●コードオブザデュエリスト5
「さあいよいよ始まったリンクヴレインズ最大のフェスティバル、コードオブザデュエリスト!勝利への暗号にアクセスせよ!決闘者よ、新たなる風をつかめ!」


実況解説を務める司会者は高らかに宣言し、パブリックビューイングは超満員である。


「ここでルールを説明するぞ!リンクヴレインズに新しいテーマがリンクモンスターを提げて殴り込みをかけてきた!スピードデュエルで挑戦者たちよ、それぞれのテーマデッキの使い手たちから勝利をもぎ取り暗号を手に入れろ!それが勝者の証につながるコードとなる!勝者にはリンクモンスターをプレゼントだ!」


もう会場は大騒ぎである。テンションは最高潮、みんな喉が乾くのかドリンクの売り上げがすさまじいことになっている。草薙は必死で長蛇の列を捌いていた。和波も一生懸命手伝ってくれるが高校生は10時までだ。10時をすぎたら一人かと気が遠くなりそうになりながら、草薙は汗をぬぐいながら枯れ始めた声を張り上げた。みんなお腹がすいて来たのだろう、今度はメインを求めて行列ができ始めている。草薙と和波は嬉しい悲鳴を通り越して忙殺を覚悟するほどの人の流れとなった。

そしてあっという間に時間は過ぎ去っていく。ようやく人だかりが落ち着き始めたのは10時まぎわである。遅すぎる晩飯にホットドッグとジュースを飲んでいると草薙がとなりに座った。


「和波くん、お疲れ!今日は一日助かったよ、ありがとうな。もうすぐ10時だしそろそろ帰る準備してくれよ」

「ぼ、僕ほんとにいいんです?まだ結構お客さん来そうな雰囲気ですけど」

「ああ、もちろん。むしろ10時までよく頑張ってくれたな、明日もよろしく頼むよ」

「はい、わかりました!」

「今日はしっかり休んで学校とうちのバイトのために英気を養ってくれよな。10時すぎてまで働かせたら俺が睨まれちまうからな、はは」


明らかに疲労が見え隠れする草薙に和波は苦笑いしたのち一礼する。喉がすっかり枯れてしまっている。まさかここまで盛り上がりをみせるとは思わなかったコードオブザデュエリストである。


「お疲れ様でした、お先に失礼します!」

「ああ、お疲れ!」

「藤木くんは明日も直接カフェナギから学校です?」

「ああ」

「もしなにかあったら連絡くださいね。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


笑顔で去っていく和波とは対照的にずっと端末を弄りながら閉店を待っていた遊作は、和波に軽く手を振るとそのままトレーラーに入っていった。


(さあて、誠也くんよ。今からデュエルする気力はあるかあ?)


頭の中に直接語りかけてくるHALに和波は笑う。


(あるよ、ありまくるよ、当然じゃないか!ずっとやりたくてたまらなかったんだから!)


放課後からパブリックビューイングが始まるまでの数時間しかリンクヴレインズにいられない和波は島より攻略の速度が遅いのだ。はやく取り戻さなければならない。和波は大急ぎで自宅に帰る。どんなに急いでも30分はかかる。高級高層マンションの最上階はほんとうに時間がかかるのだ。はやくはやくと待ちきれなくて、信号の待ち時間やエレベーターの中の時間の合間に端末を弄ってはデッキ調整をしていた和波はようやく自宅に帰るやいなやキッチンに直行する。ペットボトルのお茶を手にリビングに向かう。デュエルディスクをセットし、デッキをスキャンさせる。そして旧式ポットの扉をあけた。


「デッキセット完了、イントゥーザブレインズ!」


今回は俯瞰モードである。アバターは島君と似たようなデザインにしたかったから、似たようなパーツを一緒に選んだ。こちらは丸みがあるデザインを選んだ。白い長髪、ブーツや腕が一体化したバイクスーツ風の青いデザイン。ヘルメットとサングラスが一体化したデザインのパーツ、口元しか見えないのはカッコいい気がしたからだ。和波の生体情報から生成された基本パーツに身長を足したりして実際よりイケメンな好青年の造形となっている。


「えへへ、やっぱすごいや」


後ろで観客気分だ。今ここにいる現実を体感することはできないが、自分が作り上げたヒーローがここにいる。和波はアバター情報を提示した。今のランキングは新人デュエリストといったところだ。和波が指示しないためアバターは棒立ちである。


「うーん、やっぱワナビーのまんまでいいや」


少しずつランクが上がっていったら名前を変えたい、と思っている和波である。


ワナビーは、ハッカーの格付けのひとつである。元々、ハッカーとはコンピューターの技術に長けた技術者の事を言う。技術向上を目的としてシステムをアタックする者であり、かつてはコンピュータやネットワークに精通した人への尊称だった。原義は、手斧1本でログハウスを作る技能者の意味がある。現在、一般的にハッカーと呼ばれる悪意をもったハッカー達は本来はクラッカーというのだ。コンピュータに精通した人への尊称であるハッカーが、報道等によりクラッカー等と同義に扱われるのはおかしい、という論理における論争から、クラッカーという言葉が注目を浴びたこともあるが、クラッカーもハッカーである事には変わらず、一般に認知されるハッカーがクラッカーの意味合いになっている以上、無碍に否定する必要もないというのが一般見解である。


結局、破壊行為を目的としてシステムをアタックする者、破壊を目的にコンピュータシステムに侵入し、破壊行為を行う者の総称もハッカーとなった。



しかし、ハッカーという単語が定着し、誰もがクラッカーをハッカーと呼ぶようになったため、悪意のない技術者をGEEKと呼んだりするようになった。ハッカーに限らずGEEKなど、本来のハッカー全体の技術者にもレベル別に呼称がある。レベル別に一般的なハッカーのレベルを並べてみるとグル>デミゴッド>ウィザード>ニュービー>ラマー>スクリプトキディ>ワナビーといった感じだ。

ワナビーは、ハッカーにあこがれている人、実際に何もできないけど知ったかぶりしてる人。日本語で言う厨房のようなものだ。


スクリプトキディは人が作ったツールなどを使い攻撃をする人。ネットゲームなどでいうミジンコと似たようなものだ。


ラマーは荒しを目的とした攻撃を行う人。


ここまでが自称ハッカー、いわばハッカーもどきだ。


一般に認められるハッカーは、ニュービーという一般的な駆け出しハッカー。ウィザードというかなり高度な技術を持つハッカー。ハッキングツールなどを自分で作成できる者。
デミゴッドというハッカーの中でも最高位。とてつもないレベルの者。
グルは神レベル。Linuxカーネルの開発者であるリーナス氏などがグルと呼ばれている。



厳密に資格みたいにこれ以上できればこのレベルと決まっているわけではないので結構アバウトである。また解釈によっては、ハッカーもランクの一つとする場合などもあり、ここに書いた事が正しいとも限らない。


ハッカーにも悪意のあるなしで二つある。悪意のあるハッカーはブラックハット、悪意のないハッカーはホワイトハットとよばれる。前者は当然攻撃目的のハッカー、後者はセキュリティ目的のハッカー。



本当に高度な技術というのはほしがって手に入る物ではない。レベルが高くなればなるほどそれだけ資料も少なくなる。それでも上に這い上がるのであれば自分で道を切り開かなければならない。ハッカーになりたいって最初から甘えてるようじゃ無理だ。自分でがんばってそれでもダなら人に聞くのもいい。でも「ハッカーになるにはどうすればいいの?」なんて聞いてる人は論外で、まずは自分でできる限りの努力をしてくること。人に聞くというのは最終手段である。


すぐれた技術者をあらわすハッカーに対して、いずれハッカーになろうと勉強をしているのがニュービー。それに対して、なりたいと思うだけで勉強をしていない自称ハッカーのことをワナビーと呼んでいる。ワナビーはWannabe、なりたい、という意味があることからそう呼ばれているのだ。


ワナビーの由来はきっとこんなところだ。自己紹介欄に、目標はplaymakerとわざわざ書いたのだから。


『playmakerみたいなハッカーになりたいってか?島君よりはハッカーに対する知識があるから、ニュービーでもいい気がするけどよ』

「ううん、そんなことないさ、僕はまだまだワナビーだよ」


和波は笑った。


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bkm






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