、いきますよ!アローヘッド確認!召喚条件は種族属性が異なるモンスター2体!僕は《星杯竜イムデューク》と《星杯の妖精リース》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク2《星杯神楽イヴ》!」


星杯の力を得た少女が先祖から受け継いだ祭器をかざす。


「墓地に送られた《星杯竜イムデューク》のモンスター効果を発動します!手札の《星杯に選ばれし者》を特殊召喚!アローヘッド確認!召喚条件はリンクモンスター 2体!《星杯剣士アウラム》と《星杯竜イムデューク》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク3《星杯戦士ニンギルス》!」


星杯の力を得た青年は獲物を手にハルムベルテをみる。


「モンスター効果を発動します!相互リンクの数だけドロー!アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体以上!僕はリンク3《星杯戦士ニンギルス》と《星杯に誘われし者》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク4!起動せよ、《ファイアウォール・ドラゴン》!」




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