●コードオブザデュエリスト6
「さあ、はじめましょう!」

「いい返事だ、挑戦者!先攻は譲ってやるよ」

「ありがとうございます!」


ワナビーはいつになく荒れているサイバースの風にのる。目まぐるしく変わる電子の光がうねりとなり、目前でひときわ激しく輝いた。HALはイベント用にプログラムされたものにしてはおかしいとぼやく。明らかにサイバースの風の中にいる精霊たちが騒いでいる気配がするらしい。


(そりゃそうだ、今までオレ様たちやサイバース族しかいなかったのに、いきなり知らない種族のやつらが溢れてきたんだからなあ!そりゃびっくりするぜ。ただのプログラムがいきなりそいつを媒介に現実世界からログインしてきたんだ。そりゃお祭り騒ぎだ!)

(へえ、そうなんだ!すごいね!)

(誠也もやりてえか?)

(うーん、まだ様子見かなあ。僕たちが知ってる精霊プログラムと一緒かわかんないし)

(ま、そうだな)

(でも島君や藤木君の見てると問題なさそうな気もするけどねえ)

(わかんねえぞ、精霊世界とリンクヴレインズをつなぐなんてとんでもねえことしたんだ。サイバースだって友好的なやつばかりじゃねえってのに精霊世界だろ?なんにしろなにかが起こるのは秒読みだ)

(そうかなあ)


楽観的なワナビーである。HALは呆れ顔だ。デュエルモンスターズの精霊が見えるだけで意思疎通は怪しく、実際に精霊世界にいったことなどないワナビーの認識はあいまいなものである。

HALは一応忠告するのだ。サイバースの風がひときわ不安定なのは精霊世界からくるデータの流れが原因のようだ。いたるところに強烈な白い波のような、リボルバーがスキルを発動したときのような、巨大な風のぶつかり合いが通り過ぎていく。まるで生きているかのように風の塊が揺れ動く。無数の棘のような光が舞い上がった。障害物に当たって舞い上がった白の光を風が散らす。波は濃い青に波立った。


サイバースの風は青い牙をむいていた。どうやらHALのいうとおりサイバースの精霊たちが警戒するなにかが入り込んでいるようだ。外の世界から入り込んできた異分子たちに、飢えている獅子のように、いどみかかっているらしい。


見るからに冷たそうな、濁った風の光が吠えたけり、青緑の波が砕けていく。ワナビーたちに気づいて離れてくれるあたり、まだ意思疎通は可能な異分子のようだ。



広いリンクヴレインズの空をうねる風。細かく、せわしなく、オーロラのような光が流れていく。時々夜の闇やみのような風が見えた。風の波が牙をむく。それを遮る青い光。時々割れた硝子屑ガラスくずのように鋭い風の波にDボードをとられそうになる。波は波を呑み、捲き、煽あおり立て、のた打ち荒れ狂う。押し寄せ渦巻き引きずる流れをうまく捌きながら先に進んだ。


サイバースの風の中はただ狂い暴あれる波ばかりだ。縦横に吹きまく風が、思いのままにワナビーの体をひっぱたくので、つるし上げられるような浮遊感が襲いかかる。なんとか体重をかけて耐えていると、前から後ろに遠ざかっていくエリアごとのオブジェクトたちが和らげていく。かわりにその脅威に耐え切れなかったいくつかは破壊されて0と1の光の粒子となって消えていった。たちまち真っ白な光の山になって、サイバースの風に、あるいは精霊の風に食いちぎられ、ちぎられ、すさまじい勢いで目あてもなく倒れていく。


やがてひらけた場所にでかた。


どう吹こうとためらっていたような疾風がやがてしっかり方向を定めると、突き抜けるような突風となりワナビーたちを押してくる。これまでただあてもなく立ち騒いでいたらしく見える風の波は、だんだんとうねりに変わって行った。


波の山は、いきなり、獲物に襲いかかる猛獣のように思いきり背延びをした。と思うと、吹きつける風にそりを打ってどうとくずれこんでくる。


吹き落ちる気配も見えないサイバースの風は、果てもなくリンクヴレインズを吹きまくる。目に見える限りはただ波ばかりだ。


空に近づいていくと風の唸りは激しくなり、なお怒る。波の穂は飛沫ひまつのように飛び散り、飛沫はしぶきになり、しぶきは霧になり、霧はまたまっ白い波になって、息もつかせずあとからあとからワナビー襲いかかってくる。なんとか捌いて堪えているとオブジェクトに打ちつけた風の波は、鼓膜が破れそうな轟音をぶちあてる。白沫を高く飛ばして、反そりを打ちながらどっとくずれていった。

風は暴れているが、なんとかひらけているおかげで流れが遅くなってきた。


「さあ、スピードデュエルをはじめようか、挑戦者!」

「はい!」

『さあ、久しぶりの活躍だぜ!ちゃんとしろよ!』

「わかってるよ!」


サイバースの風を掴み、一気に二人はオブジェクトの上に舞い上がる。俯瞰モードである。細かい操作はコントローラだ。細かい震えなどが教えてくれる。

ワナビーの前には電子の光。そして5つのカードが表示された。


「僕のターン!僕は《創造の代行者 ヴィーナス》を通常召喚、モンスター効果を発動します!ライフを1000ポイント支払い、《神聖なる球体》を守備表示で特殊召喚!」

「くるか!?」

「もちろんですよ!きて、未来に導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件は通常モンスター1体!僕は《神聖なる球体》1体をそれぞれのリンクマーカーにセット!ダブルサーキットコンバイン!リンク召喚!リンク1《リンクリボー》!《星杯竜イムドゥーク》!これでメインモンスターゾーンが空いたのでライフポイントを500ポイント支払い、《創造の代行者 ヴィーナス》のモンスター効果を発動!さらにもう1体、《神聖なる球体》を守備表示で特殊召喚します!これでカード名の異なる4体のモンスターがフィールドに揃いました!いきますよ!」

「いよいよモンスターが4体か、真打登場か!?」

「そのとおり!行きますよ、アローヘッド確認!召喚条件はカード名が異なる2体以上のモンスター!僕は《神聖なる球体》、《創造の代行者 ヴィーナス》、《リンクリボー》、《星杯竜 イムドゥーク》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚、リンク4《鎖龍蛇−スカルデット》!!」


ワナビーの頭上に鎖がまるで意思を持つドラゴンに昇華されたかのような、鎖の面影を残しながらもまがまがしいドラゴンが降臨する。

「ここで《鎖龍蛇−スカルデット》のモンスター効果を発動します!このカードは、リンク素材としたモンスターの数によって使える効果が増えていきます。今回は3つ!まずは第1の効果!デッキから4枚ドローし、その後手札を3枚選んで好きな順番でデッキの下に戻します!」

「なんて強烈な効果だ!」

「これで墓地には4体の天使族モンスターがいます!さあおいで、《大天使クリスティア》!さあ、さっそくモンスター効果を発動ですよ!このカードのモンスター効果による特殊召喚に成功した場合、自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動、その天使族モンスターを手札に加えます。僕が手札に加えるのはもちろん《創造の代行者 ヴィーナス》!このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにモンスターを特殊召喚できません!」

「なかなかやるな、挑戦者!」

「ここで《鎖龍蛇−スカルデット》の第2の効果を発動です。このカードのリンク先にモンスターが召喚・特殊召喚された場合にそのモンスターの攻撃力・守備力は300アップ!つまり《大天使クリスティア》の攻撃力と守備力はそれぞれ3100、2600にアップ!」

「カードを1枚伏せてターンエンドです!」


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