コードオブザデュエリスト11
うわあああ、はずかしいよう!ワナビーは羞恥心で帰りたくてたまらない。だがブレイブマックスとウィンと約束した手間、ひきかえすわけにもいかない。うだうだしているうちに自分の番になってしまった。


「次の相手は君かな?」

「は、はい、そうです」

「よろしくね、ワナビー」


よろしくじゃない、よろしくどころの話じゃない、なにやってんだよお姉ちゃん!なんでノリノリなのさ!もうアラサーなのにその格好はどうなの!?つっこみたくて仕方ないが姉は今仕事中だし、ワナビーもライロのリンクモンスター は欲しいから邪魔すらできない。そんなワナビーの心境を知ってか知らずかゴーストのアバターをつかいながら和波の姉は笑った。


そしてスピードデュエルは開始された。結果はいわずもがなである。


「残念でした、またきてね」


私に勝つのはまだまだ早いと姉は笑うのだ。悔しいが事実だから仕方ない。参加賞としてデュエルポイントをもらったワナビーはありがとうございましたと一礼してライロブースを後にした。ふと気になってなんとなく検索をかけてみると、世界大会4位の実力者であるライロ使いが一番強いので要注意ときた。ですよねというほかない。ワナビーは苦笑いしか浮かばないのだった。


それにしたって意地が悪い姉である。リンクヴレインズの大型イベントなんて大事な仕事、昨日お見舞いに行ったときには微塵も言わなかったのに。言ったら言ったで大反対するじゃないかと言われそうで心外だが事実だ。ワナビーの姉はまだリハビリの真っ最中なのである。昏睡状態になったら2倍はリハビリ期間がかかると主治医に言われているだろうによくもまあオーケーが出たものだ。AIかと思ったがワナビーにだけ意味深な言葉を投げてくる時点で中の人はいるのだ。HALが大笑いしながらライロ使いだけあの大学病院からログインしている、しかもSOLテクノロジー社管理職だけが許されたアカウントを使っている、と教えてくれた。アバター情報、生体情報、どうあがいてもワナビーの姉である。もうやだこの愉快犯。

おかげでワナビーはスピードデュエルを見学する時間の方が長いのだった。


「あ、こっちですこっち!ブレイブマックス!ウィンさん!」

「よお、早かったな、ワナビー」

「うっ、バレてましたか」

「俺たちが並んでる時にはすでにいたじゃねーか」

「おまたせしちゃったみたいでごめんなさい、ワナビーさん」

「いいですよ、すぐに負けちゃった僕の実力不足ですから。でも僕頑張りましたよ!」

「はいはい、あとで動画で確認してやるからまずはこれみてくれよ。ウィンすげーんだぜ」

「はい!お目当てのリンクモンスター 手に入りました!」

「おー!すごいですね、ウィンさん!」

「実はオレも入手しちゃったんだぜ、 これで地属性の強化だ」


2人からじゃじゃーん、と新しいリンクモンスター を見せつけられて、いいなあ、とワナビーは思わず呟く。羨ましがられてブレイブマックスたちはうれしそうだ。


「まずはウィンのデュエル見ようぜ、なりきりアバターだからか知らねーけど演出が凝っててさ、楽しいんだ」


三人の前で動画が開始された。


「次はシャドールに挑もうと思うんですけど、ブレイブマックスさんたちはどうします?」

「え、シャドール?」

「はい!ウィンダたちに会いたくて」

「あー、そういやウィンダたち出てるっけ。あんだけ特殊な演出あったら俺もみたい!見ようぜ!」

「いいですね、僕も今度は生で見たいです」

「じゃあ決まりだな、行こうぜ」

「はい!」


やはりSOLテクノロジー社側も精霊プログラムを実装していたらしい。精霊がアバターのふりをしているウィンは、予想通り、特殊な演出が目白押しだった。観客を喜ばせた。


翌日、目覚ましがなる前にアラームで起こされてしまった和波を待っていたのは、島の慌てた声である。どうしたのか聞いてみると、リンクヴレインズにログインできないという。何度入力しても一致しませんばかりである。問い合わせしてみたら、と和波は提案した。パニックになると案外当たり前のことができなくなるものだ。しばらくするとなんとか新しいパスワードを設定し直すことでログインできたが、今度はデッキとアバターが使用中だとでたらしい。さすがに和波はそれはまずいと思った。どうみても乗っ取りである。アカウントがとられたと島が騒ぎ出す。和波はあわてて島のところに向かう。そして、その足で姉のところに向かったのだった。

島は緊張気味である。


「誠也から話は聞いてるよ。いつも島くんの話ばかりするからね。いつも誠也と仲良くしてくれてありがとう」

「あ、いや、あはは」


照れ臭いのか島は恥ずかしそうだ。


「で、だ。同期に調べてもらったら、島くんのアカウントはのっとりにあってるみたいでね」

「ええっ、やっぱり!?」

「どうすればいいの?」

「通報しかないね、あとはセキュリティ部門に任せないと」

「あーもーせっかくウィンと遊ぶ約束してたのに!誰だよ、人の恋路を邪魔するやつはー!」

「……島くん、ウィンさんの連絡先はわかりますか?」

「知るわけねーだろ、さすがにリアルは早いって」


和波は顔がひきつるのがわかった。


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bkm






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