記憶喪失@
「どうやら運命の女神はオレに微笑んだようだな!先攻で行かせてもらうぜ!オレのターン、まずは《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》のモンスター効果を発動だ!」


青年が召喚したのは、Xマークが胸に刻まれた真っ黒な猟犬である。両手に地獄の業火を滾らせ、真っ黒なドラゴンの翼が広げられる。そして真っ赤でどう猛な目をらんらんと輝かせ、狼男のように二足歩行で立ち上がった悪魔は牙をむき出しにして、高らかに咆吼した。


「自分フィールドに魔法・罠カードが存在しないとき、このカードを手札から特殊召喚することができる!守備表示で特殊召喚だ!そして、《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》を通常召喚!」


今度は真っ青な豚の獣人である。囚人だったのだろうか、両手に架せられた手錠や鎖など者ともせず、岩石のような図体と防具を振り回しながら、地面を振るわせた。


「開け、エンピレオに続くサーキットよ!」


青年の宣言したリンク召喚のエフェクトは、まるで地獄の扉を思わせるまがまがしい真っ黒な扉だった。その向こう側にはマグマが滾るこの世の終わりが見えた。


「アローヘッド確認、召喚条件はレベル3モンスター2体!オレは《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》と《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン、リンク召喚!リンク2《彼岸の黒天使ケルビーニ》!」


それは天使というにはあまりにも禍々しい姿だった。にんげん、ライオン、鷲、牛という4つの顔と4つの翼を持ち、全身一面に目を持つ異形の天使は、まさに黒の天使というにふさわしい。緑柱石のように輝く4つの車輪をかたどった魔方陣からは、武器が出現した。


「《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》のモンスター効果を発動だ!このカードが墓地に送られたとき同名以外のデッキから《彼岸》モンスターを特殊召喚することができる!オレは《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》を守備表示で特殊召喚!」


再び降臨した悪しき鬼は罪人を求めてフィールドを見渡し、力を鼓舞するように武器を振り上げた。


「ここで《彼岸の黒天使ケルビーニ》のモンスター効果を発動だ!デッキからレベル3モンスター1体を墓地に送り、フィールドの《彼岸》モンスターの攻撃力・守備力を墓地に送ったモンスターのステータス分アップする!オレは《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》を墓地に送り、《彼岸の黒天使ケルビーニ》の攻撃力・守備力をそれぞれ1000,1500アップ!そして《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》のモンスター効果で同名以外の《彼岸》モンスター1体をデッキから特殊召喚する!こい、《彼岸の悪鬼スカラマリオン》!守備表示で特殊召喚!」


乱雑で汚い髪の毛を降りかざしながら、仮面をかぶった男は長い長い爪を鋭利にとがらせ、上空を滑空する。


「オレはレベル3《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》とレベル3《彼岸の悪鬼スカラマリオン》でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!ランク3《彼岸の旅人ダンテ》!守備表示で特殊召喚だ!」


月桂樹をつけた赤い装束の旅人が青年の前に降り立つ。


「そしてエクシーズユニットを1枚取り除き、デッキトップからカードを3枚墓地に送る!そして、墓地に送った枚数×500ポイント攻撃力をアップさせる!エンドフェイズ、墓地に送った《彼岸の悪鬼スカラマリオン》の効果でデッキから同名カード以外の悪魔族・闇属性・レベル3モンスター1体を手札に加える!これでオレのターンは終了だぜ。次はアンタの番だぜ、ハノイの騎士」


ほら、こいよ、と挑発気味に笑う青年に相手はドローを宣言し、展開を始める。《彼岸の旅人ダンテ》を効果で破壊した。


「墓地に送った《彼岸の旅人ダンテ》のモンスター効果を発動だ!墓地から同名以外の《彼岸》モンスター1体を手札に加える!さらに《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》のモンスター効果を発動!墓地から《彼岸》と名のついたモンスター1体を特殊召喚することができる!こい、《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》!《彼岸の悪鬼ラビキャント》!それぞれ守備表示で特殊召喚だ!」


相手はせっかく特殊召喚した《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》や《彼岸の旅人ダンテ》を奪い取り、装備モンスターをしてしまう。だが攻撃力を強化している《彼岸の黒天使ケルビーニ》の攻撃力を超えることができず、そのままターンは終了、《彼岸の旅人ダンテ》が墓地に行った。


「ここで《彼岸の旅人ダンテ》の効果により、オレは墓地からこのカード以外の《彼岸》カード1枚を手札に加えることができる。ここでオレを仕留めることができなかったこと、後悔させてやるよ!」


高らかに宣言した青年は笑うのだ。もうお前にターンを渡す気はないと。


「それじゃあいくぞ、オレのターン、ドロー!オレは《彼岸の悪鬼ファーファレル》を守備表示で特殊召喚!オレはレベル3《彼岸の悪鬼ラビキャント》にレベル3《彼岸の悪鬼ファーファレル》をチューニング!シンクロ召喚、こいレベル6《彼岸の詩人ウェルギリウス》!!」


大きな帽子、吟遊詩人のような風体の男は、不思議な音色を奏でながら青年の指示を待つ。


「ここで墓地に送られた《彼岸の悪鬼ファーファレル》のモンスター効果を発動だ!アンタのモンスターを除外させてもらう!さらに手札から《彼岸》カードを1枚捨て、相手のフィールドか墓地のカードのカードを1枚をデッキに戻してもらおうか!これでフィールドはがら空き!ここで墓地に行った《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》のモンスター効果を発動!墓地から同名以外の《彼岸》モンスター1体を特殊召喚する!よみがえれ、《彼岸の旅人ダンテ》!守備表示で特殊召喚!」


攻撃表示ではないことにハノイの騎士が疑問を呈するよりも先に、青年は答えを提示する。


「オレは《彼岸の旅人ダンテ》でランクアップエクシーズチェンジ!デッキから《彼岸》カードを1枚捨て、ランク6《永遠の淑女ベアトリーチェ》を攻撃表示でエクシーズ召喚!!


突如世界は光に包まれた。すべてが真っ白に包まれた美しい女性が出現する。彼女は純白のドレスを翻し、祈りを捧げるように目を閉じる。


「エクシーズユニットを1枚取り除き、デッキからカードを1枚墓地に送る!オレは《彼岸の悪鬼ファーファレル》と《彼岸の旅人ダンテ》を除外し、手札から《カオスソルジャーー開闢の使者ー》を攻撃表示で特殊召喚!」


かつて、あまりにも強力な効果故に禁止カードとなった過去があり、決闘王が愛用したことでも知られる超絶レアカードが降臨する。青年はダイレクトアタックを宣言した。豪快に吹っ飛ばされるハノイの騎士。カメラが回っていることに気づいた青年は満面の笑顔となる。サービスショットのつもりのようだ。


「これでまずは一戦目!さあ、かかってこいよ、ハノイの騎士。オレはいつでも相手になってやるぜ


ウインクを決めた後、青年は吹っ飛ばされたまま倒れているハノイの騎士のところに近づいた。


「よお、ハノイの騎士。オレを見るなりデュエルを挑んできた理由はなんだ?オレは最新デュエルディスクを使ってるし、playmakerに似たアバターってわけでもないんだぜ?しかもここはplaymaker狩りがはやってるエリアでもねえ。だってのに、初めてログインしていきなり挑んでくるとはどういう見解だ?」


矢継ぎ早に聞いてくる青年にハノイの騎士は驚愕のまなざしを向けるのだ。まるで幽霊をみたような扱いである。


「なんで、なんで生きている、お前は、あのときっ」

「は?」

「《彼岸》に《開闢の使者》……間違いない、お前は、っあのとき、なぜここに」

「んなの知るかよ、こっちが聞きてえわ」


青年は頬をかいた。どうにも話がかみ合わない。


「訳わかんねえこといってねえで、ちゃんと話せ。アンタはオレのこと知ってんのか?」


胸ぐらをつかみ、聞いてみる。ゲホゲホ咳き込みながら、ようやくハノイの騎士は落ち着きを取り戻したのか、話をしてくれる気になったようで、口を開いた。


「あ」


それは一瞬だった。目の前で、さっきまで問い詰めていたはずのアバターがいない。それはログアウト、もしくはハノイの騎士の報復、粛正だった。


「……まじかよ」


はあ、とため息をついた青年は、騒ぎを聞きつけて集まってきた人だかりに笑顔を向ける。


「さあ、次の相手は誰だ?誰であろうと相手になってやるぜ」


すると、一番前にいたロボットみたいなアバターから話しかけられた。


「すげー、《彼岸》とか《カオスソルジャーー開闢の使者ー》なんて超絶レアカード扱ってる人初めて見た!!なあ、見かけない顔だけど、名前は?」

「オレか?オレは……」






青年にとって最初の記憶は知らない部屋だった。昨日何をしていたか思い出せない。誘拐されたんだろうか、それとも寝ぼけているだけ?青年はとりあえず周囲を物色することにした。

厚手のカーテンの向こう側は真っ暗で何も見えない。場所の特定をあきらめた青年はとりあえず電気を探す。大きなスイッチを2つ押すとオレンジ色の優しい蛍光灯がついた。向かい合わせのいすが2つ、中央には背丈の低い机が一つ。後ろには大きな鏡があり、手洗い場とポット、湯飲みがおいてある。下には収納スペースがあり、トイレットペーパーなどが入っていた。ここはカーペットが敷いてある。そして隣は畳だ。何畳分だろうか。


赤い座布団と黒い背丈の低い木の長い机が置いてある。ポットの横には小物入れがあり、いくつかの湯飲みと急須、茶葉が入っている丸い缶がお行儀よくならんでいる。缶を開けてみるとすでに茶葉がティーバッグの中に入っている。ポットにはお湯がはいっており、二人分の和菓子がお盆にちょこんとおいてある。そして、この部屋の鍵、ルームナンバーがふられている、どうやらマンションか旅館のような宿泊施設のようだ。玄関の横にトイレがあり、金庫がある。引き戸をあけると一人暮らしにしてはやけに広いリビング。押し入れには二人分の布団。クローゼットには二人分の着るものがおいてある。壁掛けの大きなテレビがあり、空気清浄機と暖房が唯一の音源だった。この部屋、時計がない。部屋から出て、玄関に戻る。

やけにひろい玄関だと思ったら、どうやらトイレと脱衣所、浴室につながっているようだ。やはり一人部屋にしては広すぎる。戻ってくると電車の音が聞こえた。


あらかた物色してみたが、なんというか旅館施設といった方がよさそうな、生活感のないもののない部屋だった。なんだか落ち着かない。そして、青年は困ったことに自分のことを知るための情報がなにひとつないことに気づいてしまった。どうしたもんかと頬をかく。とりあえず、ここから出てみよう。


そう思い立ち、青年は鍵を片手に外に出た。どうやらここは相当金のある人の家らしい。おはようございます、と頭を下げられてしまう。落ち着かなくてうろうろした限り、青年は客室にいたようだ。にしては荷物がない。ざっとうろついても何も言われず、お散歩ですか、とほほえまれるあたり記憶を失う前の青年はよくあたりをうろついていたようだ。中庭が建物の中央に見えるよう設計されている時点で大豪邸である。そもそも普通の家にエレベータがあるのを青年は初めて見た。


「おはよう、もう起きたのかい、はやいね」


青年に声をかけてきたのは知らない男だった。


「えっと…あなたは」

「ああ、そういえば名乗っていなかったね。私は鐘井、鐘井祐次郎、キミの叔父に当たるんだ」

「叔父……さん……?」


きょとんとしている青年に叔父と名乗った男はうなずいた。


「話がしたい、来てくれるかな?」

「はあ」


訳のわからないままついて行くと、祐次郎の書斎に通された。


「これを見てくれないか」

「これ、は?」

「これはキミの診断書だ」

「診断書」

「そう、診断書。キミはアナザーに感染し、昏睡状態にあったんだ。スピードデュエルを強要されて高いところから滑落、その衝撃でフィードバックし脳が記憶障害を起こしてしまったらしい。おかげで身元がわからず、なかなか迎えにこれなくてすまなかったね。もう大丈夫だ」

「……」


青年は診断書に目を通す。そこには彼の履歴書のような個人情報も事細かに載っていた。鐘井祐樹、27歳、会社員。SOLテクノロジー社の重役だった両親を交通事故で失い、今は傘下の病院で医者をしている叔父のところに引き取られる。大学まで卒業し、会社に就職していたようだがアナザーに感染したせいで記憶障害に陥り、退職して今は無職の身の上のようだった。どうやら会社に勤めると同時に一人暮らしを始めたが、アナザーに感染して入院したことをきっかけに叔父の家に戻ってきた、ということらしい。


「今にキミには何一つ実感がわかないかもしれないんだが、独身の私にとっては唯一の家族なんだ。我が家だと思って好きに使ってくれ」

「は、はあ……えっと、」

「以前までは父さんだったね」


悲しげな顔をする叔父に罪悪感がこみあげてきて、祐樹はあわてて父さんと言い直す。ちょっとうれしそうな顔をされてほっとした。

「じゃあ、父さん?えっと、オレ、仕事どうしたら」

「ああ、それなら心配いらないよ。一番後ろに資料があると思うんだが、会社の方から系列の会社に斡旋してくれるそうだ。今よりも勤務条件がだいぶ緩い分、給料は下がるが福利厚生はしっかりしている。もし記憶が戻ってやっていけそうなら戻ってきてほしいそうだ」

「そう、なんだ」

「ああ、そうなんだ。それだけキミはちゃんとやってきていたし、これからもちゃんとやってけるとみんな信じている。だからそう焦らなくてもいい。そこに書いてあるように、契約は来年の4月からだ。それまでゆっくりしているといい」

「わ、わかった」

「会社から資料を見せてもらったが、毎日残業続きでなかなかハードな仕事だったようじゃないか。やりがいもあったかもしれないが、最後の親心として勝手に話を進めてしまった。すまないね」

「や、いやいや、そんなこと。あはは」


祐樹は不快感のような黒いものがこみ上げてくるのを感じていた。祐樹自身覚えてはいないが、叔父を見たとき感じたいやな感じはきっとここからなのだと悟る。叔父がどこまでも善意で祐樹のことを考えて行動してくれているのはわかるものの、過保護すぎる気がしてならない。あるいは支配下に置かれているような、妙な緊張感、不快感があるのだ。きっと両親を失って叔父のところに引き取られてから、愛情を一身に受けて育ってきた経緯があるのだろう、と他人事のように考える。息苦しさの原因はこの人か、とぼんやり祐樹は考えた。きっと前の祐樹は逃げたかったのだ、ここから。もしかしたら今の祐樹は叔父に対応するために作られた人格なのかもしれないとすら思う。まあ、それはそれ、これはこれだ。

今の祐樹はそこまで感情的になれるほど、叔父に対して興味を持ってはいなかった。


「そろそろご飯の時間だ、行こうか」

「はーい、わかった」

「そうそう、今日の午後にでも祐樹の荷物が届くはずだ。何人か手伝いによこすから、部屋に運びなさい。好きに使っていいからね」

「はーい」


叔父は静かに笑った。


「どしたんだよ、父さん」

「いや、今の祐樹は子供っぽいと思ってな」

「へ?」

「前はもっと口が悪くて、遅めの反抗期だったのか、ろくにくちも聞いてくれなかったんだ」

「そ、そうなんだ、へえ」

「そうそう、思い出した。部屋に金庫があるだろう?家にいたときは通帳とか大事なものはすべてあそこに入れていたからね、番号は自分で設定しなさい。鍵はこれだ」


渡されたのはいくつも鍵がついているキーケースだった。革張りの高そうなデザインだ。イニシャルが彫ってある。新しいのは、きっと叔父がわざわざ今日のために作らせたんだろうなとわかる。いちいち重いなあと思いつつ、祐樹はありがとうと受け取った。叔父は奥にある金庫を開けると、通帳などが入ったバッグを渡してくれた。


「……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、」


通帳がいくつもあるのは、趣味のための通帳と貯金と生活費の通帳を分けていたかららしい。それにしたって多すぎやしないかと祐樹は思わずゼロを数えてしまう。ざっとページを確認していくと、一番新しい日付にとんでもない金額が振り込まれているのがわかる。ひとつじゃない、全部の通帳である。少々寒気がした。


「父さん、これ」

「ああ、かまわないだろう?転職するんだ、なにかと入り用だろう。以前から何かにつけて祐樹には断られてしまっていたからな、仕送りはいらない、独立したんだから、とな。でも子供はいくつになってもかわいいものさ、そうだろ?」

「あ、あはは、ありがとう」

「お礼はいらないさ、家族なんだから」


冷や汗が止まらないのは、きっと前の祐樹の記憶がぼんやり残っているからだろうな、と祐樹は思うのだ。いこうか、と促され、祐樹は叔父に続く。思い出話を聞かされる道中で、叔父の期待と愛情を一身に背負って生きてきた祐樹は、よくもわるくも駆け落ちをした両親の一般家庭の価値観を失うことがなかったが故の苦労があったんだなと思ったのである。

叔父に案内された先で身支度を調え、朝食を終え、宅配業者から荷物を引き取った祐樹は、ようやく運び終わった荷物をお手伝いさんと一緒に片付けていた。すると叔父が声をかけてきた。


「祐樹」

「へ?」

「デュエルモンスターズは好きか?」

「デュエルモンスターズって、これ?」


祐樹がデュエルモンスターズにはまっていたことを示す段ボール箱の数々だった。デュエルディスクを見つけて装着してみたところだったので、そのまま祐樹はディスクを見せる。


「そう、それだ。前の祐樹はほんとうに好きだった。今の祐樹はどうだい?」

「オレは……」


自然に笑顔になる祐樹を見て、叔父はうれしそうに笑った。


「好きなんだな」

「たぶん?まだわかんねーけど、早くやりてーなあって」

「それを好きというんだよ、祐樹。落ち着いたら、リンクヴレインズにログインしてみたらどうだい?愛用していたデッキのデータは幸い復元できたからな、気分転換にやってみたらいい。ログインポットはすぐ隣の部屋にあるからな」

「わかった、ありがとう父さん」

「ああ、喜んでくれてよかった。それじゃあ、片付けるとしようか」

「おう!」


そして祐樹はかつての自分が最後にログインしたエリアにいるのだ。



しばらくアカウント名は悩んだ。デッキデータは現物をスキャン、アバターは課金データを復旧してもらえたから再現可能だが、実質初期アバターなのである。だから祐樹は答えた。前の自分を知ってる人がいたらいいなと期待も込めて。


「オレは#クローネ #、よろしくな」







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