「こんな時、HALがいてくれたら楽なんだけどね......今いないから仕方ないや。ここでじっとしててよ」
ワナビーに拘束されたツヴァイは、へいへいと諦めた様子で頷いた。やっぱり裏方は表に出てきた瞬間に弱体化するのがお約束だと訳の分からないことを言っている。
「じゃあ、このカードキーもらうからね」
「どーぞどうぞ、敗者に口出す権限はねーからな」
「そこまであっさりされるとなにかあるんじゃないかって不安になるんだけどほんとに何も無いんだよねえ......」
「あっ、今マインドスキャン使いやがったな、てめー!無粋にも程があんじゃねえか」
「なにいってるのさ、君。そんなこと言える立場だと思ってるの?」
「言えないでーす」
ワナビーは侵入したコンピュータを片っ端から調べあげ、リンクヴレインズに蔓延しているウィルスプログラムを回収する。そしてHALが生成してくれたワクチンプログラムを直接監視するために繋いでいるであろう回線を通じて投与する。それぞれのデュエルディスクが正常な値に戻っていくのがわかる。
「よし、これでいいね」
「あーあー余計なことしやがってえ......つまんねーなあ、つまんねーよ。せっかく今まで頑張って悲劇の下準備してきたのによー!」
「何を企んできたかは知らないけどこれで終わりだね」
「あー!んな適当に押すんじゃねーよ、壊れるじゃねーか!タダじゃないんだよ!」
「壊しているんじゃないか」
「はっきりいいやがったな、はっきりと!?くっそおおお!!」
なんだか楽しくなってきたワナビーは、適当にボタンを押しまくり、子供みたいなことをし始める。そのうちツヴァイの口から魂が抜けたかのように、ツヴァイはぐったりとしたまま白目をむいて倒れてしまったのだった。
「精霊プログラムはたしかに画期的だった。それだけで満足していれば良かったのに、なにしてるのさ全く」
ワナビーは悪びれもせずにオーバーヒートしてシャットダウンしていくパソコンやモニターたちをみていたのだった。
「さあて、あとは物理的に壊すだけだね」
目に付いたのは設置が義務付けられている消火器である。ひとつじゃ足らないな、と思ったワナビーはこの設備から消火器という消火器を並べていき、ひとつひとつ豪快にぶちまけることにしたのだった。そのうち警報がなり、スプリンクラーが誤作動して土砂降りの雨が降り注ぐ。みるからに大参事である。ワナビーは大満足な笑顔を浮かべて頷いたのだった。