「よお、待ってたぜ坊主」
「ツヴァイさん」
「待ちくたびれちまったじゃねえか、随分と遅いご到着だこって。お前がくるまでにスペクター、そしてブルーメイデンが俺たちの陣営に取り込まれちまったぜ。どんな気持ちだ?」
ワナビーの顔が濁る。
「あまりに暇だったからさ、ゼクスと演出頑張ってみたりしたんだぜ無駄にさ。ほら、このブルーメイデンが涙を流しながら財前部長に抱きしめられながら光の粒子となって消えるの最高じゃないか?物語のスパイスはやっぱり悲劇に限る」
目の前に提示されている動画を見つめ、ワナビーはツヴァイをにらみつけた。
「ほんとにどうしようもないほどのゲス野郎だよね、ツヴァイってさあ。演出家のくせに誇示したがるあたりほんとに向いてないよ」
「あっはっは、うるせえよ。まじでワナビーの姿でゴーストの人格出してんじゃねえよ。ビークールびーくーる!」
「ふざけてるのは君の方だろ、ここまで僕を焚き付けてさあ、まともな最後を迎えられると思ってる?そっちの方が頭の中どうにかしてるよ。でもいいよ、乗ってあげる。僕は今とっても機嫌が悪いんだ。デュエルで負けてももんくいわないでね」
ワナビーはデュエルディスクを構える。ツヴァイはにこにこしながらデュエルの許可をだした。
「デュエルなんて柄じゃねえがこうして悲劇の演出の一環が行えるなら大歓迎だぜえ、デュエリスト冥利につきるってなあ!さあ、始めようじゃないか」
「裏方なら裏方らしくライトニングのバックアップに集中した方がいいんじゃないの?」
「上手く行きすぎて暇なんだよ。ちったあ付き合えよ。なあ、ワナビー?」
「なるほど、気軽に手を出して大怪我したいわけだね。どこまで人の事馬鹿にすれば気が済むのさ......いいよ、その中途半端に自信家なところちゃんとへし折ってあげるからさ!生きてちゃんと帰れるなんて思わないことだね!」
2人がデュエルの開始を宣言したのはほぼ同時。ワナビーの目にはいつになくやる気の動力源として怒りが浮かんでいる。ブルーメイデンの消失を目の前で見せつけられているから、らしい。そこんとこはまだまだ学生なんだなと思いながら、ツヴァイはデッキシャッフルの機能が動いているデュエルディスクを眺める。そして先行後攻を決めるためのほんの少しのタイムラグが発生する。
「さあ、つべこべ言わずにそろそろ始めようぜ」
「そうだね、喋る時間すら惜しくなってきたもの」
「同感だ!」
「「デュエル!」」