コードオブザデュエリスト10
ブレイブマックスとワナビーがリンクヴレインズにログインして、待ち合わせの広場に向かうとすでに人だかりができていた。気になって近くのアバターに声を掛けると、初心者の女の子にハノイの騎士が勝負を挑んだのだという。なんでも彼は今日仕事が休みでずっとぶっつづけでログインしているのだが、対戦相手の女の子も同じくらいログインしているらしい。あれはリンクヴレインズが初心者なだけでデュエルは絶対に初心者ではないとのことである。もしかしたら廃人レベルのネカマでは、と適当なことをいう。


「でもリンクヴレインズのアカウントって、個人情報とリンクしてるから無理じゃ?」

「だってあのパーツみたことねーもん。自前なら相当金かけてつくったに違いねえぜ」

「たしかによくできてるアカウントですね」

「だろ?」

「おいおい、憶測だけで話をするのはよくないぜ。リンクヴレインズのアバターで理想をぶち込まない奴がいるのか?」

「そりゃそうだけどさ」

「で、どうなんだよ?その子のデュエルの腕前は?」

「かなり古いデッキだけあって使い込んでるって感じだな。たしかにあんだけ可愛くてデュエルがつえーなら問題ないか」

「そうそう、問題ないない」


フォローに回るのはきっと彼女がブレイブマックスが熱を上げているウィンだからだろう。リンクヴレインズ初心者の女の子とハノイの騎士ときたら、どうやったって応援は女の子に集中するに決まっている。熱い声援を受けて、彼女のターンが回ってきた。


「私のターン、ドロー!」


傍に浮遊している《プチリュウ》がウィンの周りを飛び回る。


「魔法カード《緊急テレポート》の効果を発動します!自分の手札またはデッキからレベル3以下の《サイキック族》モンスター1体をフィールドに特殊召喚します!この効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズ時に除外されるデメリットがありますが、すぐ役目が来るから大丈夫です!おいで、《ガスタの神裔 ピリカ》!」


黄緑色のペンギンをつれた幼い少女が召喚された。ウィンを見て目を丸くする。そりゃそうだ、伝承でしか聞いたことがない先の大戦で死んだ巫女様とそっくりの女の子がいるのだから。どうやら精霊プログラムはなりきりアバターでプレイすると専用モーションがあるらしい。ブレイブマックスはすげーと声をあげる。もちろん、和波はAIやプログラムではなく、どちらも精霊だとわかっているから、ピリカの驚きの意味もわかるのだ。


驚きつつも多数の犠牲者を出し、一族として存続することすらできなくなった《ガスタ》最後の末裔の少女が、ウィンと同じぬいぐるみをぶら下げたカバンを鳴らしながら杖を振るう。


ちなみにピリカは《ガスタの疾風 リーズ》・《ガスタの希望 カムイ》の子孫であり、彼らと同じ特徴を持っている。また、彼女が手にしている杖は代々受け継がれていた逸品で、先端の像はこの杖の所有者だった《ガスタの希望 カムイ》が、大戦で失った相棒である《ガスタ・ファルコ》を偲んで自ら彫ったという。髪留めとして使われている巻貝は、《リチュア》の女性陣が身に着けているものと同じ形である。この髪留めは《リチュア》の親友から贈られた物であり、過去に激しく戦った《ガスタ》と《リチュア》にとって平和の証ともいえる存在になっているとの事。親が《ガスタの希望 カムイ》らを指しているとすると、先の大戦からはとても長い時間を経ていることになる。ピリカにとってはウィンは神代の巫女の姉妹なのだ。驚かないわけがない。


「ここで《ガスタの末裔 ピリカ》のモンスター効果を発動します!1ターンに1度このカードが召喚・特殊召喚に成功したとき、自分の墓地から風属性のチューナー1体をモンスター効果を無効にした状態で守備表示で特殊召喚できます!この効果を発動したターン、私は風属性モンスターしか特殊召喚できなくなります。おいで、幸せのブルーバード!緑じゃないよ、青だもん!《ガスタ・ガルド》!」


《プチリュウ》はこころなし嬉しそうだ。《ガスタ》には共に生きる相方が必ずいる。マスコット的位置付けのようで、設定に忠実である。一方の《ガスタ・ガルド》の動揺っぷりはつられて笑ってしまうレベルだ。彼はウィンを知っているのだ、無理もない。


「いきますよ!レベル3《ガスタ・ガルド》にレベル3《ガスタの末裔 ピリカ》をチューニング!レベル6《ダイガスタ・スフィアード》!!このカードがシンクロ召喚に成功したとき、自分の墓地の《ガスタ》と名のついたカード1枚を手札に加えることができます。サルベージした《ガスタ・ガルド》を攻撃表示で通常召喚!さあ、バトルです!」

「何のつもりだ」

「この瞬間《ダイガスタ・スフィアード》のモンスター効果を発動!このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールドの《ガスタ》と名のついたモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは相手が受けることになります!」

「な、なんだって!?」

「まずは《ガスタ・ガルド》!」

「ぐあっ」

「《ガスタ・ガルド》はフィールドから墓地に送られたとき、デッキからレベル2以下の《ガスと》と名のついたモンスター1体を特殊召喚できます。きて、《ガスタ・イグル》!」

「ま、まさかこのまま反射ダメージで!?」

「ええ、そのまさかです!《ガスタ・イグル》も戦闘によって破壊され、墓地に送られた場合、チューナー以外のレベル4以下の《ガスタ》と名のついたモンスターを特殊召喚することができます!おいで、《ガスタの希望 カムイ》!」

「だ、だがこれでモンスターはいないぞ!」

「いえ、これで最後です。《ダイガスタ・スフィアード》で攻撃!」

「ば、ばかな、戦闘に参加するだと!?」

「この子は戦闘では破壊されません!」

「ばかなああああっ!」

「たしかに《ガスタ》はどうしても受け身的な戦いになりがちです。でも、こういう方法もあるんですよ」


ウインクするウィンの笑顔がはじけた。


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