亡霊の忠告

「ボクのターン、ドロー!よし、さっそく使わせてもらおうかな!ボクは魔法カード《ブラックホール》を発動!フィールドのモンスターを全て破壊するよ!」

ターンが回ってきたとたん、容赦ないパワーカードの暴力が対戦相手を襲った。一瞬にしてフィールドを埋め尽くしていたモンスターたちが粉微塵になる。光の粒子の先で笑っているのは黒いローブに身を包んだ幼い少年だ。

「これでフィールドは片付いたね!ボクは《星辰のパラディオン 》を通常召喚!」

もちろんアバターの姿にすぎないと観客はもちろん対戦相手もわかったはずだ。ステータスが低すぎるモンスターの通常召喚は次なる布石だと相場が決まっているのだ。

「開け、未来に導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件は《パラディオン 》モンスター1体!ボクは《星辰のパラディオン 》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク1《マギアス・パラディオン》!」

いきなりリンク召喚だがステータスは低い。相手は警戒を強めた。

「この瞬間、《神樹のパラディオン》のモンスター効果を発動させてもらうね!このカードはリンクモンスターのリンク先となる自分フィールドに手札から守備表示で特殊召喚できるんだ!《マギアス・パラディオン》のリンク先に特殊召喚し、《マギアス・パラディオン 》のモンスター効果を発動だよ!このカードのリンク先に効果モンスターが特殊召喚された場合に発動できる。デッキから《パラディオン》モンスターを1体手札に加える。《天穹のパラディオン》をサーチ!」

瞬く間にフィールドが整ってしまう。

「いくよ!再びひらけ、未来に導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はチューナー1体以上を含むモンスター2体!ボクはリンク2《マギアス・パラディオン》と《神樹のパラディオン》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク3《水晶機巧−ハリファイバー》!ここでモンスター効果を発動だよ!このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。
手札・デッキからレベル3以下のチューナー1体を守備表示で特殊召喚!おいで、《神樹のパラディオン》!」

まだまだいくよ、と無邪気に少年は笑う。その笑顔とフィールドを埋め尽くすモンスターとのギャップが観客たちを惹きつける。

「三度開け、未来に導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件は
リンクモンスターを含む効果モンスター2体以上!《水晶機巧−ハリファイバー》と《神樹のパラディオン 》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク3《アークロード・パラディオン》!」

気づけばリンク3のモンスターが降臨したではないか。歓声があがる。

「ここで手札の《天穹のパラディオン》を特殊召喚!このカードはリンクモンスターのリンク先となる自分フィールドに手札から守備表示で特殊召喚できるよ」

フィールドには二体のモンスターが並んだ。

「さあ、バトル!《アークロード・パラディオン》のモンスター効果を発動!このカードの攻撃力は、このカードのリンク先のモンスターの元々の攻撃力分アップする。リンク先には《天穹のパラディオン》!攻撃力は1600アップの3200!ここで《天穹のパラディオン》のモンスター効果を発動!自分フィールドの《パラディオン》リンクモンスター1体を対象として発動できる。このターン、自分はそのモンスターでしか攻撃できず、そのモンスターが相手モンスターとの戦闘で相手に与える戦闘ダメージは倍になる!よってダメージは6400だよ!つまり、ボクの勝ちだね!!」

ゴーストの勝利宣言だった。

「さあて、君のプライベートデータはもらうよ!それとウィルスに感染してるみたいだからログアウトしてね!」

ウインクするゴーストはさっそく運営に通報したようだ。現地に残る気はないようで、さあ行こうか、と最前線で見ていたブレイブマックスに声をかける。え、あ、え、俺!?と驚いていたブレイブマックスだったがゴーストに急かされてここではない別のエリアに飛んだのである。

「とうちゃーくっと!うーん、まーた外れかあ。さっきの人も感染者っぽいねえ、残念。どこにいるのかなあ、キャリアさんは!っと、そうだそうだ大丈夫かい、ブレイブマックス。さっきデュエルしてた相手から変な感じはしなかった?」

「え、いや、別に」

「ほんとに?最近へんなやつに絡まれてるらしいけど大丈夫かい?」

「変なやつ?」

「うん、そう。たとえばだね、《シャドール》使いとか」

「そういや最近よく当たるなあとは思うけど、流行ってんじゃねーの?」

「まあ強いしね。たださ、もうちょい調べてみるといいよ、これとか」

「へ?……な、なんだよこれ!」

思わずブレイブマックスは声を上げた。

「あ、アナザーじゃあるまいし、新生ヴレインズにもう新しいウィルスばらまいてる奴がいるのかよ!」

「残念ながらそうみたいだね。アナザーに負けず劣らず、かなりタチの悪いウィルスみたいだよ。ブレイブマックスも気をつけてね」

「気をつけてもなにもさっきデュエルしたばかりだっての!!よ、よかった、勝ててよかった」

「せっかく集めたカード情報抜かれて空になる上に、《シャドール》しか使えなくなるとかタチの悪いウィルスだよね」

「まじか、まじかあ」

被害者たちが集うスレッドには被害状況などがどんどん溜まっている状況だ。これでは《シャドール》が好きで使っている者たちにヘイトが溜まってしまう。

「他にも《クリフォート 》とか《インフェルノイド》とかここ最近実装したばかりのテーマが感染してるみたいだよ」

「デュエルした相手を同じデッキにするとか悪魔の所業じゃねーか!」

「新しいテーマはみんな使いたがるからね、悪質だよね。盗られたカードデータは復旧が難しいみたいだならブレイブマックスもしばらくは使い捨てのアカウントでログインしたらいいんじゃないかな」

「うーん、めんどくさいけど背に腹は変えられないよなあ。ありがとう、ゴースト。俺、さっそく新しいアバターにしてくるぜ」

「うん、いってらっしゃい。そーだ、新しいアバターにフレンド登録よろしくね!」

飛んでくるIDナンバーにブレイブマックスはおうよとうなずいたのだった。
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