VSブラッドシェパード

ドアを開けるとすでに草薙がplaymakerとsoulburnerの支援をすべくモニタ一覧を表示していた。なにやら指示を飛ばしている。声をかけるのをやめた和波は、入り口付近で待機した。モニターをぼんやり眺める。新生リンクヴレインズに設置された立ち入り禁止エリアに続くルートに張り巡らされたトラップや監視、セキュリティをゴーストガールからの情報を元に回避するよう指示している。仁の精神を奪ったやつらの痕跡には風のイグニスのプログラムがあったらしい。

ボーマンたちに風のイグニスが味方しているのか、パートナーを人質にとられているのか、すでに囚われの身なのか。可能性は多岐に渡るため選択肢を狭める意味でも突撃しか手はないということなのだろう。和波がしばらく見守っていると警戒すべきエリアを突破できたようで息を吐いた草薙はお疲れと労いをかけて大きく伸びをした。

「お待たせしました、草薙さん」

「ああ、和波くんか。お疲れ様」

「いえ、草薙さんもお疲れ様です」

和波はコンビニで買い込んだお茶を草薙に渡す。草薙は助かるよと笑いながら受け取ると封を開けるやいなや三分の一まで飲み干してしまった。和波は冷蔵庫に押し込みながら草薙の隣に座った。そして自分の分に封を開ける。飲むと清涼感が落ち着かせてくれた。

「今、どんな感じですか」

「ああ、これを見てくれ」

草薙が指差す先にはsoulburnerとplaymakerがバウンティハンターに追われている映像がうつっていた。GO鬼塚

「そうそう和波くん。新しいプログラムをアップデートしたいからデュエルディスク貸してくれ」

「あ、はい」

「エリアからの脱出プログラム、あとは通信機能の強化、セキュリティの強化、とりあえずはこれだけだ」

「わかりました、お願いします。そうだ、HALが対イグニスのウィルスに対するワクチンを作るって張り切ってました」

「ほんとか?それは助かるなあ、イグニスのプログラムは複雑だからセキュリティはあいつら任せなとこあるし」

「はい」

和波はデュエルディスクと端末をつなげる。そして和波は草薙とともに前のモニタを注視し始めた。

「財前さん、playmakerたちが避けるのわかっててトラップ起動しましたね、あれ」

「お、わかるか?俺もそう思う」

「ハノイの塔の一連の事件で上層部の権力争いに動きがあったみたいだってお姉ちゃんいってたからきっとそうです。部長に戻った財前さんにだいぶ圧力が加わってるみたいだから」

「なるほど、表立っでは動けないか。財前は俺たちの件に首をつっこみすぎた前科があるからな。だからゴーストガール使って俺たちに……そういうところが財前晃なんだろうな」

「ですね。財前さんも睨まれてるんだろうなあ」

そして和波は思い出したように話し始める。

「鬼塚さん……そうだ、鬼塚さんがいってたんですけど」

和波はさっき入手したばかりの情報を共有する。

「なるほど……そうか。どうやらそれだけじゃなさそうだが」

草薙はつぶやく。前にはplaymakerを先に行かせてsoulburnerがGO鬼塚とスピードデュエルを始めた。

「なんでGO鬼塚がロスト事件のこと知ってるんだ?」

「……財前さん、かなあ」

「あの口ぶりからするにそうらしいな」

草薙はため息をつく。

「今、playmakerとデュエルしなくてよかったですね。今、それどころじゃないし、誤解から仲違いはあんまりして欲しくないしなあ」

「まあ、な。しかし財前晃はなにを考えてるんだ?なぜ俺たちのことを明かす必要がある?」

どこかとげとげしさがある草薙はペットボトルを凹ませた。

「無意識にやっちゃうタイプなんだと思いますよ、財前さん。良かれと思って、どこまでも善意で動くタイプみたいだから」

「空回りもいいとこだな全く。余計なお世話だ」

「あはは」

イライラを抑えるためかペットボトルのお茶が三分の一になる。

「そうだ、僕穂村くんからお話聞く前に離脱しちゃったんですよね。これ聞いても大丈夫かな」

「うん?でも先に和波くんには話してあるっていってたぞ、尊くん」

「あ、そうなんですか?あの内容だけなら大丈夫かな」

和波はモニタを食い入るように見つめていた。

「あ、デュエルディスクのアップデート終わったみたいです。今度は僕の持ち帰ってきたデータ渡しますね」

「ああ、そうしてくれ」

「はい」

端子をつなぎ変えて和波は接続を開始した。

「遊作たちには追っ手を振り払ってから和波くんが来てくれたことをつたえようか」

「そうですね、思考の邪魔しちゃだめですし。うーん、これなら僕行かなくて大丈夫そうですね」

「ああ、トラップがいい自爆をさそってくれたからな」

「こないだみたいにデータストームで離脱させられたらいいのになあ」

「うーん、さすがに二度目はなさそうだな。このバウンティハンターは二度目だ」

「そうですね。ブラッドシェパードでしたっけ、バウンティハンターとしてはかなり優秀みたいですよ」

「お、早いな。和波さんからか?」

「いえ、ゴーストからです。以前、ゴーストガールの個人情報抜いた時に端末ハッキングして顧客情報とか抜いたみたいですよ。あの人の顧客の中にグレイ・コードに内通してる人もいたみたいで、報復だっていってました」

「なるほど、ゴーストガールから……食えない女性デュエリストだとは思ってたが、そうなのか」

「ブラッドシェパードは同業者みたいですね。ゴーストはお気に入りみたいで、ここのところ追いかけ回される環境が楽しくて仕方ないみたいです。よくログ送ってくるんですよ」

「あはは、和波くんもなかなか気に入られてるじゃないか」

「笑いごとじゃないですよ、草薙さん。前にもいいましたけどゴーストに間違われてバウンティハンターに追いかけ回されたの、一度や二度じゃないし、ブラッドシェパードもいましたからね!?おかげで僕ログインできないんだから!」

「あはは、悪い悪い。そうだったのか。たしかに和波くんにもHALがいるから下手に別人だとはいえないしなあ。でもそうだな、たしかにいつまでも和波くんがログインできないのはまずい。いいかげん対策考えないとな」

「ああもう、なんでなりすましが顔出しで僕がコソコソしなきゃいけないんだよう!」

「まあまあ気を落とすなって。対策考えてやるから」

「ありがとうございます、草薙さん。お姉ちゃんに相談したらもっと課金しろっていうんですもん、たしかにそうですけどー!」

「あれ、和波さんからプログラムとかもらえないのか?」

「だめです、お姉ちゃん暇持て余して僕のアバターで遊び始めるからだめです。女の子にされそうになって拒否ったばっかりなんですよ」

「そりゃ災難だったな、和波くん」

「……はい。ですから草薙さんが頼りなんです、お願いします」

「ああ、なんとかしてみるよ」

「ありがとうございます」

和波は深々とため息をついた。

「なら和波くん、ブラッドシェパードのデュエル、見せてもらえないか?ここのモニタに表示してくれ」

「あ、はい、わかりました」

和波はデュエルログを開示した。










それは口論から始まっていた。和波は必死で人違いだ、財前部長に雇われてるなら確認をとってくれ、とお願いしたがバウンティハンターは気にもとめない。デュエルで別人だと証明しろと言われ、和波は泣く泣くデュエルに応じていた。

ブラッドシェパードというバウンティハンターの先攻で始まった1ターン目は終始相手にペースを握られてしまい、和波は苦戦している。フィールドがガラ空きな2ターン目、和波はドローを宣言した。

「僕は《夢幻崩界イヴリース》を攻撃表示で通常召喚!します!このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のリンクモンスター1体を対象として発動できます。そのモンスターの攻撃力を0にし、効果を無効にして、このカードとリンク状態となるように自分フィールドに特殊召喚することができます!僕はリンク2《トロイメア ・フェニックス》を蘇生します!」

「くるか」

「わけのわからないまま、負けるわけにはいきませんから!ひらけ、未来に導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件は効果モンスター2体以上!僕はイヴリースとリンク2《トロイメア・フェニックス》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!リンク3《トポロジック・トゥリスバエナ》!!」

「……《トポロジック》だと」

「すごい課金しないといけないみたいですね、このモンスター。テストプレイに預かっててよかったですよ。はい、ご存知のとおりリボルバーのカードです」

和波は笑った。

「和波研究員の身内だからか、なるほど」

「わかってもらえましたか?ここで《夢幻崩界イヴリース》の第2のモンスター効果を発動です!このカードが自分フィールドから墓地へ送られた場合にこのカードを相手フィールドに守備表示で特殊召喚します。僕は《トポロジック・トゥリスバエナ》のリンク先の相手フィールドに自身を特殊召喚!ここで《トポロジック・トゥリスバエナ》の第2のモンスター効果を発動!このカードのリンク先にモンスターが特殊召喚された場合に発動します。そのモンスター及びフィールドの魔法・罠カードを全て除外し、この効果で除外した相手のカードの数×500ダメージを相手に与えます!」

「なんだと!」

一瞬でバウンティハンターのフィールドは焼け野原となった。さらに除外されたカードの枚数分、ダメージとなる。1500のダメージがバウンティハンターを襲った。

「さあ、バトルです!さっきのお返しですよ、バウンティハンターさん!僕は《トポロジック・トゥリスバエナ》でダイレクトアタック!」

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